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192 修理と店番

 修復を進めるイリス。

 そんな彼女を待つためキューラ達は店番をしていた。

 だが、その日は一旦作業をやめる事にして宿へと戻る。

 するとイリスから、あれは作者の失敗品だと告げられるのだった。

 次の日も俺達は武具店へと向かった。

 目的は勿論……イリスの仕事の為だが……。


「じゃぁ店番頼んだぞ!」


 と店主は残し去って行った。

 残された俺達は言われた通り店番をするしかなく……。


「さぁ! キューラちゃん頑張りましょう!」


 何故かクリエが張り切っていたのは印象深かった。






 結果から言おう、何処からか情報を仕入れてきたのかこの日の客は多かった。

 とはいえ、店主は今この店に居る物のイリアと一緒に道具の修理中だ。


「ねぇ……今度何処かで……」

「あー遠慮しておく」


 そしてナンパする奴らが居るが……勘弁してほしいものだ。

 何故なら、声をかけられるたびにクリエが表情を固まらせこめかみ辺りをぴくぴくとさせている。

 つまり、怒っている訳だ。


 断るといつも通りの笑顔になるのだが、声をかけて来る男性は多く……。


「ぅぅ~~」


 ようやく人波が途切れた所でついに唸り始めた。


「ク、クリエ?」


 俺は彼女の名前を呼ぶと涙目で俺を睨む女性がそこに居り……。


「だ、大丈夫だってどこかに行くなんて事はしない」


 と慌てて答える。

 するとクリエは「分ってます!」と答えるのだが、すぐにまた唸り声を上げ始めた。


「ク、クリエさん?」

「キューラちゃんはあれを受け取ってくれたんです絶対に裏切らないって分ってます! でも、でも! 不安なんです!」


 うわぁ、それは信じてもらえてないって事じゃないだろうか? と思う物の、ヤキモチを妬かれているのか?

 なんか嬉しい様な、ナンパしてくる相手が男だからか悲しい様な複雑な気分だ。

 まぁ、今は俺が女になっている訳だし、それでも気にせずに声をかけてたり、好意を向けてくるのはクリエぐらいだろうが……。

 そんなこんなで不機嫌になったり綺麗な女性が来てご機嫌になったりする忙しいクリエの横で仕事の手伝いをしていると時間は過ぎて行き。


「おう! ご苦労だったな」


 店主のドワーフはどしどしと音を立てこちらへと来た。

 丁度接客中だった俺は彼の方へと向けずに客の対応をしていると……。


「何だよ親父引退したんじゃねぇのかよ! こっちのお嬢ちゃんの方が売れるぞ?」


 と言いながら豪快に笑うのは今おつりを受け取ったばかりの客で白髪の髭が目立つ男性だ。

 屈強な身体はきっと生半可な冒険で得た物じゃないだろう。


「うるせぇ! お前の目的はそんな見た目だけのガキよりお前の命を救ってやったうちの武器防具だろうが!」


 み、見た目だけ……確かに見てくれは悪くないはずだ。

 男の時だって女の子で通す事も出来たし、ナンパもされるし女の子としては魅力……嬉しくねぇ……。


「キューラちゃんは可愛いだけじゃないです!!」


 そう思っているとクリエが眉を吊り上げ叫び声を上げる。


「クリエ?」

「確かにキューラちゃんは可愛いです、多分こんなに可愛い女の子はそうそうそう居ないです! 寧ろ神の産物です!」


 あああ……うん、クリエは一体なにを言っているのか……。


「それに可愛くて……愛らしくて……」

「クリエ!? ちょっと待て落ち着けって!?」


 なんだか聞いてるこっちが恥ずかしくなってきた。

 と言うか俺の事だから恥ずかしいのは当たり前だ。


「あ、ああ……と、とにかく勇者のお嬢ちゃんはお気に入りみたいだな」

「ふん、こんなガキのどこが良いのか……」


 そうは言われましても……彼女は百合なんで……とは言う訳にはいかず。

 俺は苦笑いを浮かべた。


「そ、それで完成したのか?」

「ああ、後は勇者の武器を直してやるだけだ。此処からは俺だけの仕事だ邪魔だから出て行け!」


 いや、うん……そうなんだろうけど、その言い方は……それに……。


「心配しねぇでも金ならあのエルフの嬢ちゃんに渡してやった」


 店主はそう言うとイリスの方へと目を向け、そこには布袋を両手で持って気恥ずかしそうに笑みを浮かべるエルフ。

 イリスの姿が見えた。


「……か、かわいい……」


 そしてクリエは口元を押さえつつそんな事を呟いた。

 こいつは……やっぱり女の子なら誰でも良いのか? そう思ったもののそう言えばトゥスさんには反応してないんだよな……。

 なんでだろうか? 一応美人……だけど、エルフとは思えない行動だからか?


「ぅぅ……でもキューラちゃんを狙う……」

「あのな……」


 クリエは本当……何を考えているんだ?

 女の子に言い寄ってくる女性は今の所クリエぐらいしか知らないしな。

 とにかく……。


「直したなら、武器は任せて戻ろう……流石にトゥスさんの方も終わってるはずだ。帰りが遅いって怒ってるかもしれないぞ」


 トゥスさんなら遅い場合はきっと酒でも飲んで待ってそうだけどな。

 そういえば昨日は宿に戻ってなかったみたいだから少し心配だ。

 恐らくは足りない材料化何かを取りに行ったとは思うけど、彼女は丸腰も良い所だしな。


「そうですね、早く戻りましょう」

「うん!」


 クリエとイリスの返事を聞いた俺は店主の方へと目を向け……。


「それじゃ、俺達はそろそろ行くよ」

「おう、さっさと帰れ!!」


 乱暴な言葉遣いは相変わらずだったが、その表情は口元だけ笑みが浮かび上がっていた。


「ああ、それじゃ」


 多分認めてくれたということだろう。

 後はクリエの武器が直るのを待っているだけだ。


「二日後だ!」


 俺達が店を出る間際、それだけを教えてくれた彼に感謝しつつ俺は振り返ると頷いた。

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