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191 修復作業と……

 修理をするのに邪魔だ。

 そう思ったキューラはクリエと共に帰ろうとした。

 しかし、イリスは居て欲しいと言いキューラはこれに首を縦に振った。

 だが、それを見て何故かクリエは不機嫌になってしまったのだった。

 その日、休み休みではあるが作業を進めていたイリス。

 だが……。


「流石に一日じゃ無理だな。明日も頼むぞ!」


 店主にそう言われ、彼女は頷く……。

 彼女達の会話に気を取られていると……。


「ねぇ、お嬢ちゃん……この剣はいくらだい?」

「え? ああ……それは80ケートだ。安いけど良質な素材を使ってる。でも、もしもの事を考えたらこっちの剣の方が良いんじゃないか?」


 俺は手渡されたメモに目を落としつつそう伝える。

 そう……何故か俺は店に立っていて勇者であるクリエはそこでニコニコと俺の事を見ている。


「そうか、ではそっちにしよう所で今度食事でも……」

「あ、いや……それは遠慮する」


 そして、こいつもいきなりナンパか……今日だけで何回されたのか分からないな。

 というか、クリエはクリエで俺がナンパに会う度に表情がぴしりと固まる。

 断るとすぐに笑みに戻るが……。


「ありがとうございましたー」


 俺は棒読みで感謝の言葉を口にすると「ふぅ……」と一息つく。


「おう、小娘もご苦労だったな」

「いきなり話しかけてきたかと思ったら店手伝えって……」


 依頼料を請求しても良いよな? と口に出そうになったがなんとか堪える俺はドワーフの店主を半眼で睨む。

 すると彼は態度を一切変える様子もなく……。


「お宅の勇者の為にこっちは急ぎで道具を直してるんだ。だが店を閉める訳にはいかない、手伝いぐらいで済んで喜べ」


 そう言われると何も言えないな。

 実際武器防具って言うのは鍛冶師の腕次第で値段が決まる様なものだ。

 さっき持ってきた剣だって同じ80ケートでも一番上等な武器として置いてある店はそう珍しくはない。

 道具のお蔭と言うのもあるのだろうが、彼の腕は本物だろう……。

 そう考えるとイールにもらったチラシに書いてあったシュター武具店の店主はどの位の腕を持ち、自信があるのか気になる所ではあるが……魔大陸に渡ってからのお楽しみって事だな。


「それで、道具は明日には直りそうなのか?」

「ああ、あっちのお嬢ちゃんは腕が達者だからな」


 皮肉たっぷりの言葉遣いで何故俺はこんなに店主に敵視されているのだろうか? と思いつつも挨拶が無かったことがそこまで不満を買う事もある。

 と言う事を身に染みて実感した。


「分かった、じゃぁ明日も手伝いに来る……」

「当たり前だ!!」


 いや、そんなに大きな声じゃなくても良いだろうにイリスとクリエが同時にびくりとしてたぞ?


「……クリエ、イリス戻るぞ」


 そう思いつつも、最早何を言って怒鳴らせる結果が見えた俺は大人しく帰る事にした。




 その日の夜。

 まだトゥスさんが戻っていない宿の中、イリスが話しをしたいと言って来た。


「で、なんだ? 話って」


 俺は彼女に問うと彼女は頷き、話を切り出す。


「あの道具、多分失敗作……」


 ん?

 あの道具って……つまり、あの武具店のって事だよな?


「失敗作って……あの人はあれが無いとって言ってましたよ?」


 確かにそう言っていた。

 俺はその事を思い出しクリエの言葉に頷く……。

 しかし、イリスは「うん」と口にすると……。


「ルシの中では失敗作……中にエルフが昔使っていた文字で今回も駄目だったって書いてあった」


 今回も?

 じゃぁそのルシってのは何かを作ろうとして何度も失敗してたって事か?

 だけど、何かって……金床と金槌のことだよな?

 そんなに難しいのだろうか? それにあの店主はあれが無い取って言っていたって事はあの人の武器防具の出来は少なくとも腕だけではないはずだ。

 と言う事は……。



「あの道具は偽物とかなのか?」

「違う、道具は本物……だけど、もしかしたら……」

「もしかしたら?」


 イリスが勿体つけるように言うとクリエは興味を示し、オウムの様に言葉を繰り返す。


「完成品がどこかにあるかもしれない」


 ……だろうな。

 そう思った俺だったが、どうやらイリスは謎の感動を得ている様で目を輝かせている。


「その時……また壊れてるかもしれない!」


 そして、俺へと詰め寄るとそんな事を言い始めた。


「困ってるかも!」

「そ、そうだな?」


 いきなりどうしたんだ!? そう思いつつも答えると――なんとなく、本当に何となくだが、一つの答えに行きついた。


「もしかして、見てみたい……とかか?」


 俺がそう言うとイリスは何度もこくこくと頭を縦に振り……。

 うん、そうか……つまり、この子はルシと言う人が作った道具に偉く興味を引かれた様だ。


「わ、分かったその時は連絡をする」


 その証拠に約束をしてやると途端に笑みを深めていった。


「キューラちゃん! ありがとぉ‥‥‥」


 そして、どこかしたっ足らずな言い方になりながらも礼を言われ……俺は思わずドキリとしてしまうとクリエは気に入らなかったようで頬を膨らませる。


 はぁ……これから先こういった事は気を付けた方が良いかもしれないな。

 クリエが何故か不機嫌になる……。

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