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190 思いがけない事

 貴族を退散させ、宝石を手に武具店へと戻ったキューラ達。

 イリスへとそれを渡し、ようやく鍛冶道具の修理を始められるようになった。

 これで、クリエの武器が治せると良いのだが……。

 宝石を持ち帰ったらあとはイリスに任せるだけ……とはいかず何か手伝いぐらいはした方が良いだろう。

 そう思って店に残っていた俺達だったんだが……。


「「………………」」


 多少おろおろしながらも進んでいく作業は順調で素人の俺達が手を出す必要など無さそうだ。

 寧ろ手を出したら邪魔だろう。


「や、宿に戻ってるか?」

「そ、そうですね」


 クリエにそう提案すると聞こえたらしいイリスがびくりと身体を震わせてこちらへと走ってくる。


「居てほしい……です」


 俺達が座っているせいもあるが上から覗き込むようにそう言われては……。


「な、なんでだ?」


 思わずドキリと来るものがあるが、なんとかそう返すとイリスは不安そうな顔を浮かべた。


「こ、怖い……二人、何も話す事……ない」


 ああ、なるほど……。

 つまり、少しでも作業を進めていたのは沈黙から逃げる為だったのか……。

 なんか納得してしま倒れは首を縦に振るとイリスは満面の笑みと共に作業へと戻っていく、本人が居て欲しいというなら居た方が良いだろう。

 そう思ってクリエの方へと顔を向けると……。


「……………………………………」

「え、えっとクリエ?」


 何処か不機嫌らしいクリエは態度へとそれを現しており、徐に手を伸ばして来たかと思ったらほっぺたを強めに押された。


「お、おい!? どうしたんだよ!?」


 痛くはない、痛くはないが……いつものクリエならもうちょっと優しく触ってくるはずだ。


「…………キューラちゃんの浮気者」

「はい!?」


 思いがけない言葉に俺は驚くと彼女はそっぽを向いてしまった。

 浮気って……いや、そもそも付き合ってすらいないってそれよりも前に俺は悲しい事に女になってるんだが?


「お、おーい……」


 クリエの肩に手を乗せようとすると、それよりも早くライムがクリエの膝の上へと移動する。

 慌ててライムをこちらへと戻そうとしたのだが、間に合わずクリエはライムを抱き上げると……。


「キューラちゃんは酷いです……ねー?」


 ライムへと同意を求めていた。

 まて、酷いって何処がだ!? というかクリエは俺とイリスが一緒に居るのをうへへと言いながら笑っていたじゃないか!?

 全く意味が――。


『………………』


 ライムも心成しか同意している気がするのは何故だろうか……?


「……はぁ、一体急にどうしたって言うんだよ……」


 俺は小声でそう言うとクリエは頬をリスの様に膨らませ、ぷいっとそっぽを向いてしまった。

 うん、やっぱり意味が分からないな……。


「私だって……分かりませんよ……」


 そう思っているとクリエは何か小さな声で呟いた。


「何か言ったか?」


 気になり訊ねるも帰ってきたのは「知りません!」の一言だった。




 それから暫くイリスの作業を見ていた。

 すると当然――。


「お前ら帰らないのか?」


 と店主に言われたが……。


「イリスが居て欲しいって言ったからな、置いて帰る訳にはいかない」


 と告げると店主は「ふんっ!」と鼻息だけで返事をし戻っていく、出て行けって言われないって事はいても良いという事だな。

 まぁ、邪魔をする訳じゃないし良いだろう。

 それに、よくよく考えればちゃんとお金をもらうまで見てやらないとな。

 そう思いながら作業をしているイリスの方へと目を向けると彼女は此方の視線に気が付いたのだろう『にへら』と笑みを浮かべた。

 うん、クリエとは違った感じだけどあの笑顔もまた可愛いな。


「…………で……」


 俺は何とも言えない気配を感じクリエの方へと目を向ける。

 そこには()()()笑顔の女性が居り、彼女は俺へと目を向けながらやはり頬を膨らませてる。


「クリエ?」

「知りません! キューラちゃんなんか知りません!」


 ああ、良く分からないが……これは怒っているな。

 語彙力が無くなってるんだから間違いない。


 こういった時にどうすれば良いのか、恋愛経験ゼロの俺には分からない。

 だが、間違いなく駄目だと分かるのはここで「なんで怒ってるの?」とか聞く事だろう……帰って来るのは絶対に「怒ってません!」と言い、更に怒らせるだけだ。

 どうしたら良いのか……迷った挙句俺は――。


「クリエ」


 彼女の名前を呼ぶと怒っていても反応はしてくれるようでこちらへと顔を向けてくれた。


「……大丈夫だ」


 何が大丈夫何だろうか? 自分でも疑問だったが、俺はそう言いながらクリエの頭をなでてやる。


「――っ!?」


 すると彼女は一瞬驚いたが……。


「うへへ……」


 すぐに笑みを浮かべてくれた……。


「うへ、うへへへへ……キューラちゃんに……キューラお姉様に撫でられました」

「お姉様は止めろ!?」


 戻って来る時の事をしっかり覚えていたクリエの発言に俺は慌てて突っ込みを入れる。

 だが、クリエは聞こえていないみたいで恍惚とした表情で「うへへ」と笑みを続けていた。

 その笑顔を見ると色々と言いたい事はあるんだが……うん、まぁ……機嫌が直ったんなら今回は良しとするか……。

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