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189 偽る方法

 管理者だという貴族の少女。

 そんな彼女はキューラ達に噛みつかん勢いで文句を言う。

 だが、キューラは言葉巧みに彼女を丸め込み退散させたのだった……。

 帰り道、俺は先程の事を考えていた。

 もし、もしもだ……こちらの世界でカラーコンタクトのような物を作ることが出来、クリエの瞳の色をごまかせるのであれば、彼女は勇者にみられる事は無いだろう。

 だが……それには色んな障害がある。

 まず、材料……コンタクトの材料と言ったらガラス……かプラスチックだ。

 万が一うまくいって作れたとしても俺は使った事が無いし良く分からない。

 だけど分かっている事はある。

 長時間付けたままだったり、寝る時も外さなかったりすれば失明の危険もある。

 確かちゃんと消毒液で洗ったりしなければならないはずだ。

 最初は気を付けるだろうけど、慣れてきたら……いや……その前に出来るかどうかも分からないな。

 眼鏡自体はあるからメガネに加工を……駄目だ、レンズを通して色を変える事は出来るだろうけど、角度によってはばっちりばれてしまう。


「キューラちゃん?」

「ん? ああ……どうした?」


 クリエに声を掛けられ、俺は考えを中断する。

 彼女の方が優先だしな。


「あの……何を考えているんですか?」


 そうか、考えてるのはばれてたか……まぁ、問題はないんだけどな。


「クリエの瞳の色をどうにかしてごまかせないか? って思っててな」

「私の瞳の色を?」


 首を傾げるクリエ……すると瞳と同じ色の髪はさらさらと流れて行き、どこか芸術的な気もする。

 というか……普通にしてれば可愛い美人さんなんだなって再確認させられるな。


「ああ、そうだそれさえどうにかなれば勇者だと思われない。そうすればクリエは普通の暮らしができる」


 とは思っているんだけど……問題は――。


「方法はある……だけど、そうするには色々難しいんだ」


 第一俺はこういったものがあるという知識はあってもどうやって作るかは分からない。

 ましてやレンズをどの位薄くすればいい? 薄くする時にちゃんと削らないと瞳を傷つける可能性だってある。

 そもそも、道具は? どうやって削れば良い……分からない事ばかりだ。


「…………」


 クリエは俺の言葉を聞き黙り込んでしまった。

 方法はあると言ったが同時に難しいと言ったのがいけなかったのだろうか?


「勇者が勇者である事を偽るのは罪です……」


 沈黙の中、クリエはそう呟き、顔を地面へと移す。


「……だろうな」


 そんなのは分かり切っていた。

 ばれなければ良い、それならとっくに誰かがやってるはずだ。

 いや、この世界ではそんな事はしないのか? まぁ、先代たちの事は分からない。

 だけど、俺がクリエを助けるには魔王を倒すだけじゃ駄目な気がしてきたんだよな……。

 もし、魔王を倒しても……次の脅威には勇者を頼るだろう。

 そうなった時、クリエが奇跡を使えないと分かったら? 世界は彼女に対し牙をむく……分かり切っている事だ。


「キューラちゃん……その、色々考えてくれるのは嬉しいです。でも……」

「無理するなって言うんだろ? 心配するなって言うんだろ? 大丈夫だよ」


 彼女を安心させるために出来る限り優しい声で笑みを浮かべる。

 するとクリエは……。


「ぁ…………」


 顔を赤く染め、そっぽを向いてしまった。


「ど、どうした?」

「な、何でもないです!?」


 心配して顔を覗き込もうとするも、彼女は身体ごとそっぽを向いてしまい。

 その表情はうかがえなかったが……これはあれかまさか照れてる?

 なんでそうなったのか分からないが……ま、まぁ、不調とか機嫌を損ねた訳じゃなければ良いか……。

 そう思いつつもやっぱり心配な物は心配だ。


「クリエ、大丈夫か?」

「だ、だ大丈夫です!」


 彼女はそう答えてくれたが、顔は相変わらずこっちへと向けてはくれない。


「ぅぅ、キューラちゃんずるいです」


 そんな事を言い始めたが……俺にとってはクリエの笑顔や仕草の方がずるいと思うぞ?


「さ、行くぞ」

「は、はい……」


 俺の言葉に顔を赤らめながら言われると俺も恥ずかしくなって来たぞ……。

 お互いに顔を逸らしながら俺達は街へと戻る。







 街へと戻った俺達はその足で宝石を武具店へと持っていく。


「キューラちゃん……」


 そんな最中、クリエに声を掛けられ俺は頬をかきながら彼女の方へと向くと……。


「うへへへへ」


 何故笑う? そう思ったが、彼女の笑みは心からの物に見えた。

 当然そんな笑顔を向けられれば――。


「なんだよ」


 と言いつつ俺は彼女に釣られて笑う。

 ああ、そうだ……クリエはやっぱり笑顔が似合う。

 俺は……俺は……この笑顔を守りたい、だから――。


「これでクリエの武器が直せるな」

「……はい!」


 ――だから、これからも頑張らないとな。

 何度も何度も確認させられ確認し……そう考えられる。

 やっぱり、俺はこの世界に来てよかった……色々と大変だが、大切な物があるからな。


 そうこうしている内に武具店についた俺達は扉を潜り抜ける。


「キューラさん!」


 イリスは俺の顔を見るなり表情を明るくし、駆け寄ってくる。


「修理の方はどうだ?」

「直せるところは……少し……」


 まぁ、依頼を受けてからそんなに時間は経っていないからな。


「少しって進めててくれたんですか!?」


 クリエは驚くと手をワキワキさせながら怪しい笑みを浮かべ「うへへへ」と声を出す。

 怪しいというか恐かったのだろうイリスは――。


「ひゃぅ!?」


 悲鳴を上げ一歩後ろへと下がってしまった。


「え、えっと、ほらコレ……」


 俺はクリエらしい反応に引きつった笑みを浮かべつつ宝石を手渡す。

 彼女は笑みを浮かべそれを受け取るとクリエは俺達を見つめ始めた。


「うへ、うへへへ……」


 どうやら、ご満悦の様だが……。


「今代の勇者は変な奴だな……だが、小娘よくやった。約束通りだ」


 ドワーフの店主は笑みを浮かべ、イリスの手にある宝石をまじまじと見つめるのだった。

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