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187 宝石を手に入れろ!

 ロクタを放置する訳にはいかない。

 キューラはそう考え、倒すことを決意した。

 その方法とは……天井を狙う様だが?

「――我が前に立ちはだかる者への裁き――」


 俺が詠唱を開始するのとほぼ同時、ロクタの炎は此方へと向かって来る。

 すると、ライムは予定通り俺の身を守ってはくれるが……大丈夫だとは言っても疲労はあるだろう。

 だが、焦る必要はない。

 一発……それで決められる!


「土の精よ、我が怒りを体現し敵を討ち砕け――――グレイブッ!!」


 解き放たれたのは岩の魔法。

 先程の一撃でロクタのブレスが吐かれている時間は大体分っている。

 これで――天井を撃つ!!

 見事にグレイブはロクタのすぐ目の前の天井へと当たり、大きな音を立てるとガラガラと洞窟は崩壊をしていく……。

 このままでは俺達も埋もれてしまうだろう……だが――。


「土の精よ、我らを守る盾と化せ!! アースウォール!!」


 すぐに俺は支柱となる物を魔法で作り出した。

 とはいえ、魔法は魔法。

 時間が経てば消えてしまう……。


「クリエ!! 宝石の回収を!!」


 俺の声に首を縦に振りすぐに宝石の回収へと向かったクリエ。

 だが、安心はできない。


『グオォォォォォォオォォォ!!』


 塞がれた向こう側ではロクタの奴がお怒りのようだからな。


「取れましたよ! 早く――」

「ああ、早く逃げろ!!」


 早く逃げましょう……そう言おうとしたのだろうクリエは呆然とその場で立ち尽くし――。


「早く! このままじゃ魔法が切れる!!」

「あ、は、はい!!」


 俺の急かす声に慌てて角の方へと戻っていく……そして、こちらを振り返り。


「キューラちゃん?」


 心配そうに俺を見るが、まぁ……そうなるのも無理はないな。

 俺にはまだ一仕事残っている。


「さて……ライム、危ないからクリエの所に行ってろ……」

『…………』


 ライムは俺の命令に従うとクリエの方へと逃げていく……これで多分大丈夫だろう……。

 問題はあのロクタって魔物は見た所、相当固いはずだ。

 なら、こっちの魔法も生半可な勢いじゃ駄目だ。

 いつも使っている魔法だとしたら相当強化しなくちゃいけない、だが、そんな時間はない――。


「凍てつき時を生きる雪の精霊、我が願いを受け入れ――我が敵を悠久の檻の中へと捉える楔と化せ――」


 本来は相手の体温を奪うだけの魔法。

 だが、今回に限っては最も有効だと言っても良いと信じたい。

 変温動物の中には多少体温が下がった程度じゃ動く奴もいるらしいが……極端に奪われるならどうだ?


「スノウ……ストーム!!」


 洞窟の中は瞬く間に冷えて行き、更には岩の壁と吹き飛ばしたロクタの顔へと直撃をする。

 瞬間、赤い物が見えたが先程よりも動きがずっと遅い事に気が付いた。

 更にはこっちの魔法がまだ続いていたことが幸いだったのか炎の息吹は使われる事無く、ロクタは徐々に動きを鈍らせていく……。


 ――今しかない!!


「氷よ力となりて、我が敵を穿つ矢と化せ!! アイス・アロー!!」


 そう思った俺は奴の口を目掛け魔法を解き放つ。

 吸い込まれるように見事に口の中へと入っていった魔法は柔らかい内部を撃ち抜いたのだろう……ロクタはその場で暴れ始め……。


「まずい!?」


 俺は慌ててその場から逃げる事にした。

 だが、その最中も魔物から目を離さず、天井から崩れて行ったのか潰れていくロクタをしっかりと目に焼き付け、走る。


「キューラちゃん!! 大丈夫――」

「それは後だ! クリエ走るぞ!!」


 ライムを抱えたままのクリエにそう告げた俺は外へと指を向け叫ぶ。


「は、はい!!」


 クリエは頷きと共に駆け始め――俺は彼女の後ろを見守りながら追いかけた。




 ガラガラと崩れる洞窟の中、なんとか脱出に成功した俺達は息を切らす。

 危なかった……もし、もう少し遅れていたら……そう思うとぞっとしないな。

 魔物が暴れるのは分かり切っていたのに洞窟が崩れる事を忘れていた。


「キュ、キューラちゃん……あ、あれは無茶し過ぎです……」


 息を切らし訴えるような目を向けてきたクリエに一瞬ドキッとしながらも俺は「すまん」とだけ口にした。

 うん、今度から気を付けよう……。

 だが、なんとかなって良かった。

 そう思っていると……目の前から走ってきたのは先程の兵と大層ご立派な服を着た女性。

 恐らくは貴族……だろう……。


「何が起きたのですか!!」


 貴族は俺達を睨むとすぐに洞窟の方へと目を向けた。

 そして、塞がっている事を確認すると――。


「何をしたんです……?」

「何をしたって……中に入って用事を済ませただけだ」


 正直にそう言うと彼女はこめかみあたりをぴくぴくとさせ――。


「ここは(わたくし)が管理してると知っての言葉ですか?」


 やれやれ、どうやら面倒な方に掴まってしまった様だ。

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