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184 鉱山へ

 金床の修理には赤い宝石が必要だという事が分かった。

 幸いにも取れる鉱山は近くにあるらしい。

 しかし、どうも簡単に見つかる訳ではない様だ……。

 トゥスに話すと精霊石の道具を渡してくれたのだが、果たして見つかるだろうか?

 その鉱山は街からはそんなに離れていなく、歩いて1時間ぐらいと言った所だった。

 嘗ては鉄などが一杯取れた場所らしいが、今は取れなくなってしまい代わりに宝石類が取れるようになったとか……。

 それで今回のルビーもここにあるって言う事なんだが……。


「駄目だ! 駄目だ! いくら勇者でもここは駄目だ!」


 と今現在管理している兵に止められてしまっている。


「あの、どうしても行かなければいけないんですが……」

「危険なんだ! 理解してくれ……そんな子供を連れて散歩道じゃないんだからな!」


 そんな子供とは俺の事だろう……だが、失礼過ぎやしないか?

 一応は武装している訳だし、戦えるのは分かるはずだ。

 だというのに子供扱い。


「キュ、キューラちゃんは小さくて愛らしくて可愛いですけど立派な従者です!!」


 対しクリエ(うちの勇者様)は珍しく怒ったみたいで眉を吊り上げ訴える。

 だが、その前文句は何だろうか? 後小さいは余計だ小さいは!


「いずれ、胸も大きくなって……」

「ってお前は何を言ってるんだ!?」


 とんでもない事を言いかけてというか言い終わってしまったクリエに俺は声を上げ、咳ばらいをすると唖然としている兵へと目を向ける。


「この先にある宝石を手に入れたいんだ……何が起きてるのか教えてくれないか?」


 そして改めてそう伝えると彼は大きなため息をつき……。


「この先に宝石喰いが出てるんだ……」

「宝石喰い?」


 うーん? 聞いた事が無いな?

 俺はクリエの方へと目を向けると彼女も首を横に振った。

 クリエでも知らない事があるんだな……。

 そう思いつつ再び兵へと目を向けると……。


「知らないのも無理はない、滅多に居ない魔物だからな、出て来ては宝石を食べてどこかに去るんだ」

「おいおい、それじゃ噂になってても……」


 おかしくはないだろうに……そう思った時、彼は話を続ける。


「数千年に一回現れるかどうかの希少種なんだ。因みに倒しても何も高価な素材とかは手に入らないからな……危険な魔物でもあるし去るのを待つしかない」

「危険って……倒せないんですか?」


 クリエが訪ねると兵は首を横に振る。


「倒せない訳じゃない、剣も魔法も効くが食べた宝石で特性を得るんだ……今回は火を噴いているまるでドラゴンのようにな」


 おいおい、確かにそれは危険だ。

 というか食べた宝石で特性を得るって厄介な……ん?


「それって石とかでも良いのか?」

「ああ、元の魔物は石を食べて固くなるという特性があるな」


 それはそれで厄介だな?


「石を食べる? ロクタですか?」

「ああ、流石は勇者殿……ロクタも十分珍しい魔物なのによく知っていたな」


 ろくた? なんか……。


「六人目の子みたいだな……」

「何を言ってるんですかキューラちゃん? ロクタはロクタですよ?」


 くっ……その通りなんだろうけど、どう思っても六太とかそんな名前を思い浮かべてしまった。

 それにしても、元の名前も聞いた事があまりないな。

 彼が言う通り十分珍しい魔物である所為か?

 とにかく……。


「それでもこの先に行きたいんだ」


 俺達の目的は変わらない。

 それどころか目当ての宝石を喰われているんじゃたまったものではない。


「だから、危険だと……」

「いいえ、だからこそ私達が行くんです、私は勇者ですし、キューラちゃんは使い魔を二匹も連れた凄腕の魔法使いです」


 うん、凄腕ではない。

 使い魔はライムとレムス……確かに二人いるが、俺自身は普通の魔法使いだ。

 だが、ここは黙っていよう。


「しかし……」

「それにロクタが街に来ないとは限りません、此処で倒してしまった方が良いと思います」


 クリエのもっともな意見に兵はうんうんと唸り声をあげ……。


「分かった、確かに街に被害を加える訳にはいかない……ただし、相手はドラゴン同様の息を使うんだ。勇者、従者と言えど気を付けてくれ」


 俺達は頷き、彼の横を通り抜ける。

 そんな中気になったのは彼の対応だ……。

 クリエが勇者だという事には気が付いていた。

 だというのに、彼はクリエを人として扱っている……もしかしたら一般での兵なのかもしれない。

 本気で心配してくれているのだろうし、きちんと戻って報告をしないとな。


「キューラちゃん……もうすぐ魔物が居る洞窟ですよ」

「あ、ああ……」


 珍しくクリエに注意された俺は前へと向き直る。

 すると……そわそわした様子の彼女は――。


「キューラちゃん、どうしたんですか? さっきの人を見つめて……まさか、まさか……!? 駄目ですよ!? キューラちゃんには私と言う者が居るんですから!!」

「何を言っているんだお前は!?」


 珍しく真面目モードかと思ったらこれか!?

 というか、私と言う者が居るのに! この言葉をリアルで聞くとは思わなかったぞ!?


「ただ、クリエの扱い方が普通だと思っただけだよ、ちゃんと心配してくれたからな」


 ため息交じりにそう伝えるとクリエは口元を歪ませ……。


「うへへへ……キューラちゃんが私の事を思ってくれてたなんて……」

「いや……あーもうそれで良い」


 そういう訳じゃないんだが、言い返す気力も無くなってしまった。

 まぁ、クリエは可愛いし……正直、まぁ……うん。

 間違いではないな……。

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