182 クリエの依頼
商売がうまくいかず悩むキューラ達の元へクリエが訪れた。
彼女は修理を依頼した武具店でイリスの事を話したという。
クリエの機転により、どうにか最初の仕事は受けられそうだが?
「こっちですよ!」
クリエは先程褒められたことがよほど嬉しかったのか終始うへへ……と笑いながら案内をしてくれた。
うん、やっぱり彼女の笑みは可愛いなんて考えながらついて行くとすぐにその店に辿り着いた。
「すみません! さっき話していた子を連れて来ました」
そう言ってクリエは店の中へと入るとドワーフの男性は此方へと笑みを向けて出迎えてくれた。
よくアニメや漫画などで見られる髭を蓄えた彼は少し怖い笑顔で……。
「おお、勇者様なんとお詫びを言ったら……」
と嬉しそうな声を上げるとイリスの方へと目を向け……。
「実はこいつらがいかれてしまってな……」
そう言って指をさしたのは大きな金槌と金床だ。
「こいつらは昔から伝わっている家宝なんだが、この前ついにいかれちまってな……困ってるんだよ」
彼はそういうと俺の方へと目を向ける。
「そこのちっこいのはなんだ?」
「俺は……」
クリエの従者だ。
そう口に仕掛けた所で言葉を飲み込んだ。
嘘ではない、言っても何の問題もないだろう……だけど、口にしたくない。
その理由は……簡単だ。
俺はクリエを助けたい……だからこそ、従者である今の立場を利用はさせてもらおうとは思う。
だけど、それでも俺の意志と言うのは従者と言う物からはかけ離れている。
彼女を守る存在。
助けたいだけだ……だから、俺は……何て言えば良いのか迷ってしまった。
「俺は……」
英雄でも勇者でもない、ただの魔法が得意なだけの子供。
それが俺だ……だけど――。
『…………』
『かぁ!』
二人の使い魔は俺に寄り添い。
何かを気遣ってくれるようにしてくれた。
自身を持てとでも言っているのだろうか? まさかな……。
それに自信を持ったところで俺が何者でもないのは変わらないんだ。
詠唱短縮にしたって珍しい物ではあるが俺だけが出来る物って訳じゃないし、上には上が居たからな。
「…………」
「ふん! 最近のガキは名乗る事も出来ないのか……!」
ドワーフにそう言われ俺は思わず顔を伏せてしまった。
でも、これで良い……。
「キューラちゃん?」
不安そうな声が聞こえ、俺は顔を上げると彼女には笑みを見せ……。
「大丈夫だ」
とだけ答えた。
するとそれを聞いていたのだろうドワーフは……。
「……ふん!」
ともう一度鼻息をした。
それにしても……クリエを助ける方法か……これから考えるとしても、焦っても良い事は無いよな。
「こんなガキまで屑に育っちまう世界なのかね……」
「…………っ」
その声は俺だけに聞こえたみたいで声の主の方へと目を向けるが、彼は聞こえていないと思っているのだろう……。
イリスへと目を向け――。
「悪いな嬢ちゃん早く見てもらえないか?」
うん……やっぱり名乗らなかったのは失礼だったな……後悔しても遅いが、彼はどうやら挨拶をしない俺は屑だと言っているみたいだ。
「は、はい!」
イリスは少し戸惑いながらも彼の示した金槌と金床を調べ始める。
ここから先は彼女の役目だ。
「――っ!?」
そう、思っていた。
なのに彼女はそれを少し触り、恐る恐るとドワーフを見る。
「これ……どこで?」
「どこでって言っただろ? 代々伝わっているんだ」
なにか問題でもあるのだろうか? 俺は疑問に思いつつ彼女の方へと近づいて見る。
「直せないのか?」
俺の質問に彼女はぶんぶんと首を振る。
なんだ、そこは問題じゃないのか……。
「でも特殊な材料、必要……びっくりしたのは作った人……」
作った人? つまり、その道具を作った人って事だよな?
一体なにが……。
「エルフの大罪人……ルシ……」
「だ、大罪人? ですか?」
そんな人が作ってたのか……でも、なんで武具屋の道具を?
「誰が作ったかなんて関係ない! そいつは家宝だ! 直してくれ!」
ドワーフは直してもらえないと感じたのだろうそう怒鳴るように言い、イリスは慌てた様に首を振る。
「直す……けど、材料がほしい」
「わかった何が必要だ?」
ここでクリエの剣も直してもらわなきゃいけないんだ。
イリスが必要だというのなら取ってこよう……。
「宝石、見た目は真っ赤な血の様な色のルビー……でも、買うと高いし探すなら大変だけど……原石でも大丈夫」
宝石か……確かに買うとなると高いし、クリエの特権を使ったとしても限度がある。
なら取って来るしかないのだが、彼女が言う通り数が少なく希少であるから宝石は髙い。
加工をしていないならその分安くはなるが……そんなものは滅多に店に出ないだろう。
「近くに宝石が取れる山がある……おい、ガキ取ってくると言った以上、ちゃんと探して来いよ?」
「あ、ああ、勿論そうします」
俺は威嚇され、その威圧感に少し下がりつつも何とかそう答える。
とは言ったものの……。
「クリエは剣が無い、トゥスさんは銃の修理中……俺達で行くしかないか……」
そうライムとレムスへと告げると二人は寄り添って来る。
頼もしいな、そう考えていると――。
「そんな!? 私はお留守番ですか!?」
「仕方ないだろ……武器が無いのに連れて行くわけには……」
俺の剣を貸しても良いが、それはそれで俺が丸腰になるしな。
「それだと私のキューラちゃん分はどうするんですか!? 足りないと倒れちゃうかもしれません!?」
「何だよそれ!?」
謎の栄養分? の名前を言われ思わず俺はそう突っ込みを入れるのだった。




