181 商売繁盛?
店を開いたキューラ達。
しかし、客がすぐに寄り付く事は無かった。
そんな中キューラはあらかじめ用意しておいた策を使う。
すると一人の男性が話を聞いてくれたのだが……?
「うーん……確かに安いが……」
男性は首を傾げ考えるそぶりを見せると申し訳なさそうな顔を作り。
「悪いな、うちは貧乏でよ……今回は遠慮させてもらう」
そう言って去って行ってしまった。
まぁ、これはこれで仕方がない。
それに彼のお蔭で目的は達成してるんだからな。
俺は辺りに居る人達に目を向ける前に男性に向かって頭を下げ――。
「ありがとうございました」
と礼を告げる。
すると彼は驚いたような表情で振り返り……。
「いや、ありがとうって俺は依頼を……」
「いえ、話を聞いていただけたので」
そう言うと首を傾げながら歩いて行く、うーん……。
何か変な事でもしたのだろうか? そう言えば、俺がこの世界の店に行って何も買わないで帰った時、礼は言われなかったな。
まぁ、あれは独自の分かな部分もあるだろうし、今回は客を集めてくれたという理由もある。
俺は気にする事は無いと思い辺りの人に目を向け――。
「精霊石の修理受け付けます! 何かお困りの方はいませんか?」
と再び声を張った。
それから暫くし……。
「キューラちゃん! って……どうしたんですか?」
クリエが満面の笑みと共にやってくると俺達を見て首を傾げた。
その理由は簡単だ。
「客が一人もつかなかった」
そう、あれだけ声を張って宣伝をした。
あの男性のお蔭でこの店が安いというのは知れ渡ったはずだった。
しかし、問題が一つ出てきたのだ。
安いのならちゃんと直してくれないんじゃないか? と言う物だった。
そう思うのは仕方がないのだろう、だが安いと言っても1000ケートが100になる訳じゃない。
ちゃんと利益分を考えてイリスは口にしたはずだ。
だというのに寄り付いた人達はそう思わない訳だ。
そりゃそうだよな……今まで高かったものがいきなり安くなるんだ。
疑いたくもなる。
「商売……向いて、ない……?」
その上、客はちゃんと直す気が無いのではとイリスに直接に言ってしまい、彼女は否定したのだが……決め込んだ客は帰り……現状の通り落ち込んでしまった。
「イ、イリスちゃん……」
「ここまで来ないとは正直思わなかった」
第一、安いんだぞ? それだけで修理を頼まれてもおかしくはない! なんてことは言わないが……一人ぐらいいてもおかしくはないはずだ。
なのに、まさかここまで人が寄り付かないとは思わなかった。
一回依頼が来れば暫くは生活できる。
しかし、それまでが長いって事か……それもあって高いのかもしれない。
「キューラちゃん……」
クリエは心配をしてくれているのだろう、だけど……。
「うへへ……」
ち、違う! こいつ……落ち込んでいる俺達を見て目の保養にしていやがる!?
「クリエ……!」
俺は嗜めようと彼女の名前を呼ぶと彼女は慌てて首を振る。
「あ、いえ……変な意味で笑った訳じゃないですよ!?」
慌てるって事は普段は変な意味で笑っていると自覚でもしているのだろうか?
それはそれで問題な気がするが……。
「何か手があるって事か?」
「はい! 手と言うか……依頼と言うか……」
ん? 依頼?
「武器を預けた所で使っていた道具が一つ壊れてしまったみたいなんです。ですが、修理を頼もうにも順番待ちで……それが無いと武器や防具の質が落ちてしまうってぼやいてました」
「…………」
俺とイリスはクリエの言葉を聞きお互いに顔を合わせた。
「つ、つまり……クリエまさか?」
「はい! 修理できる人を知っていますって言ってこっちにすぐに来たんです!」
笑みを浮かべながら「うへへへへ……」と恥ずかしそうに笑う彼女は黙り込んだ俺達を見て途端に不安になったのだろうか?
ずるいとしか言いようのない上目遣いで……。
「よ、余計なお世話でした?」
そう言われては思わずドキリとしてしまう俺だったが……慌てて首を振る。
「そんな事はない! クリエ、よく話してくれた! 武具屋なら色んな人が来る! 情報だって流してくれる!!」
そう、武器屋であれば冒険者だけじゃない他の人だって扱う店だ。
何しろ外に出るのは冒険者のみって訳じゃないからな、狩りをする人だって武器は必要だし、家事に使う包丁や農業に使う道具なんかも作っている。
なら……武具店でしっかりと直してくれたとお客に話をしてくれるかもしれない、その話を聞いた人たちが噂を流してくれる可能性だってある。
「イリス、早速行こう! クリエ案内を頼む!!」
俺は声を弾ませそう言うとクリエは途端に笑顔になり――。
「はい! うへへへへ……褒められちゃいました」
嬉しそうにそう言うのだが……うん、ずるいなその笑顔は……まぁ、これを守りたいと思ってるんだ。
笑ってくれるのはどんな理由でも嬉しいな。




