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178 エルフのお店準備

 少女が生き抜く術。

 それは精霊石の道具の修繕を生業とする方法だった。

 これならば、需要があるとキューラは考え、また少女も首を縦に振る。

 快くとは言わないが俺の案を承諾してくれたエルフの女の子。

 彼女の名前はイリスと言うらしい。


「それでイリス……君は新しい道具を置いて修理も受け付けますって書くんだ」


 値段はあまり安めにしない方が良いだろう……物価を下げても良い事はあまりない。

 最初の内は客が来て嬉しいだろうが他のエルフに目を付けられる可能性もある。


「…………」


 俺の話を真剣に聞いてくれた彼女はきっと明日からそれを実践してくれるだろう。

 最初は売り物が無いがそれでも修理と言う技術はある。

 問題の腕の方は先程トゥスさんに調べて貰ったし、大丈夫だ。


「キューラちゃんはそういう事すぐに思いつくんですね」


 と感心されたのはクリエにだ。


「すぐにって……とにかくこれが最善の手だろ? と言うよりかはこの手しかないと言っても良いけどな」


 先程も考えた事だがこの子が冒険者は無理がある。

 ましてやいつ死ぬか分からないどころか明日死ぬかもしれない確率が高い職をお勧めしたくはないな。


「っとまぁ、こんな感じだ」


 俺はイリスの方へと目を向け、説明の終わりを告げると彼女は少し不安そうにしながらも首を縦に振る。

 勿論、俺達もそのままほっぽり出すつもりはない。


「暫くと言っても多分長くて5日ぐらいだけど、街には滞在する。だからそう心配そうな顔をするな」


 そう、俺達は街に滞在することにしたのだ。

 と言ってもこれは俺の勝手な判断であり……。


「そうですね、このままじゃかわいそうですし……」


 というクリエと……。


「はい!? ちょっと待ちな! なんでそんなこと決めてるんだい!?」


 と怒るトゥスさん。

 だが、5日と言うのもちゃんと理由がある。


「あのなトゥスさん、トゥスさんはその銃を直さなきゃいけないだろ? それにその銃に慣れなきゃいけない、クリエだってそうだろ?」


 そう、こじつけではあるが、武器に慣れる事は重要だ。

 それは俺自身、身に染みて分かっている事だ。

 クリエに買ってもらった剣は俺には重すぎてうまく扱えなかった。

 だが、慣れていればもう少しは違ったはず。

 その後にちゃんと使えたのはトゥスさんが俺用に調整してくれたから手に馴染んだだけだ。

 銃に関してはトゥスさんは自分で調整するだろうが、剣はクリエが慣れないと駄目だ。

 因みにあの剣には頑丈になるという効果が付与されているらしい。


「そうですね、私も剣に慣れておきたいです」


 勇者にそう言われてしまっては何も言い返せないのかトゥスさんはそっぽを向き……。


「5日だよ! それ以上は滞在しない……」

「ああ、ありがとう」


 なんだかんだ言っても優しいのがトゥスさんだな。


「と言う訳だ、その間はちゃんとサポートするよ」

「…………?」


 頷きかけたイリスは首を傾げ……。


「さぽーと?」


 と言う言葉を繰り返して来た。

 そうか、サポートはこっちでは使われていない言葉だった。


「うへへへ……したっ足らずなイリスちゃんも可愛いです……ああ、ああ……キューラちゃんにイリスちゃん……二人共色んなお洋服を着せて……駄目、駄目です!?」


 そして、うちの勇者様の妄想はかなりの所まで行っている様だ……妄想力と言う物が数値化できる道具があったら壊れてしまうぐらいの数値かもしれない。

 ていうか、何を考えているんだうちの勇者様は!?


「……ぴぃ!?」


 そしてイリスは何とも言えない悲鳴を上げクリエを見ている……。

 うん、怖いよな? 怖いんだよな……分かるが、分かるんだが……なんだろうか? 俺は慣れてきてしまった所為かあまり怖くなくなってきている。


「クリエ、着せ替え人形にするなら俺だけにして置け、他に迷惑を――」

「良いんですか!? なんでもしてくれるんですか!?」

「そうは言ってねぇ!?」


 俺は叫び声をあげた後、頭を抱える。

 全く、何時何処でそんな事になった!? ああ、頭が痛い。


「と、とにかく、5日間の間は俺は手が空く……だから手伝いをするさ、安心しろイリス」


 気を取り直し言葉を変え、イリスへと伝える。

 するとイリスは何とも言えない笑顔を浮かべ……。


「ありがとうー」


 お礼を言うと徐に俺の頭を撫でてきた。


「お、おい!?」

「良い子、良い子!」


 困惑し、助けを求める俺だったがクリエは両手で鼻のあたりを押さえ、トゥスさんは明後日の方向を見ながらプルプルと震えている。

 頼みの綱のライムとレムスは疲れているのか寝ている様だ。


「ぅぅ、キューラちゃんに可愛いお姉ちゃんが……天国ですか? 天国ですね?」


 おい、クリエ……いや、まて……。

 イリスは何か? もしかして俺を年下なのにしっかりしたいい子だと頭を撫でているのだろうか?

 精神年齢的な物で言えば30代に差し掛かっているのだけど……。


「ま、まぁ年上には違いないだろうね、イリスお嬢ちゃんは多分20代だろうしね……」


 そう言い終えたトゥスさんはぶふぅ!? と言った風に吹き出しながら再び明後日の方向へと向く……。


「いつも大人ぶってるキューラが、良い子……! 良い子!!」


 おい、聞こえてるぞ……。


「妹、欲しかった……」


 ああ、でもなんでか分からないがここで拒否してしまえばイリスが泣くだろう事が何となくわかる……逃げ場は無し、か……。


「ああもう! 耐えれません、お揃いの服を買いに行きましょう! できれば布地が少ないので!」


 そしてこれまで以上に欲丸出しだな……クリエは……。

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