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177 少女が生き抜く知恵

 黒エルフを死んだことにし、生き方を教えるトゥス。

 しかし、それはエルフとして大切な何かを失いそうになる方法だった。

 キューラは頭を抱えつつ何か方法を考えるというが……?

「まずは話をしたい、宿かなにかに一緒に行こう」


 俺はエルフの少女にそう言うと彼女は戸惑った様子で……。


「も、もう御家に戻れないの?」


 不安そうな声を出す。

 それに関しては何も言えないクリエと俺……だが……。


「ああそうだね、あんたはやってはいけない事をやっちまったんだ……人としては正しくともエルフとしてはやっちゃいけない事をね」


 おおおい!? ウチのエルフ様は何を言ってらっしゃるんですかね!?

 女の子が落ち込んでしまったじゃないか!?


「と、ととととにかく!! 出会った以上、死なれるのは嫌だし俺達の勝手な行動だけど君の家族も君自身も助かる方法はある……それに時代が変われば会えないなんて事は……」


 そうだ、エルフの寿命は長い、それだけあればきっと頭の固いエルフだって……。


「変わる訳ないね……寧ろ変わるって思ってるのかい?」

「ト、トゥスさんは少し黙っててもらえますか?」


 そう口にしたのはクリエで珍しくも怒っている様子の彼女はコメカミ辺りがぴくぴくと震えている。

 対し、トゥスさんは溜息をつき後ろを向いてしまった。

 黙ってるという事なのだろうか?


「言うだけはタダだけど、エルフのアタシが言うんだ。変わるはずがないよ」


 おおーい……。


「トゥスさん!!」

「分かったって……」


 クリエに注意をされ今度こそ黙ったトゥスさんにホッとしつつ俺はエルフの女の子へと視線を戻す。


「うぇ!?」


 するとそこには大粒の涙を流している少女の姿があり……。


「ちょっちょちょちょ……だから、会えないと決まった訳じゃない!」


 そう言うも最早遅く……その場には女の子の鳴き声が響き渡った。

 当然人が集まり始め……俺達は例え勇者がいたとしても白い目で見られることとなり……。


「だから、大丈夫だって!?」


 俺は焦りつつもなんとか泣きやませようとするのだが、効果はない……。

 俺とクリエがわたわたとしている中、一人……原因でもあるトゥスさんは煙草に火をつけ明後日の方向を見ている。

 いや、アンタの所為だからな? と心の中で訴え見ているとちらりこっちを申し訳なさそうな瞳で見て来た。

 うん……反省してるなら泣きやませるのに協力してくれよ!?

 そう叫びたいのを必死に抑え、俺達は結局彼女が泣きやむまで待つことになり……辺りからはひそひそと呟かれる羽目になってしまった。

 ああ……なんでこんな事に……。






「すみません」


 その場では最早所ではなかった俺達は宿へと場所を移し、少女のこれからについて話し始めていた。


「いや、君は悪くない……」

「そうですね、貴女は悪くないです」


 俺とクリエは同時に頷きながらそう口にする。

 すると元凶は……。


「悪かったね……言い過ぎたよ」


 ぶっきらぼうに言い放った。

 すると再び目尻に涙を浮かべた少女に慌てつつ、俺は話を切り出した。


「そ、それで……とにかく稼ぐ方法だ!」


 すると泣き始めるのをなんとか堪えてくれたエルフの少女は俺の方をじっと見つめてくる。

 ぅぅ……可愛いな……この子。


「………………………………」


 そんな事を思い浮かべているとなにやら背中に異様な気配を感じた。

 恐る恐る振り返ってみると其処には見た事もない表情のクリエが立っており、俺は慌てて少女の方へと目を戻す。

 い、一体なにがどうなった? そう思いつつも俺は――。


「や、やり方は簡単だ……君は精霊石の修復や作成は出来るのか?」


 そう、この子はエルフ……なら、稼ぐこと自体は難しくはないのだ。


「……」


 女の子は頷き俺はひとまずほっとした。

 エルフの特権ともいえる精霊石、それを直すことも作ることもできるのはエルフだけ……そして、外に出てきているエルフと言うのは少ない。

 つまり、需要がある職業って事だ。

 例えこの街に他のエルフがいたとしてもこの子の生活分ぐらいは稼げるはず。


「その技術を使って街に貢献する……作った時や直した時に料金を受け取るんだ」


 この子はエルフだし、ここまで来るのに魔物と遭遇しなかったなんて事は無いだろうから武器もそれなりに使えるだろう。

 だから冒険者って手も考えたが、実力がそこらの冒険者並みとは限らない。

 それなら安全策でもある精霊石関連が良いと思った訳で……。


「で、でも掟……」

「もう破ってるじゃないか、どうしょうもない掟をね」


 女の子が躊躇う中、そう口にしたのはトゥスさん以外に居らず、俺は彼女の方へと目を向けにっこりと微笑んだ。

 すると、トゥスさんは溜息をつき……。


「いや、こればっかりは言わせてもらう、もう事は済ませちまってるんだ。キューラの提案はまぁ悪くはない。アタシが考えた方法の様に一発で大金は稼げないけどね……なら乗っておいた方が良いんじゃないかい?」


 いや、うん……言っている事は分かるけど、分かりたくないな。


「トゥスさんはどれだけ賭け事をしたいんですか?」


 クリエも呆れたように口にしたけど、本当そのあたりが気になるが……。


「どうする?」


 俺は女の子にそう尋ねる。

 すると彼女は暫く迷っている様子を見せたが、首を縦に振るのだった。

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