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169 アンデッド

 武器は結局見つからなかった。

 キューラは取りあえず自分の剣をクリエへと渡し自分は粗悪な剣を持つことにした。

 そして、先へと進むのだが……彼らの目の前には冒険者達が……哀れな姿となってそこに居たのだった。

 そのうちの一人はアンデッドとなり、お前のせいだとクリエに襲い掛かるのだった。

「キューラちゃん!!」


 クリエの涙交じりの声が聞こえる。

 だめだ、このまま死ぬわけにはいかない……!


「グレイブ!!」


 俺は咄嗟に魔法を使い、岩の弾丸を迫る腕へと向け放つ。

 すると魔物は避ける事も振り払う事もせずにブレイブを殴る。

 そして……すさまじい音と共にグレイブは割れ、腕はその衝撃で吹き飛んでいく。

 良く見れば先ほど使っていた左腕も変な方向へと曲がっている。

 だが、相手はゾンビだ、痛みを感じる事は無い、勿論疲れもない。

 だが、対するこっちは生身……痛みもあれば疲れもある戦いが長引けばこっちが不利になる。

 そもそもゾンビとは死んだ人間の強さは関係ない。


「……なら……もう!」


 クリエはどうやら戦えない様だし、これ以上時間をかけるのは悪手だ。

 それならば……。


「フレイム!!」


 魔法でカタをつける!!

 そう思ってはなった魔法だったが、ゾンビはこれを受けても平然としている。

 当然だ、いくら弱点とはいえ一番弱い魔法じゃ倒すことはできない。

 しかし、俺の狙いはそこではなく……狙った場所にあった。

 俺が狙ったのは足だ。

 腕はもう使えないだろう、だがまだ足があれば噛みつく事も体当たりも出来る。

 だが脚さえ奪えば一時的にではあるが隙が出来る!!


「へぇ……」


 俺の意図が分かったのか、トゥスさんは感心したような声を上げた。


「焔よ我が声と魔の力にて、その力を目覚めさせ、我が敵を焼き尽くす炎となれ!!」


 詠唱を唱え、準備を終えた俺は魔物へと腕を向ける。

 そして――。


「フレイム!!」


 もう一度魔法を唱え――炎を死人へと向け放った。









 詠唱により威力を上げた炎相手では流石に無事では済まないのだろう。

 魔物は悶え苦しんでその場で暴れている。

 痛みは感じないはずだが、徐々に動かなくなっていく身体をもどかしく感じているのかもしれない……。

 そんな事を思いつつ元々は人間だったそれは倒れ、完全に動かなくなった。


「…………」


 安全かどうか確認をした俺は残っている死体の方へと目を向ける。

 そして、それらにもフレイムを使い火葬をした。

 理由は簡単だ……今は動かなくともいずれ動く可能性があるからだ。

 だからこそ、死体は見つけた人が処理しなくてはならない。


「ぁ……」


 それをどこかおかしい様子で見ていたクリエは俺の元へと近づいて来る。

 どうしたのだろうか? そう思っていたら、彼女は俺を掴むとその胸に引き寄せ――。


「だめ、ですよ……お願いです……お願いですから死んだら……」

「大丈夫だ、死なないって約束しただろ?」


 なんで今そんな事を言われたのかは分からない。

 だが、彼女の様子から過去になにかがあったのだけは分かった……。


「絶対に死なない、アンデッドなんかにならない……約束したろ?」


 彼女を守るのが俺の役目だ。

 それならば、絶対に死ぬ事は許されない。


「だから、安心しろ……な?」


 俺は彼女にそう答え、安心させるために柔らかい声を出したつもりだ。

 だが、彼女に何があったのだろうか?


「二人共、冒険者たちがやられてるんだ此処は危ない……さっさと先に進もう」

「ああ、そうだな……」


 トゥスさんの言葉に頷いた俺はクリエの拘束を何とか抜けると彼女の手を取り……。


「そうしよう、な? クリエ」


 歩き始めた。


「はい……」


 元気のない彼女は小さくそう答えると俺達の後へと続くように歩き……。

 俺達は街を目指して再び進み始める。

 そんな中もやはりクリエの事が気になり、俺は彼女の方へと目を向ける。

 そこには暗い顔をした彼女が居り、何時になったら俺は彼女を安心させられるのだろうか?


「…………」


 焦ったって駄目だ。

 それは分かってる、だからこそ……今は一歩一歩進むしかない。

 でも……。


 気になる事がある……。






 俺は一体どうしたんだろうか? 風邪のだるさは相変わらずだ。

 だけど、あの燃えるような瞳の時は魔力が上がるのだとしても今は別だ。

 だというのに、魔法を使っても以前より疲労が少ない。

 いや、それどころか動くのが大変な程、魔力痛になっていたはずだ。

 しかし、今は違う……痛みもない……。

 これは俺の体力が上がったという事だろうか? だとしたら、少しは成長できているんだよな?

 一体俺の身に何が起きたのか分からない。

 ただ、魔力魔力とは言う物の魔力とは魔法を扱う才能だ。

 精神的な物はあるが使えば体力が減り、魔力痛と言うのは全身に流れている魔力が魔法を使う際流れが速くなりその摩擦で痛みが起きるらしい。

 痛みは時間と共に解消されるが、何故魔法を使うと流れが速くなるのかは分からないがとにかく痛みの理由はそうだという事だ。


 そして、筋肉と同じく使えば使うほど鍛えることが出来る。

 だから急に強くなるって事は無い……だというのにさっきのは何だ? ここのところ続けて俺は戦っていた。

 だから強くなった? いや、そんなに早く強くなれるはずがない。

 とすると……俺が気付かない内に成長していたって事か? なんだか判断しにくい成長だな。


「キューラちゃん?」

「ああ、何でもない!」


 いつの間にか立ち止まっていたのだろう、腕を引くクリエに気が付き俺は慌てて彼女の前へ進む。

 良く分からないことだらけだが、間違いなく成長はしたはずだ。

 今はそれだけで良いじゃないか……。 

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