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168 武器を探しに

 トゥスが目覚めるのを待ったキューラ達。

 彼らは武器を手に入れる為にオークの集落へと足を向ける。

 果たしてそこに彼らの武器は残っているのだろうか?

 結局トゥスさんの銃とクリエの剣、盾は見つからなかった。

 残念に思いつつも、この場に留まる訳にはいかない……俺達は先を急ぐことにした。

 だが――。


「それで、どのぐらいかかるんだ?」


 馬車があって3日の予定だったところが、その馬車がもう手元にはない。

 足を失ったという事はそれだけ時間が掛かるという事だ。


「そうだね、まずは方位に目印になる物……」


 だが、それよりも問題なのが……今何処に居るか分からないと言った所だ。

 俺達は気絶をして連れていかれた訳で、その時実際にどの位の距離を移動したのか分からない。

 だからまずは道を確かめる必要があった。


「えっと、方位はこっちですね」


 慣れた二人はてきぱきとこなしていき、俺はもたもたとしながらもなんとか方位を正すと次は目印を探す。

 目の前には大きな川……多分あれは……。


「マーメイドの住処か……」


 それにしてもゴーレム、マーメイド、オークと中々に面倒な客が多い地域だ。

 ふつうここまで縄張りが重なる事は無いはずなんだが、住処の違いでこんな事も起きるんだな。


「参ったね、此処からだと2~3日下手すれば4日かかるよ」

「ですね……」


 うーん、参ったなぁ……食料はなんとかなるが……やっぱり心配なのが体力の方だ。

 そんな事を考えながら歩いていると目の前にはあの冒険者達が居る事に気が付いた。

 だけど、関わりたくないな、そう考えていたのだが、どうやら様子がおかしい。

 寝ている仲間を起こそうと必死になっているみたいだ。

 だが、仲間は起きない。


「……っ!?」


 違う起きない訳じゃない……あれは……。


「見事に足を持っていかれてるね」


 恐らくは魔物にやられたのだろうそこには見るも無残な光景が広がっており、生きている一人も腕一本無くなっていた。


「魔物に襲われたんですねっ!!」


 クリエはそう言うと彼らの元へと駆けて行く。

 流石は勇者だ……放って置くことはできないのだろう……。

 だが、あまり関わりたくないなっと俺は再度思いつつクリエを一人にする訳にはいかないからしぶしぶと彼女を追って行くことにした。


「どうしたんですか?」


 クリエがそう声をかけると振り返った冒険者……俺からは見えないが……。


「ひっ!?」


 クリエは驚いたような声を上げる。

 嫌な予感と共に俺は急いで駆けつけるとクリエの前へと滑り込み……。


「嘘だろ……!?」


 片目が無い、いや……生きているものの肌の色ではないソレに思わずそう呟いた。

 そう、その冒険者は……生ける屍となっていた。


 アンデッドとは死してまだ地上への後悔が残っている者達が魔物となってしまったものだ。

 痛みを感じず、死の恐怖もない。

 自身の無念を晴らす為なら手段も択ばない。

 そして、最終的には……その目的すら忘れ、後悔だけが残り生きている人間を恨む。

 それが……アンデッド。


「ぁ? ぁ……ぁぁぁ……」

「ど、どうしたんだい、クリエお嬢ちゃん……?」


 俺はクリエとトゥスさんの声を聞き、振り返る。

 そこにはいつもと違う……怯えた様子の少女がアンデッドから目を離せずに立ち尽くしていた。


「クリエ?」


 どうしたんだ? 理由は分からないが…………クリエはアンデッドが苦手なのか?

 いや、苦手と言うよりも……。


『ぅぁ……? ぁぁぁ……』

「っ!?」


 今度はゾンビの方から声が聞こえ、俺は慌てて振り返る。

 すると魔物はクリエへとその顔を向け表情を変える。


『おま……え……の……せい、だ……』


 そう呟き、徐に立ち上がり、クリエへと向かおうとする。

 だが、行かせる訳にはいかない。

 俺は剣を鞘から滑らし――。


「こうなったら倒すしか、ないか……」


 魔物へとその切先を向ける。

 しかし、魔物は向けられている剣には目もくれずにクリエの方へと向かおうとする。

 対するクリエは……。


「ぁ………………」


 その顔に絶望を浮かべ、一言を発するとガチガチと歯を鳴らし始めたのだった。

 本当に彼女はどうしたんだ?

 アンデッドがただ単に怖いという感じではない。

 訳が分からないが……そんな時でも分かることは一つある。


「キューラ!!」

「分ってる……クリエを守る!!」


 そう、俺達の目的はクリエを守る事だ。

 例え初めて会った時は生きていた人間であっても今は生ける屍……魔物だ。

 倒すべき敵にクリエを易々と傷つけさせたりはしない。


「こっちに興味がないなら……無理やりでも興味を持たせてやる!!」


 俺はそう叫ぶと剣を振り抜いた。

 粗悪な剣、使い物にならない剣……それでもゾンビ相手なら通用するだろう、と言いたい所だがそれは別の話だ。

 何故なら目の前の死人は腐っていない。

 アンデッドと言えどなったばかりなのだろう……。

 だが、やるしかない!! 振り抜いた剣は見事に魔物を捉えたが……魔物は此方へと振り向くと表情を歪め、左腕で振り払った。


「駄目ぇええええ!!」


 クリエの声が聞こえ、とっさに後ろへと飛びのいた俺は腕に衝撃が走る。

 続けて聞こえた音で剣が折れたのだと理解した。


「クソっ!!」


 思わずそう不満を口にする。

 すると――。


「――っ!?」


 目の前に魔物の右腕が迫っていた。

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