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166 戦いが終わり

 キューラはオーク達の撃退に成功し、なんとかクリエ達を守ることが出来た。

 ほっとしたもののその場にとどまるのは危険だと考えた彼は移動をすることにしたのだが……。

 幸い体は動いた。

 馬車は無くなってしまったが移動をしないといけない。

 そう思った俺はライムに頼み、二人をこの場から移動させるとすぐに野営の準備へと入る。

 二人は薬でも嗅がされているのだろうか? そう疑いたくなるほど目を覚まさなかった。

 いや、それもそうか……この度が始まってからトゥスさんがまともに寝ているのを見た事は無い。

 クリエだって夢にうなされていた事もあるし、ちゃんとした睡眠がとれているとは思えないな……。


「……良い機会なのかもな」


 見ている限りしっかり呼吸もしているし、表情も穏やかだ……二人がしっかり休むにはもしかしたら不幸中の幸いなのかもしれない。

 そう思い、俺は一人で野営の準備だけはしておいた。

 火を起こすための焚き木は近場に落ちていたし、汚いが水溜まりもあった。

 ライムが居ればそんな水も飲み水に早変わりだ何も問題ない。


 食料に関しては鞄の中の非常食があるはずだ。


『カァ! カァァァ!!』

「レムス、戻って来たか!!」


 それを使うのは後の話だ。

 俺はレムスに狩りを頼み、食料を探して来てもらっていた。

 いくら大きいとはいえ、猛禽類ほどの大きさでは持ち運べるものには限りがある。

 だから、袋を括り付けてやり頼んだのだが……。


「ってこれは……林檎もある?」


 何処で取って来たのか、大量の木の実のなかに2個のリンゴ……もしかしてこれは……。


「ライムのか?」


 俺がレムスに問うと大きな羽を広げるだけで何も答えない。

 なるほど……こいつはツンデレか? 素直じゃないんだな……そう思いつつ、レムスが取って来た林檎をライムへと渡すとライムは嬉しそうにそれに飛びついた。

 ライムは……うん、分かりやすいな。

 自分に素直と言った方が良いんだろうか? とにかくどっちも変わった可愛さがあるな。


「ライム……レムスに礼を言っておけよ?」


 そう告げるとライムは嬉しそうにその身体を震わせる。

 それを見ていたレムスはそっぽを向きつつ、やはり嬉しいのか羽をばたつかせていた。

 うん、間違いなくツンデレだな……。


「それにしても……」


 木の実に野草、それに魚……流石に動物は居ないが十分すぎる量だ。


「沢山取って来てくれてありがとうな、レムス」


 俺もレムスに礼を言うと袋に入っていた木の実を口へと運んでやる。

 好物である木の実ではないが嬉しそうに食べている。

 さて、次は俺の食事だが……料理あまりしたことがないんだよな。

 それに、起きた時の為に二人の分も作らないといけないからな……失敗は許されない。


「だ、大丈夫だ……一応野営の授業はやってるし、そこまでまずい物は作った事は無い……」


 美味しくはなかったが決して食べられなくはなかった味だ。

 きっと、うん……問題は……無い、はず……。

 俺は自分にそう言い聞かせ調理をし始めた。








 出来た物は何と言うか……。


「美味くはない……」


 決してまずくはない。

 だが、美味くもない……魚を使ったスープの様な物を作ってはみたんだが……調味料が足りないのだろうか?

 かと言って塩だって貴重だ、そんなに多く使える訳がない。

 醤油なんかは今は手元にない……いや、寧ろこの世界にあるのかさえ分からない。

 食べれない事は無いが、これは……。


「何と言うか寂しい料理……だな」


 いつも食べれるクリエが作った料理と比べると天と地の差がある。

 寧ろ、食べれない訳じゃない事だけが評価点と言っても良いだろう……。


「なんか、凄く……微妙な物が出来てしまった」


 驚くほどまずい、と言う料理なら話のネタにもなるがこれは……あまりにも感想に困る。

 少しだけ残ってしまった臭いは我慢するとして……も、味が薄すぎる。


「う……ん……?」

「っ!?」


 俺が出来あがった食事に首を傾げていると声が聞こえ慌てて振り返る。

 すると丁度、クリエが身を起こし始めていたところだった。


「クリエ、大丈夫か?」


 俺が相当と彼女はぽかんとした顔で……。


「キューラちゃん?」


 俺の名前を呼ぶ……俺は何度か首を縦に振ると……。


「あの、何……」

「ああ……魔物に襲われて何とか切り抜けたんだ」


 何があったのか? そう聞きたいんだろうと思い答えるとクリエはゆっくりと首を振り……。


「いえ、何を作ってるんですか?」


 そっちか……。


「いや、作ってるというか作り終わったというか……」


 俺は口をもごもごとさせながらスープをすくってクリエに差し出す。

 すると彼女はそれを口にし……。


「味が……ない?」


 そう言って首を傾げた。

 いや、うん……そう言われるとは思っていたが……。


「え、えっとまずくはないですよ!? 食べられないなんて事は無いです!!」


 いや、焦りながら言われてもな……。

 俺が少し落ち込んでいるとクリエは荷物の中から岩塩を取り出し、俺に手渡してくる。


「塩?」

「はい! これをもう少し削って、後は……」


 と呟きながら香草を取り出すと……。


「これを入れればそれだけで味が変わるはずですよ」


 そう言う物なのか? 疑問を感じながら俺はクリエに言われた通りに入れてみる。

 すると……。


「ん?」


 確かに味が違う……薄味ではあるが、しっかりと味が付いてる。


「凄いなクリエ!!」

「うへへへ……」


 俺がそう言うとクリエはいつも通りの笑みを浮かべた。

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