162 助けた翌日
無事冒険者を助けたキューラ達。
だが、彼らは礼を言うどころか、文句を言いに来た。
そんな彼らの対応に助けるのは間違いだったのではないか? と考えてしまうキューラだった。
次の日……。
俺達は水辺に近づくのを躊躇い泥水をライムに飲み水へと変えてもらい食事を取った。
彼らはと言うとこっちを睨みつつも食事を取り、居座るつもりらしい。
クリエは気になっているみたいだが、俺としてはもう関わりたくはない……そう思ってしまった。
「行こう!」
そして、仲間達にそう伝えるとそうそうに立ち上がり、俺は先へと進むことを促す。
トゥスさんは頷き、どうやら賛同してくれたみたいだ。
「さっさと乗りな」
そう言うとクリエもおずおずと馬車に乗り込み俺達は出発をする。
珍しい人間ではあったが……別の意味でクリエには関わって欲しくないタイプだ。
「大丈夫でしょうか?」
「そうは言っても手を貸しても俺達の所為にされるんだ……何を言っても無駄だよ」
俺がそう言うとクリエは悲しそうな表情を浮かべた。
それに対し、俺は――。
「何も見捨てようって訳じゃない、偶々見かけたらそれで助けるさ」
「甘いねキューラは……」
甘いと言われてもそうしなければクリエが気にするし、彼女の性格からして見捨てる事は出来ない。
そして、見捨ててしまったら俺の事を軽蔑するのは目に見えているからな。
まぁ話を聞かないで危険に陥る奴は放って置くのが良いとは思うんだが、それが出来ない以上仕方がない。
「さ……行こう」
そう思い、早くこの場を離れるべく、クリエを急がせると乗ったのを確認しトゥスさんは馬を走らせる。
次の野営地にはああいった奴が居なければいいな。
もし居たら……関わらない様にしておこう。
それには……なるべくクリエの視界に入らない様にしたいが、それは無理だよなぁ。
どうしたものか……。
「キューラちゃん?」
「なんでもない、次の場所はしっかり休みたいなって思ってさ」
「そうでした! キューラちゃん魔力痛は?」
クリエが心配してくれて俺は嬉しさを感じつつ、頷いて答える。
「大丈夫だよ」
だが、本当は大丈夫なんかではない。
魔力痛が治っていない所、更に魔法を使ったのだ……身体中が痛いが、それを顔に出さないようにするのはかなり苦労した。
出来れば早く治って欲しいけど、その間は――。
「一応キューラは休んでおきな」
恐らくは現状を理解しているトゥスさんはそう言ってくれ、俺は頷く。
「ああ、そうさせてもらう、あまり眠れなかったからな」
そう言うと、クリエは目を輝かせ……。
「じゃぁ私の膝に頭を乗せましょう!」
「い、いや……それは遠慮しておく」
嬉しい提案ではあるが、俺の心臓が確実に持たないっての……。
それから暫く進んだ所、魔物には幸い遭遇する事は無かった……。
「はぁ…………はぁ…………ふぅ……」
なんて事は無かった。
俺が動けない以上、戦えるのはクリエとトゥスさんだけだ。
剣術だけで対抗するというのは勇者であるクリエにもきつかったようで、今は馬車で休みながら肩で息をしていた。
「わ、悪い、俺が動ければ……」
ライムやレムスに頼んで戦いには参加してもらってるとはいえ、余りにも申し訳なくそう言うと……。
「仕方ないよ、キューラは魔力痛を抱えながらもマーメイドと一戦交えたんだ」
そう言ってくれるが、二人が魔物と戦っているって言うのに俺だけ何も出来ないってのは辛い。
「キューラちゃん魔力痛が治ってないんですよね? それじゃ、そう何度も……」
そう何回も魔法は使えない。
だが、この世界の魔力は体力や筋力と同じだ。
身体を酷使すれば筋肉痛になることがある様に、魔力痛になる。
つまり、逆に考えれば鍛えることが出来る……けど、筋肉と同じと言う事はしっかり休むことも大事だ。
「分ってる今回はちゃんと休むよ」
俺は強くならなければならない。
それには焦っても無駄だ……強くなるのに一番早い方法はコツコツと積み上げていくことだ。
事実、昨日のマーメイドとの戦いで以前よりは強くなっていると実感は出来た。
以前ならゴーレムの時強化したヘリスイーラを使った後に魔法を使うなんて事は出来なかった。
だが、しっかりと使えていた訳じゃなくともマーメイドとは戦えた。
勿論ライムやレムス、それにトゥスさんが居てくれたからだ。
それでも……俺は……少しずつ成長しているはずだ。
だから今回は……。
「我慢するさ」
「はい! 私達に任せてください!」
クリエはそう言って笑みを浮かべてくれた……。
やっぱり、クリエの笑顔には敵わないな。
どうしても、俺は彼女を守りたいと思ってしまう様になってしまった。
「ど、どうしたんですか?」
彼女を見つめているとクリエは首を傾げて、顔をぽかんとさせる。
「いや、何でもない」
そう言うとクリエは暫くぽかんとしていたが、顔を歪めると……。
「うへへへ……キューラちゃん、優しい顔で可愛いです……うへ、うへへへへへ……」
「お、おう……」
俺は男だ可愛いと言われて嬉しい訳が無い。
だが、それを言うのも気が引ける。
引きつった笑みを浮かべて答えたのは良いが、俺の事よりもやっぱり、クリエのその笑い方はマイナスだよな?
ああ……「えへへ」とか可愛い感じなくても「あはは」とか……色々あるだろうにクリエは何故「うへへ」笑いなのだろうか……。
そして、やっぱり身の危険を感じるんだが……流石にこの状況では何もしてこないよな?




