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161 英雄?

 マーメイドとの戦いに決着をつけるキューラ達。

 冒険者達は無事だったようだ。

 だが、忠告を聞かなかった彼らにキューラは自殺願望者かと告げる。

 当然否定する冒険者に対し彼は溜息しか出ないのだった。

「………………」


 さて、どうしたものか……。


「…………はぁ」


 トゥスさんもため息をついている。

 それもそのはず……。


「……あんな魔物をけしかけやがって!!」


 先程助けた冒険者は剣を構え、俺達の元へとやって来た。

 どうやら魔物をけしかけたと思われたらしい。


「汚いぞ!! 何が勇者だ!!」


 しかも、何故かクリエの所為にされているし……。


「あのなぁ……」


 何より人聞きの悪い事を言わないでほしいな。


「誰が使い魔をけしかける!? 大事な仲間を殺すことになるなんて俺はまっっっっっっぴらごめんだ!!」


 流石に頭に来た俺はそう告げる。

 事実こいつらはあのマーメイドは俺の使い魔だと勘違いしているし、もしそうだったなら俺は使い魔を自身の手で殺したことになる。

 そんな事をする必要があるか? 寧ろ、マーメイドが使い魔なら最初から水に忍ばせてこっそり守った方が楽だ。

 ああ、そう考えると同じ事をライムにしてもらっても良かったかもしれないな。


「他にあんな風に襲われる原因があるのかよ!?」

「そうだ! 俺達は今までずっと無事だったんだぞ!!」


 なんとまぁ運が良い……。

 しかも襲われてもその場に居た勇者(クリエ)が助けてくれるなんて、こいつらは強運なのだろうか? 実に羨ましい。

 ……と思いつつも溜息しか出てこない。

 何故俺は助けてあげたにもかかわらず、襲った犯人に仕立て上げられているのだろうか?


「この魔女め!!」

「キューラは魔女だったのかい? なんとまぁ、弱そうな……」


 トゥスさん、笑いをこらえながら俺をけなすのは止めてくれないか?

 と言うか、貴女も呆れていたはずではないだろうか?


「んぅ?」


 周りが騒がしかったからだろう、クリエは声を上げ、むくりと起き上がる。


「悪い、クリエ……起こしちゃったか……」


 折角良く寝ていたのに、こいつらは……俺は口には出さずに彼らを睨む。


「な、なんだよ?」


 しかし、彼らは剣を構えたままその場に立っていた。


「キューラちゃん、これは?」


 現状を理解したクリエは問いを投げてきた。

 俺は事実を彼女に伝えると、彼女は首を傾げ……。


「魔物は居なくなったんですよね? なら何で貴方達は……」

「うるせぇ!! あの場所が欲しかったからお前達がけしかけたんだろ!!」


 突然の怒号にクリエはびくりと身体を震わせた。

 おいおい、女の子に向かって怒鳴り声を上げるなよ……。


「あのな、怒鳴る必要があるか? 俺はやってないって言ってるだろ?」

「他に誰が居るんだよ!!」


 おいおい、こいつら駄目だ……全然話を聞かない。

 いつまで経っても話は平行線だ、頭が痛くなってきたぞ……。

 そう思いつつ、俺は大きなため息をついた。

 注意しても駄目なのはまだ良いが、まさか助ける羽目になってもこうだとは思わなかった。

 さて、どうしたものか……。

 そんな風に俺が困り果てていると相手は表情をますます歪めて行き……。


「その顔! やっぱりお前の仕業なんだな!!」


 なんでそうなるのか……。


「昔からそうだ! 勇者は特権だとかなんだとか言ってなんでも優先される!」


 それは貴族や王が作った勇者が離反しないためのくだらない対策だって言えたらどんなに良いだろうか?


「俺達はそんな事、絶対に従わないぞ!!」


 ああ、そうかい、そうならそれで良いだが……。


「話を聞いてればガキどもが……言いたい事ギャァギャァ騒ぐのは構わないけどね……冒険の基本すら知らないあんたらの馬鹿話に付き合わされるこっちの身にもなってみな」

「「ト、トゥスさん!?」」


 今まで話を聞いていたトゥスさんだったが、こめかみをぴくぴくと動かし始めるといきなり怒鳴り始めた。


「何だと!?」


 何だと言っているが、これに関してはトゥスさんの怒りに賛同だ。

 事実、こいつら何を言っているのか分からないしな……。


「良いかい? 水辺は確かに大事だ。だけど危険な魔物が居るかもしれない……それもマーメイドみたいな奴だと他の動物には害はない」

「ああ、だからこそ他の動物や人型以外の魔物は水辺に集まってくるんだよな……」


 俺はトゥスさんの言葉に続き答えると、彼女は頷き……クリエもまたコクコクと頭を振った。


「動物にとっても危険なら、此処には集まらない、ましてや毒があるなら花も咲かない……」


 そして、スライムが居る水辺は動物には人気だ。

 スライムも縄張り意識が強いが、元からいる動物に対しては何の反応もしない……。

 そう、だからこそこの世界にある水辺は安全かどうか判断するのは難しい。


「そして、万が一水の中に引き込まれたらどうやって対処するんだい?」

「そんなのは魔法でどうにかなるに決まってるだろ!!」


 いや…………それは――。


「無理……ですよ? 皆さん人間ですよね? 詠唱を言わないと魔法は使えません……」

「混血や魔族でも同じだ……魔法の名を言えなければ例え無詠唱が出来たとしても意味がない」


 強力な魔法を使える代わりに魔法使いにはそう言った弱点がある。

 俺達の話を聞き、彼らは流石に黙ると思ったんだが……。


「これだから、勇者一行は馬鹿なんだ!!」

「行こうぜ!! ああ、そうだあそこは俺達の水辺だ! お前らの顔を見たくはないから、去るまでは使うなよ!!」


 お、おお……なんという、なんというか……うん……何て言ったら良いのか分からないな?


「「「……………………」」」


 去って行く彼らの背を見ながら、俺達はあまりの態度に開いた口がふさがらなかった。

 うん、助けたの……間違いだったか? 結構無理したんだけどな。

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