１５６ ゴーレム戦
新たな目的を得たキューラ達はアルセーガレンへと向かう為に旅立つ。
目的の地は遠く、長い道のりになるだろう……。
そんな彼女達の前に現れた魔物ゴーレム。
果たしてキューラ達は倒すことが出来るのだろうか？
振り上げられた大きな岩の拳を地面へと……いや、俺達へと叩きつけるゴーレム。
「させません！！」
だが、それはクリエの盾により遮られた。
一件華奢にも見える彼女だが、この度で分かった事は戦いの時は何時だって勇敢だ。
そう、本当の意味での勇者……その名が相応しいのはやはり彼女だろう。
「よくやったクリエお嬢ちゃん！！」
動きが止まったゴーレムに対し轟音と共に攻撃を仕掛けたのはトゥスさんだ。
彼女は一見エルフとは思えないが、その知識、武器は頼りになる。
ただ、常々思うのはダークエルフにしか見えないがどう見ても所謂森エルフなんだよな……。
そんな事を悠長に考えている間、彼女の攻撃はゴーレムの拳へと当たるが……。
「チッ！！ やっぱり、頑丈なのは苦手だね……」
トゥスさんの戦い方では一撃が重要だ。
威力がある分、次の攻撃には時間が掛かる……以前の様に弾を込める係が居れば銃をとっかえひっかえ使う事も出来るが……現状は不可能だ。
それにその威力を防ぐ程の頑丈さがあったんじゃ話にならない。
「トゥスさん……私もそう何度も耐えられるわけじゃないですよ！？」
クリエが叫んだとおり、彼女もまた何度も耐える事は不可能だ。
恐らくゴーレムの様な敵とは相性はある意味良い。
だが、長期戦になればじり貧になるのは彼女だ……。
ゴーレムとはそれだけ厄介な相手だ……俺に出来るのか？ いや、やるしかない……！！
「我が道を阻む者……その身打ち砕かんため我、女神ヘリスに願わん、汝の子である我の怒りを聞き……」
俺は少し離れ詠唱を唱え始めるが、ゴーレムだって馬鹿ではない……。
近くにあった岩を持ち上げるとそれを俺へと投げて来た……当然俺自身に避ける術はない。
「キューラちゃん！！」
「馬鹿！！ クリエお嬢ちゃん行くな！！」
クリエは焦りこっちへと走ってきてしまうが、トゥスさんはそれを慌てて止める。
それで良い、トゥスさんのお蔭で俺は安心して避けることが出来る。
いくらなんでも大岩をライムに防いでもらってもその主さでつぶれかねない。
ここは――。
『カァァァ！！』
大きな翼広げたレムスは鳴き声を上げた後に俺の服を摘まんだのだろう引っ張られる感覚がし、足元には――。
『………………』
まるでタイミングを合わせたかのようにライムがその身を広げていた。
本来レムスはそこまで重い物を運べるわけじゃないが、足元が動くのであれば別だ。
「我が敵に汝の裁きを――」
ライムとレムスのお蔭もあり、ギリギリのところで岩に潰されずに済んだ俺はゴーレムを視界に入れる為、走る。
そして、視界に魔物を捕らえると――。
「――我が怒りの矛を天より賜らん！！」
詠唱を終え――魔法の準備はこれで終わりだ。
「ヘリスイーラ！！」
邪神の妻ヘリス……その名が付いた雷の魔法はまるでドラゴンが咆哮を上げるような轟音と共にゴーレムへと真っ直ぐに落ち……。
「――――――っ！？」
使った事もない大魔法を更に強化するなんて事をしてしまったためか、全身に焼けるような痛みが走る。
「っ！？ かっ……！？」
呼吸は出来ず、痛みを声に出そうにも嗚咽ぐらいしか出る事は無い……意識を失おうにも痛みで目が覚める……。
慣れない事なんてするもんじゃないな……だが、これで……ゴーレムは倒し……。
「た……？」
そう思いつつ、見た光景は信じられない物だった。
確かに石は電気を通しづらいという事は知っている。
だが、雷は電気だけじゃなくその衝撃波も恐ろしい物だ……岩だって割れる。
だというのに目の前の魔物はヒビは入っているものの動いている。
「――！！」
クソ！！ もう一度魔法を！！ そう思い身体を動かした瞬間――。
「――――っぅ！？」
動けない……痛みとも感じ取れない、いや痛みを通り越し最早何も感じなくなっているのだろうか？
俺がうずくまる間も魔物は動いている、なんとかしなくちゃならない！！ だってのに……。
「キューラちゃん！！」
クリエの声は近づき……どうやらまた、彼女に守られてしまう様だ……。
近くにはレムスもライムも居る……情けないな。
そう思っていると……。
「クククク……よくやったキューラ十分だ……」
悪役が笑ったような声で……そう聞こえると、続けざまに聞こえたのは轟音。
何事かと何とか顔を上げると……そこには崩れいくゴーレムの姿が見えた。
「な……」
「あれだけヒビが入ってるんだ……アタシの銃も通じる」
悪だくみを成功した悪の幹部。
例えるならそれが適切であろうエルフの女性は……俺の方へと近づいて来ると……。
「よくやったじゃないかい、だけど相当無理をしちまったね。暫くは休んでな」
そう口にし……クリエへと目を向けた。
「クリエお嬢ちゃん、運んでやりな」
「は、はい！！」
そして、俺はクリエの手によって馬車へと運ばれ……横にされた。
結局俺の一撃でゴーレムは倒せなかった……なんて言うか……やっぱり、情けない。
だけど、これが今の俺だ……悲観的になっても前へと進まなきゃらならないんだ。
「無理は……無茶はしないでください」
クリエにそう願われても……。
「死なない限りは無理はする……絶対に守ってやるから……」
俺の口から出る答えは同じだった。
