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154 武器使いの賢者

 キューラは修行のためアルセーガレンと言うエルフの都市に住む賢者を尋ねる事にした。

 しかし、そこは遠く……。

 すぐに修行が出来る訳ではなさそうだ……。

 俺達の新たな目的地……エルフの都市アルセーガレン。

 そこに向かうには長い旅路を強いられることになる。

 何せその森があるのは神大陸の端。

 今いる場所も実は端に近い方ではあるが……。


「正反対だな……」


 思わずつぶやいてしまったが、そう……正反対の方に俺達は居る訳だ。


「でも行くって決めたんだろう?」


 トゥスさんは溜息交じりでそう呟き、俺は頷く。

 彼女の言う通りだ、俺が行くって決めた。

 そして、仲間であるトゥスさんはそれに賛同してくれた。

 残るクリエは……。


「修行……そうすればキューラちゃんに……無理させないで……」


 どうやら、彼女は彼女で乗り気の様だ。

 とにかく、俺達が向かう先は決まった訳だ……。

 そう言えばその老人はどんな人なのだろうか?


「なぁ、村長……その人は――」

「分らん」


 俺が質問をしようとした所、返答は質問を言い切るよりも早く帰って来た。


「その人は――」

「分らん」


 ………………質問をしていないのだから分かるはずもないだろう。


「だから……」

「分らん、どのような容姿、性格なのかも分からないのだ」


 おい待て……。


「それはちょっとないんじゃないかい? 賢者と謳われるほどの腕を持ちながらも大陸中に名をとどろかせる訳でもない、その上どんな人物か分からないってのかい?」

「それはそうだが、事実分からないのだ……何故賢者と謳われていても知る者が限られているのかも……唯一分かっている事は数多の武器を使いこなせるという事だけだ」


 マジか……。

 うーん……とたんに会うのが不安になって来たな。

 いや、待てよ……?


「なぁ、その人ってもしかしたら、貴族や王族に何か不満を持たれたんじゃないか? それなら名声を得る事もないんじゃ……?」


 あくまで可能性、しかし……貴族や王族に何かをされればその名が有名にならない理由の一つになるかもしれない。

 いや……無いか? 本当に達人であれば独り歩きしそうだしなぁ……。

 などとぼんやりと考えていると……村長は申し訳なさそうな物へと変えた。


「それも分からないな、しかし、そうだな……まだ若い女を向かわせるのには不安かやめておくか?」


 いや、俺は男だって……とはいえ確かに不安と言えば不安だ。

 だけど……。


「いや、実際にこの目で確認してみるさ」

「そうか、すまないが頼む……ではアイシャよ、旅の準備を!」


 村長はそう言うが、アイシャは不本意そうに頬を膨らませつつ「はい」と答え部屋の外へと向かっていってしまった。

 そんな彼女を見つつ……村長は複雑そうな笑みを浮かべた。


「どうした?」

「いや、あの子は拗ねているのだ」


 ん? 拗ねて?


「あの子自身、勇者を助けようと躍起になっていた……剣を学び魔法を学ぼうとした……だが、その才能は無かった」

「…………」


 そうか、あの子が夢を見てこの村の人達は勇者達の末路を知っていたんだったな……。


「それだけではない、最初は誰も話を聞こうとは思わなかった……事実今でもワシについて来てくれたとはいえ、勇者は死すべき存在と思っていた村人は居た」

「そうなのか……」


 クリエは一瞬顔をこわばらせ、俺はこっそりと彼女の手を握ってやった。

 ……ん? 待てよ?


「ちょっと待った、今居たと言ったかい?」


 俺が感じた疑問に一足早く尋ねたのはトゥスさんだ。


「ああ、今では神の子を助けようと皆が力を貸してくれる……」

「何だってそんな風に変わったんだ?」


 俺は続けて尋ねるとラルクは俺の方へと目を向け……。


「それがあの子も拗ねている理由だ……キューラよ、お前が変えた……村人がお前と神の子二人で歩いている所を見てだ……」

「ちょっと待て、それだけで変わる物なのか?」


 そうは思えない。

 俺はそう思うのだが……。


「勿論、それだけではない……お前が神の子を救おうと動いているのは伝えている。それもあり、今がある」


 うーん? どう考えても人の気持ちを動かせるほどの人間じゃないんだけどな俺は……。


「だからこそ、自分には出来なかった事、それを出来るお前に嫉妬しているのだよあの子は……ずっと神の子を救う為に共に戦うと夢見てたのだからな」

「…………そ、そうだったんですか」


 なるほどな……確かに俺は度に加わった理由は違うがクリエを助けようとしているし、魔法は勿論、不得意ではあるが剣は使える。

 だけど、もし立場が逆だったら、俺もアイシャに嫉妬していたのかもしれない。


 …………なるほど、だから最初に年が近いだろう俺が勇者と共にいた時に噛みついて来たのか。

 そして、彼女は自分と同じでクリエを助けようとしてると分かって尚更……。


「気にしないでやってくれるか?」

「ああ、勿論だ……」


 寧ろ、同じ事を考える人が居て嬉しいぐらいだ。

 彼女の為にも俺は何としてもクリエを助けないとな。

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