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153 修業の場は……

 足の傷を癒したキューラ。

 その足で向かうのはやはり村長の所だ。

 修業を付けてもらう為に向かった彼だが、果たしてその修業とは?

 そして彼の師となる者は一体?

 顔が熱い……。

 いや、熱がある訳ではない……だが、先程から顔が熱い。

 その理由は先程のクリエの所為だ。

 いや、彼女の所為にするのは悪いが……それ以外、どう言ったら良いのか……。


「と言う訳だ……聞いていたか?」

「…………」


 いや、だっていくら旅をし始めてから一緒に居たからと言ってクリエの様な美人に顔を近づけられたら男なら誰だって……。


「キューラよ……」


 仕方がないだろ? 黙ってればクリエは非の打ち所の無い女性だ。

 目の前に女の子が居ればただの変態と化すが……。

 この頃もそれに慣れてしまったのか、特に言う事もないっというか、彼女は俺がお気に入りみたいだが……それは良いのだろうか?

 女の子の身体ではあるが俺はれっきとした男なんだけどな。


「キューラ……」


 いや、でも嫌われるよりは良い。

 って話の論点はそこじゃない! とにかく、俺は美人に弱いという事が分かった。

 いや、男なら誰でも……。


「ぶつぶつとなにを言っているのか分からないが……キューラよ! 聞いていたのか!?」

「――――へ!?」


 俺は大声で呼ばれた事に驚き、慌てて顔を上げる。

 すると、村長には大きなため息をつかれてしまった。

 いや、人の名前を呼んで溜息ってなんだ? そもそも、そんな大声で呼ばなくても良いじゃないか……。


「聞いていなかったな?」

「なんのことだ?」


 質問に質問で返すのは失礼にあたる。

 それは分かってはいたが、何を聞いていなかったのかが分からないのだから仕方がない。


「良いか? お前達はこの先……ある森に居る老人の元へ尋ねるのだ」

「老人?」


 俺がそう返すとラルクは頷き……腕を組むと言葉を続けた。


「ああ、武器使いと言われる老人だ……精霊銃の様な特殊な武器は使えん、しかし剣や槍、武術など数多に渡りその才能を発揮した者だ」

「……は?」


 意味が分からなかった……俺だって学校では剣術、体術そしてメインで教わっていた魔法。

 この三つが受けていた学科だ……そしてこの上に知識を蓄える基礎学科が入っていくる。

 だが、選んではいたもののはっきり言って剣術や体術はターグには追いつけなかった……。

 逆にターグは槍や斧が苦手だと言っていたし魔法の才は全くない、つまり一人で色んな武器を使いこなすのは不可能だ……なのに数多の武器!? そんな事ありえるのだろうか?


「信じがたいのは分かる……しかし、賢者と言って良いほどの達人だ……」

「そんな奴が何で今まで陽の光を浴びなかった? 普通噂になってるだろ!?」


 俺は彼に尋ねると彼は頷き……。


「確かにそうだ……だからこそ、一部には伝説として謳われていたのだよ。武器も持たずふと現れてはその場にある武器を拾い敵を倒す者としてな」


 いや、聞いた事が無い。

 その情報確かなのか? 不安だけど……他に修行のあてもないんだよな。


「それで、その森ってのは?」

「アンタ本当に話聞いてなかったんだね」


 トゥスさんに鋭い指摘を受け俺は項垂れる。

 俺自身、全くだと思ったからだ……深いため息が聞こえ、顔を上げると其処には村長の姿があり、彼は仕方がないといった風に口を開く……。


「エルフの森……その外れにその老人は居る」

「エルフの森……」


 俺はその名を繰り返し……ふと首を傾げた。


「って、何処だ?」


 そしてトゥスさんへと尋ねると……。


「エルフの森……通り名ではあるけどエルフの都市だよ。森全体がエルフの集落なのさ……普通は森の中の一部で生活するんだけどね」

「へぇ……」


 なるほど……その都市の名前なら知っている。

 確か……。


「って事は……その森はアルセーガレンか……」

「そうだ、そこに居ると情報が入った」


 なるほど、神大陸にあるエルフの王国……その都市、か……とするとやっぱり、面倒な事になる。


「他には誰かいないのか?」


 そう思い俺は訪ねてみると、彼は首を振る。


「そうか……」

「何か問題があるんですか?」


 クリエは自身の事だというのに気にした様子もなく首を傾げ始めた。

 すぐに検討が付きそうなものなんだが、クリエは時々抜けているような気がするな。


「貴族と王族だね……それにその老人も腕が立つなら城に招待されている可能性もある……勇者の話を聞いているという事は十分あり得るね」

「……っ」


 一瞬だが、クリエの表情が強張った。

 やっぱり怖いんだろう……そうだよな、怖くない訳がない。


「地道に修行をするしかないか」

「しかし、自己流では限度があるぞ? 一握りの者だけが……高みに昇れる」


 それは分かってはいる。

 だけど、クリエを危険にさらすのは……いや、駄目だ。

 それじゃ今までと同じだ……もし、相手がクリエを犠牲にするのを良しとしていても、修行には関係ない。


「…………」


 今は俺自身が強くなることが重要なんだ!


「キューラ、ちゃん?」


 なら……。


「やっぱり、行ってみよう」

「へぇ……ほんの少し前は乗り気じゃなかったのにかい?」


 トゥスさんは最もな指摘をしてきた。

 しかし、もう腹は決めたんだ。


「ああ、それでも修業が出来るのと出来ないのとでは違う……」


 そうだ……この世界で俺達と同じ考えの人は少ない。

 それならばどうあがいても修業をつけてくれる人を探せないかもしれない。

 学校に戻るって手もあるが……賢者と言う人に教わる機会なんてそうそうないだろう。

 まだ、教われると決まった訳じゃないんだけどな。


「そうかい、なら行ってみるのもいいかもね、酒はまずいし煙草もないけどね」

「そ、そこなんですね……気にするの……」


 トゥスさんの言葉にクリエは飽きれたような声でそう口にした。

 思わぬ突込みに俺は吹き出しかけたが、真面目な顔を保ち……多分保てて入るとは思う。


「とにかく、行こう! アルセーガレンに!」


 目的地の名を声に出し、仲間達へと告げた。

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