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135 新たな使い魔

 大烏の魔物ニースクロウ。

 まるで猛禽類の様な魔物はキューラを追い詰めていく。

 しかし、とっさに投げた木の実は魔物の好物で……?

 どうやら、懐いた様だ。

「レムス、空から馬車が見えないか確認をしてくれないか?」


 俺は新たに迎えた使い魔である魔物(ニースクロウ)にそう頼みこむ。

 するとレムスはその大きな翼を羽ばたかせ大空へと舞っていく……。

 やはりライムと同じで仲間になってくれれば心強い魔物だ。

 そう思いつつ、俺はその場にあった岩へと座り込み、ライムへと手を伸ばした。

 するとライムはその身体を伸ばし手を払いのけてくる。


「ライム?」


 プルプルと震えるライムは足から動く事は無いが、どこか不満気だ。

 どうしたのだろうか? 気になったが、その理由が思いつかない。

 首を傾げているとレムスが戻って来て『カァ!』と大きな一声を発するとその身を摺り寄せてきた。

 何だか可愛いなコイツ……そんな事を思いながら頭をなでてやると満足そうに身を震わせている。

 その直後……。


「ラ、ライムさん? なんか足の締め付けが強くなってないか?」


 そう、ライムが何故か足の締め付けを強くしてきた。

 タイミング的に……もしかして、レムスに嫉妬でもしているのだろうか?

 全く仕方のない奴だな。

 そう思い、俺は再びライムへと手を伸ばす。

 すると、やはりライムは手を払いのけてくる。

 参ったな……どうやら拗ねているみたいだ。


「ライム……別にお前を嫌いになったり、飽きたりなんかはしないからな? 大事な仲間なんだ」


 ライムは賢いからな。

 使い魔が増えた事は分かっているし、俺が可愛いなと思っているのも理解しているだろう。

 だからこそ、面白くない……そう思っているはずだ。

 だが、ライムは俺にとって初めての使い魔。

 そして、これまでに何度も助けてくれた頼れる存在だ。


「ありがとうな」

『………………』


 俺がそう伝え、3度目に手を伸ばすとようやくライムは受け入れ、大人しくなでられる。

 今回もずっと無理をさせているんだ……攫われた子の中に魔法が使える人が居たら、さっさと治してもらってライムを休ませてやらないとな。

 この間もセージスライムであるライムの力で傷は癒えている。

 それで疲れない訳がないはずだ。


「もう少しだけ頼む……後で林檎をあげるからな」

『……! …………♪』


 言葉は無い、だけど何となく喜んでいるのが分かった。

 ライムの機嫌が直った所で俺はレムスへと目を向ける。


「レムス、それで馬車は見つかったか?」

『カァァ!』


 俺の言葉に答えるかのように鳴いたレムスはその場から飛び立ち、少し進んだ所で俺達を待つ……どうやら見つけて道案内をしてくれるみたいだ。







 レムスの案内の元ゆっくりと進むと開けた場所でそわそわとするトゥスさんを見つけた。

 彼女はレムスの羽音が聞こえたのだろうはっと表情を変えると銃を取り出し始め――。


「ま、待ってくれトゥスさん! 敵じゃない!」

「……キュ、キューラ!?」


 瞳を丸め、此方へと寄って来た。

 そして、俺の様子を見るなり……。


「アンタ……よく無事だったね」

「ああ、なんとかな? とは言っても見逃してもらえただけだ……」


 奴の気が変わらなかったら今頃……俺は死んでいただろうな。

 とはいえ、次に会った時も結局は同じ運命をたどる……いや、それよりもひどい目に遭う事は宣言されているんだ。

 気が重いっての……。


「それにしても、戻って来るなり……キューラ、何連れているんだい?」


 彼女の視線の先、そこにはレムスの姿がある。

 まぁ、普通は聞くだろう、俺は戻って来ない。

 そう考えていたら、戻って来て、更には知らない魔物を連れているなんて誰が予想できるだろうか?


「帰りの途中で襲われてな、こいつも運良く手懐けられた」

「普通、魔物はもう使い魔が居る奴には懐きづらいんだけどね……とにかく、嬢ちゃんらの中から神聖魔法を使える奴を探しておいたよ、さっさとその足治してもらいな」


 流石はトゥスさんだ。

 もし、戻って来れたらの話を考えてくれていたんだな。

 俺は彼女に感謝しつつ、頷くと彼女の指差した方へと目を向ける。

 そこには青い顔をした少女が一人と怒った様子の少女が一人……青い顔をしているのがドワーフのイール、怒っているのがステラだ。

 イールは魔法が使えないはずだし、ステラが魔法を使えたのか……。

 その事に驚きつつも、近づいて行くと俺の姿を見てイールはガチガチと歯を震わせ始めた。

 そりゃ怖いよな……村があんなになっていたんだ。

 もし、戻って来たのが俺じゃなかったらなんて考えているんだろう……。


「あ、あんたね! そんな足でよく……の、残るなんて!」


 その上、怒った様子のステラにも怒鳴られてしまった。


「ああ、傷響くからあまり叫ばないでくれ……とにかく、少しでも良いから頼めないか?」

「…………」


 仏頂面の少女は俺へと近づいて来る。

 どうやら、魔法は使ってくれるみたいだ……ほっとしつつその場にあった岩へと腰を掛け待っていると……ステラは俺の足の傷を見てその表情を変えた。


「どうした?」

「な、なんでもない……」


 その声は震えていて……手もまた震えていた。


「傷つきしものに、大いなる加護を……キュア」


 唱えられた魔法は回復魔法の中でも一番最初に教わるもの……。

 勿論、チェルの様な魔法を期待していた訳ではない。

 寧ろ少しでも治る事に感謝していた。


「………………」


 だが、ステラの方は何かを気にしてしまったのだろうか? 途中で魔法を止めてしまった。

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