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134 大烏の魔物

 何とか窮地を脱したキューラ。

 彼はトゥス達と合流すべく歩みを進める。

 しかし、そんな中……行く手を阻む魔物が現れ……。

 相手はニースクロウ。

 戦うなら厄介な相手だ。

 すばしっこく頭が良い上にそれを生かし鋭利な(くちばし)と爪で攻撃を仕掛けてくる。

 炎の魔法で……とも思ったが、周りは森だ広がったらそれこそただじゃ済まない。

 使えるのは剣と別の魔法だけだ。

 だが、こいつ相手に俺の魔法は通じるのか?


「グレイブ!!」


 試しに魔法を撃ってみると魔物はひょいっとかわしていく。

 そして、バサバサという大きな音を立て――。


『カァァ! カァァ!!』


 ああ……あの鳴き声は馬鹿にしているんだろうな。

 くそっ!! だが、どうする?

 魔法は通じない……いや、待てよ? 遠隔魔法の方ならどうだ?

 さっきは成功したんだ……それにリスクも低い。

 うまくいけばこいつを――。


『カァァァァァァ!!』

「――っ!?」


 思考する中、突然魔物は大きな鳴き声を上げてこちらへと向かって来る。

 慌ててしゃがみ込みそれを避けると足には痛みが走った。

 ライムのお蔭で痛みが若干引いているとはいえ、穴が開くほどの傷だ。

 そう長くはもたないな。


『カァァァァ!!』


 魔物(ニースクロウ)はやはり賢く、俺がふらついた隙を狙い再び襲い掛かってくる。

 だが、俺もただやられてやる訳にはいかないと剣を握り、迫る魔物目掛けそれを振るう……。

 しかし、魔物の方が早くやはり簡単に避けられてしまう。

 だが――。


「グレイブ!!」


 再び放った魔法は奴の逃げた方向から飛び出してくる――はずだった。


「……は?」


 轟音を立て木へと当たった魔法は俺の視線から真っ直ぐに飛んでいったのだ。

 何故だ!? さっきはちゃんと思った方向から飛んでいたはずだ……なのになんで!?


「……って!?」


 困惑する俺が新たに気が付いたのはめきめきと音を立てる木。

 それはゆっくりではあるがこちらへと傾いて来ていた。

 さっきの魔法の所為だ! 俺は原因に気が付きようやく身体を動かすとその木は真横に倒れてきた。

 もし、もう少し音に気が付くのが遅れていたら俺は下敷きだっただろう……ぞっとする。


『カァァ!! カァァ!!』


 倒れた木の上で烏は停まり再び大きな鳴き声を上げている。

 これは間違いなく馬鹿にされてるな……くそう……何か頭に来るな。

 そう思った俺は近くにあった木の実に目を付けた。

 手に持つと固くはないが当たったら痛いだろう……。


「この……」


 俺はそれを魔物へと目掛け投げようと腕を振り上げる。

 すると……。


「ん?」


 先程まで騒がしかった烏はぴたりと泣き止み、此方へと目を向けている。

 いや、此方と言うか俺の手か?

 まさかな……そう思い、ゆっくりと手を動かすと烏の視線は手を追って行く……。


『カァ』


 そして、一声を上げた。

 まさか、まさか……試してみる価値があるのか?

 俺はそう思い、深呼吸をして烏の手前へと木の実を投げ――。


「や、やるよ……」


 そう言うと烏は羽を震わせて喜んでいるのだろうか? とにかく暫くそうしていた後、木の実をつつき始めた。

 もしかして好物だったのか? いや、烏は雑食性だ。

 肉、魚、木の実、果物、卵……色々と喰う習性を持っていてゴミをあさる。

 だからこっちの世界でも害鳥として知られている。

 だが……さっきも思った通り手懐ける事さえ出来れば……心強い。

 そう考えながら烏の様子を窺うと木の実を食べ終わったらしい烏もじっとこちらを見ている。

 周りを見てみればまだ木の実はある……続けて投げてやると嬉しそうに食べ始める。

 自分で取りに来て食べればいいだけだが、賢いからこそ不用意に近づかないのだろう……。


「…………」


 周りにある木の実をすべて投げ、烏が食べ終わったところで俺は腕を伸ばし……。


「来い」


 烏へと告げる。

 すると大きな羽を羽ばたかせ此方へと向かって来るが一向に腕には降りたたない。

 まだ懐いていないのだろうか? そう思っていると近くの地面へと降りた烏は此方へと身を摺り寄せてきた。


「……どうした? なんで腕に――」


 そこまで言って俺は気が付いた。

 この烏は猛禽類の様に爪が鋭い……服を身に着けているとはいえそのまま降りては俺の腕が傷つく可能性がある。

 その事に気が付いて降りなかったのか?

 俺は烏の頭を撫でてみると先ほどの様に羽をバタバタとさせ喜び始めた。

 どうやら……鳥の問題はこいつのお蔭で解決出来そうだ。


「それに助かったって事か……」


 実際は使い魔でないニースクロウは一匹ならばクリエやトゥスさんさえいればそれほど脅威ではない。

 だが、俺一人では強敵だ。

 ライムの時もそうだったが俺はどうやら悪運が強いのか? とにかく、助かった。

 俺はほっとしつつライムに付いた土を払ってやると立ち上がる。


「ライム、それに……」


 そう言えば懐いたなら名前を付けてやらないと……登録証にも使うしな。


「レムス……行こう」


 新たに加わった使い魔の名前を何となくライムに近い名前にする。

 すると自身の新たな名前だと理解したのだろう……。


『カァ』


 一つ鳴き声を上げるとレムスは羽ばたき空へと舞う。

 一方ライムは俺の足を支えながらプルプルと震え答えてくれた。

 後はクリエ達と合流するだけ、だな……。

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