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123 騙し討ち

 キューラの作戦は単純な物ではあったが、効果は抜群だった。

 しかし、見張りを無力化させることには成功したのだが……敵は増えてしまうのだった。

 そうだ、仲間一人に手を汚させて自分は綺麗なままなんて都合がよすぎる。

 もう一人は殺してしまった。

 いくらトゥスさんがそう言った事になれているからと言ってもそれで良いという訳にはいかない。


「テメェがやったのか?」


 駆け寄ってきた男は倒れている奴を見て地を這うような声で威嚇をしてきながら俺を睨む。


「待て! こいつには――」


 女の方は唯一自由がきいた口を動かすが……喋られても面倒だ。


「――むぐぅ!?」


 俺は未だ使っているバインドの魔法で猿轡をするともう一人を睨む。

 すると男は笑い……。


「驚いたな、そいつはうちの中でも優秀だ……不意を突かれたとしても魔法一つで拘束されるとはな」

「グダグダ話すつもりはない、今すぐさらった娘達を介抱しろ、それと生きて帰れると思うなよ、闇商人……」


 俺も出せる精一杯の声で脅しをかけるが、相手は聞くなり大笑いをし始めた。

 すると値踏みをするかのように俺を頭から足まで見始め、その視線に気持ち悪さを覚えた。


「仲間がもう1人いるんだろ? それとも2人か? まぁ、何人居ようが関係はない……」


 要求に応える気はないのだろうか、まるで会話にならないな……それどころか笑みを浮かべた男は再び倒れている方へと目を向ける。

 隙が出来た! まるっきりの素人ならそう思うだろう。

 しかし、俺はその場から動けなかった……隙がある様でないのだ。

 その証拠にトゥスさんも静観しているようだしな。


「……撃たれた奴は新入りだったんだが、使えなくてな――」


 そう言うと男は大きく息を吸い。


「どうだ? 奴隷にしてもいい値段が付きそうな小娘だが、奴隷にしたら勿体無いな! 男か女か分からんが隠れてる奴もだ! 色は付けてやる俺と一緒に商売をしないか?」


 なるほどな……金で俺達を釣ろうって事か……。

 確かに下手に出て戦うよりも良いだろう、闇商人とはいえ馬車を持って居る訳だしな。

 馬を見た限りではしっかりとした筋肉に綺麗な毛並み……馬は当然生き物だし、金がかかる訳だから儲かってはいる。

 だが……。


「無いな」


 俺が呟いた言葉を引き金にしたかのように銃声が再び鳴り響く……その弾は寸分狂わず真横に居た女へと吸い込まれていき。


「――!?」


 わざと急所は外したのだろう、肩を撃たれた女はその場に崩れる。


「……寛大な対応をしてやったと思ったんだがな……どうやら、奴隷の方が好みだったか……」


 精霊石の影響で気を失っている女を見て男には怒りの色が見える。


「新入り一人はくれてやっても良かったが、そいつとなると仕事に支障が出る……覚悟は良いか?」


 そう言いつつ剣を構えた男の顔は歪み……彼が放つ殺気はまるで熱気が迫るようにも感じられ思わず足を一歩引きそうになる。

 だが、此処で引いたら二人を無意味に殺しただけだ。

 精霊石は回収しなければならないし、攫われた女性達も気がかりだ。


「覚悟は……とっくにしてるさ」


 例え人を殺めてもクリエを助ける……嫌われるかもしれない。

 今はそれが怖いと今でも思う……人を殺めているのを見てトゥスさんに言いがかったことが遠い昔にすら思えた。

 だけど……クリエの為に……いや、クリエを言い訳に使いたくはない。


「俺がクリエを助けたいから……これからの事は自分で決めたんだ」


 それが例え嫌われる結果になろうとも、例え魔王になろうとも……俺は彼女を助けよう、それが単なる俺のエゴだって事は分かっている。

 だけどそれでも……。


「クリエ? 誰の事だ……攫った奴に友達でも居たか?」


 それでも、たった一人に世界の命運を背負わせるこの世界は間違っているのだとは分かる。


「……お前には関係が無い、だけど……」


 そして、人を不幸に陥れ裕福な暮らしをしてるだろうこいつらも許すことはできない。

 貴族と何も変わらない連中だ。


「関係が無いのにうちのを傷つけてくれたのか? ぁあ!?」

「だけど、お前達は闇商人だろ? みすみす見逃せるわけがない」


 俺がそう言うと男は面白い物を見るように表情を変え……。


「面白い、度胸は座ってるようだな! だが、実力はどう……だかなっ!!」


 迫ってくる。

 動きが決して見切れない訳じゃない、だが……どうあがいても俺では間に合わないだろう。

 普通にすればの話だが……。


「アイスアロー!!」


 だから、まずは相手の視界を奪う事が優先だ!!

 俺はロクに魔力を練らずに大量の氷の矢を幾つも作り出し男へと放つ、一番近くにまで飛んでいったものは軽く剣ではじかれてしまった。

 しかし、攻撃の為に使った物じゃない。

 他が残ってればそれで良いんだ――――。


「我が敵を焼き払え……フレイム!!」


 続けてつかったのは魔力を練った炎の魔法。

 氷は瞬く間に溶けて行き……。


「馬鹿か!? 自分で自分の魔法を消すなんてなぁ!!」


 男は笑い声を上げながら突進をしてくるが……。


「あん?」


 ようやく何が起きているか分かってきたようだ。

 そう、最初に放った氷の矢は数が重要だった……だからこそ魔力を練れてなくとも数を増やせば良い。

 次の炎は魔力を練りすぐに消えない様にしその場にとどまらせることが重要だ。

 事が終われば目印となるそれは邪魔になる……魔力を練りすぎても駄目だ。


「こ、こいつは一体!?」


 そう、俺の目的は霧だ。

 良く霧で視界が奪われ車の事故などが多くなることを警戒する。

 だが、霧は水……残念ながら混血である俺には水の魔法は使えない。

 ならば別の物で代用するしかない……。


「馬鹿な! 詠唱も無しにアクアスモッグ何て……そもそも混血のガキが!!」


 そして、男には予測以上に効果があった。

 湯気による視界阻害だけではなく混乱効果もあった様だ……。

 後は音を立てない様に移動し……とびっきりのをぶち当ててやる!!

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