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122 キューラの作戦

 闇奴隷商人。

 彼らから少女を救いクリエの魔力を手に入れる為、キューラは戦う事を決意する。

 そして、彼には作戦があったのだが……?

 俺は準備を済ませるとライムへと命令をし水筒へと隠れてもらう。


「よし」

「大丈夫なのかい?」


 心配そうに呟くトゥスさんに頷いて答えた俺はボロボロになっていた服を纏っていた。

 以前魔王の配下と戦っていた時に使っていたものだ。

 それに辺りの土や葉っぱをつけ、ばれないように顔にも土をつける。

 そう、俺は何かに襲われているという設定でここから飛び出し、奴らの気を引く……。

 俺がいつもの格好のまま飛び出しても装備の所為で戦えることはばれてしまう。

 それだけなら良いが魔法を使えると分かると厄介だ。

 相手に必要以上に警戒されてはいけない……奴らにカモと思わせることが重要だ。

 俺は元々男だがクリードの闇商人には商品として見られたぐらいだ……それなりの価値はあると思われるはずだ。

 …………自分ではそう思わないけどな。


「じゃ、行って来る」


 そう言って、俺はトゥスさんから離れ奴らの元へと向かう。

 トゥスさんは最後まで不安そうだったが……。

 大丈夫だ……これでも俺は結構演技派だ。

 相手を騙せないという事は無いだろう……。









「ここで良いか」


 俺はある程度歩いた所でぼそりと呟き、走り、途中で脚をもつれさせるように草陰から飛び出す。


「な、なんだ!?」


 物音と飛び出して来た人影に警戒する男と奥に目を丸めている女。

 馬車を連れ歩いていた奴らだ。

 まだ居たはずだが、恐らく小屋の中にでも入ったのだろうが、問題はない。

 俺は荒くした呼吸を整える様に大げさに息をすると……。


「た、助けてください!!」


 そう叫ぶと男女は目を合わせ一瞬目元だけで笑うと男は警戒したのかその場にとどまり、辺りを見回し女の方がこちらへと近づいて来た。


「た、助けてってどうしたの?」


 焦った様な口調で俺を気遣うように手を這わせるが、同時にそれは拘束の様でもあった。

 だが、俺は偶々見つけた冒険者に助けを求めるだけだ。

 寧ろこんな時にそんな余裕はないだろう……がたがたと震え、首をぶんぶんと横に振る。

 すると困った様な顔をした男は……。


「おいおい、それじゃわからないだろ?」

「襲われたの? その人はこの近くに居るの? それとも魔物?」


 呆れ声の男とは違い、女は心配そうな声を出す。

 この人も中々に演技派だ。

 だが……どうやら騙されてはくれているみたいだ。

 俺はそのままがたがたと震え、女性の服を片手で掴むと何かを訴えようと顔を持ち上げ――。


「あ? ああ……あああ」


 がたがたと歯を震わせる。

 すると再び二人は目で合図をすると俺が何かに襲われていると信じたのだろう、男の方まで近づいて来た。


「しょうがない、特にかく運が良かったな。もう安全だ」


 そう言って笑みを浮かべるが、女程柔らかな笑みではなく何かを企んでいそうな顔だ。

 さて、ここで下手な演技なら男の方にも縋りつく……だが、俺はびくりと身体を震わせると再びガチガチと歯を震わせ……。


「お、おい?」

「アンタの顔が怖いんだよ……」


 そう、あの様な分かり切った笑みを浮かべられたら誰だって怖がるだろう。

 呆れた様子の女は此方へと目を向けると柔らかな笑みを浮かべ……。


「大丈夫だよ、こいつは顔は怖いけど根はやさしい……さ、小屋があるから何があったか話してごらん」


 そう言いつつ女は俺を気遣う様だが、その手にはしっかりと力が入っており逃がしてくれないのは分かった。

 俺も商品にしようって事だろう……。


「そうだな、何があったのか分からないと助けようがない」


 男もそう呟いた時――。


「――――――――んど」


 俺は顔を伏せ呟く……。


「は?」

「どうしたの?」


 呆けた声と柔らかな声が響く……俺はゆっくりと顔を持ち上げ……。


「何があったのか? お前らが今まさにしてるんだろ?」


 笑みを浮かべていた女の表情が固まり、焦りへと変わる。

 一方男の方は呆けたままで何が起きているのか分かっていない様だ。


「おい! 早くこの場から――」

「もう遅いって……」


 俺の呟きが合図になったかのように森の中に雷鳴のような音が響き渡る。

 そして、男の身体はぐらりと揺れ……地面へと倒れるのだった。


「だ、騙したね!!」


 そう叫ぶ女は俺を掴む手に力を入れる。

 だが……もう遅い……。


「って、え?」


 身体が動かない事にようやく気が付いたのだろう……()()()であるバインドによって()()されている女は再び驚愕の表情を浮かべ……。


「そんな、魔法!? 詠唱なんて聞こえ――」

「聞こえるはずはないさ、詠唱を使ってないからな……」


 そう言って俺は女の拘束から抜け出すと遠くから駆け寄ってくる男に気が付いた。


「おい! 何の音だ!!」


 どうやら銃声を聞きつけて来たみたいだな。

 さて、トゥスさんだけに嫌な役目はやらせる訳にはいかないな……。

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