急変
魔力が無い、その事実を聞いたキューラ。
その事に気を取られつつの食事だったが、クリエとトゥスに声を掛けられ食事をあらためて口に運んだ彼は喉をうるおそうとコップに手を伸ばした。
しかし、右目の視界が奪われ……原因不明のその現象を治そうとクリエは魔法を使い。
倒れてしまうのだった……。
「クリエ!!」
俺は倒れてしまったクリエを揺するが、彼女は目を覚まさない。
「馬鹿! 頭を打ってるかもしれない、下手に揺するな!!」
するとトゥスさんにそう怒鳴られ、俺はハッとし彼女を揺する手を止めた。
「注意した途端に……これかい」
右目は見えづらいがしっかりと見える左目に映るのはトゥスさんの焦った様な表情と倒れたクリエ。
トゥスさんはクリエの顎の下や額などに手を触れ……。
「熱は無い……か……」
「魔力が無い時に魔法を使うと熱が出るのか?」
俺はすくなくともそんな話は聞いた事が無い。
そう思い尋ねてみると……彼女は眉を寄せ首を静かに振った。
「その逆さ……」
「ぎゃ、逆?」
なら、そんなに問題はないだろう、熱が出たら大変だけど熱が出ないで下がるなら……。
あれ? 人間って熱が下がって良いのか?
「体温が下がると病気などにかかりやすい、だから人や動物は一定の体温を保ってるらしい……」
「そうだったのか!? でも、それと魔法となにが関係あるんだ?」
倒れた事はどう考えても魔法の所為ではあるが、体温が下がる原因には思えない。
「魔力ってのはエルフ、魔族、人間の3種族にある特別な物だ……だが、厄介なことにこいつが無くなると命に係わる。その理由が急激な体温の減少だ」
「……は?」
どういう事だ? 体温が下がり続けるって事だよな? そんな病気があるのか?
少なくとも俺は知らない……そもそも体温ってどうやって運んでるんだ?
ええっと確か血液の流れが悪くなると冷え性になるのか? だったら血が運んでる? なら血液を温めれば……って今そんな事を考えてもどうする事も出来ないじゃないか!?
「驚くのも無理はない、魔力が完全になくなるなんて事は滅多に無いからね、一種の呪いの様な物さ……そして、体温が下がってしまう、その特徴を逆手に取ったのが……」
トゥスさんは静かに自分の持つ銃を持ち上げた。
そうか、エルフの暗殺術はそうやって魔力を奪い、傷だけではなく毒の様に殺すって事か……。
しかも毒ではないから、後には残らない……でも、そうすると!!
「クリエは無事なのか!?」
「熱は出てないが、触った感じ熱が下がってるね……まだ大丈夫だよ。でも……このままだと……」
俺はその後の言葉を聞き……呆然としてしまうのだった。




