113 残る不安を……
商人との交渉を進めたキューラ達はその足ですぐに冒険者の元へと尋ねる。
その理由は簡単な事だ……。
果たして、キューラは残す不安を解決できるのだろうか?
さて、残る問題はこの商人ベルグをしっかりと守ってくれる人だ。
それについては左程困った問題でもないし、現に今交渉中だ。
何故こんなに話が簡単に進むかというと何せ金が使えるからだ……。
ベルグとの交渉では使えなかった理由は勿論信用、信頼と言った言葉もある。
金があれば信用出来るだろう、だけどそれ以上に儲かるのであれば貴族の方にふらつく可能性だってある。
何より、俺達にはベルグの心と腕を買い取る財力は無い。
だからこそ、直接交渉し、今ここでの金銭でのやり取りではなく彼に判断してもらう形で交渉をした訳だ。
だが、護衛については別だ。
特に冒険者であれば今後の信用にかかわってくるから一度受けた依頼をほっぽり出すなんて事は無い。
それにクリードまで行けば王様であるカヴァリの支援があるだろう。
つまり、そこまでベルグの安全が確保できればそれで良い、後は王様に一筆を入れ願いを伝えるだけだ。
そう思い俺達は村人から情報を貰い冒険者のいる宿へと向かい、交渉をしていた。
「さてと、という訳で……俺達が向こうに行った後ベルグをここまで、いや……クリードへ辿り着くまでの安全を確保してほしいんだ」
「それでこの金額か……多すぎやしないか?」
そういうのは偶々この村に来ていた冒険者一行の頭らしい男性。
名前はランディと言うらしい……顔だけ見れば強面だ。
しかし話してみると良い奴だということが分かったので今回頼む事にした。
「それだけ重要な人物なんだよベルグは」
「いや、なんと言ったら良いのか私なんかが申し訳ない」
いや、恐縮された上に謝られてもな……事実彼の手を借りなければ成り立たない話だ。
「ですから、貴方達にもそれなりの報酬としてその金額なんですよ」
と言ってクリエが指をさした先には金が入っている布袋。
因みにランディ達は4人パーティーらしく1人250ケート、つまり1000ケートが入っている。
大金だ……というか、俺が王様にもらったお金は全部なくなり、クリエやトゥスさんの財布からも出してもらうことになった。
まぁ、魔物や人との戦いも少ないだろうし、このぐらいの任務なら4人で500ケートでも良いくらいだ。
つまり倍、ランディが多すぎるっていうのも当然だ。
「何か裏があるんじゃないのぉ?」
笑いながらそういう桃色髪の女の子……確か名前はシャロ。
現代風でいうならロリータファッションというものに身を包んでいる神聖魔法使いだ。
そのふりふりの衣装がツボなのか、クリエは最初この子がいる事からランディ達に頼もうと言ってきかなかった。
現状も彼女がしゃべるたびにでれでれしているのが俺としてはなんだか複雑だ。
「キューラちゃん、シャロちゃんですけど可愛い服ですよね? ね?」
「そ、そうだな……」
というか悪寒がするのは何故だろうか?
「シャロ……今キューラさんがそれほど重要な人物と言っていたでしょう? ましてや王国まで送るんです。それだけ腕と信頼を買ってくれているという事ですよ」
眼鏡の位置を直しつつシャロへとそう言うのはカウラというエルフの男性だ。
彼は目の前で煙草を咥えたトゥスさんへと目を向けると「しかし」と口にし……。
「勇者様やキューラさんは行動も説明も理解できます……が……貴女、トゥスとか言いましたよね? その口に咥えている物は何ですか?」
明らかに怒った様子のカウラはどうやらトゥスさんが気にくわない様だ。
「煙草」
しかし、トゥスさんがそんな事を気にしない性格というのもあり、あっさりと加えている物の名を口にするが……多分何ですかの意味はそうじゃない。
「そうではありません! 何故! 私と同じエルフである! 貴女が! そんなものを吸っているのですか! と聞いているんです!!」
「まだ吸ってない……お嬢ちゃん、火」
いや、それは屁理屈ってものだろう……というか今の言葉でカウラががっくりと項垂れている。
「なんと薄汚れ切ったエルフ……」
「お嬢ちゃん、早くしてくれないかい?」
この状況で俺に火をつけろって言われても困るぞ? つけるにつけれない……。
俺はそう思い彼女の方へと目を向けた所でなにかを察したのか、火打石を取り出し自分で火をつけると顔を背けて煙を吐き出した。
すまないまともなエルフのカウラさん……トゥスさんの事は人に向けて煙を吐き出さないだけましだと思ってくれ……。
「で、その……クリードまで送ったらどうするの?」
最後に残っていたのはドワーフの女の子、ヴァニラだ。
彼女は身の丈に合わない大きな斧を背負ったまま椅子に腰かけているが重くないのだろうか?
それとこの子も可愛らしいが為、クリエの目の保養にされてるのは言うまでもない。
「その後は俺の名前を使って城でしっかり休んでくれ……後は自由にしてくれて構わない」
「だけど、依頼の内容な誰にも言っちゃいけないし、情報も口にしてはいけないってことでこの金額ってことか?」
ランディの言葉に俺は頷き答える。
そう、1000ケートも払うんだ、口止め料も中には当然入っているって事だ。
「それで、頼めるか?」
俺は念のため、訪ねてみるとランディは頷き……。
「おうよ! 俺達は一度受けた依頼はきっちりこなす! この依頼受けさせてもらうぜ」
歯をむき出しにしながらそう口にした彼は金が入った布袋へと手を伸ばした。




