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112 もう一つの準備

 手紙を届ける為に村へと向かう事に決めたキューラ達。

 だが、彼らはすぐに出発する事は無く……どうやらキューラには考えがあるようだが?

 さて、まだ日も高い。

 食料も村長に十分な程頂いた。

 早速出発しよう、という所で俺達はある人を探していた。

 その人とは……。


「お嬢ちゃん、意外と抜け目ないね」

「抜け目がないというよりもコネはなるべく使った方が良い」


 ネットゲームでも専属の武器商なんかが居てくれると色々と便利だ。

 そんな事を呟くと……。


「ねっとげーむ?」


 聞きなれない言葉を繰り返すクリエは何処か可愛らしい。

 いや、確かに元から美人だけど! って俺は何を考えているんだ? クリエが可愛いって……今はそうじゃなくて……まぁ、うん……男が美人に弱いのは仕方ないか……でも悲しい事に俺は警戒もしなくちゃならないが……。


「とにかく、あの馬車持ちの商人、彼にも手伝ってもらう……アメルーをクリードへと運んでもらうにも信用が出来る人じゃないと駄目だ。その相談をすることも含めて途中まで送ってもらう」


 そう、俺はここまで運んでくれた商人。

 あの人の手を借り、村までの距離を縮めようと考えた。

 当然、彼の安全の為にも報酬は払うしそれなりの腕の冒険者か村民を雇うつもりだ。

 その上でアメルーの事を交渉する。

 そう専属とは商人の事だ。

 勿論彼らが損するのでは話にならない、そもそも話に乗ってもらえないからな。

 だからこそ、王、村長、商人で上手い事、連携を取って欲しい訳で……と思ったんだが。


「でもなんであの商人なんだい?」

「俺達の知り合いで他に商人ているか? それも少しでも話を聞いてくれそうなやつが……」


 クリエの特権を使えば聞いてはくれるだろう。

 だが、村長はあくまで俺への依頼として出した……クリエの力を借りるのは得策とは言えない。

 もし本当に……村長の考えがああならば、味方は増やしたい。

 だからこそ、俺は……いや、俺達はクリエの特権に頼らない方が良い。

 そんな俺の想いは伝わったのだろうか、トゥスさんは暫く考えた後……。


「確かに知り合いはいないね……ま、お嬢ちゃんが受けた依頼なんだ自分でなんとかしな」


 うん、まるっきり投げられたなこれは。

 まぁ、なんだかんだ言ってもトゥスさんは手を貸してくれるのは分かってるんだ。

 なんと言われようが問題はない。

 見捨てられなければ……だけどな、とにかくそこは気をつけよう。


「じゃぁ、あの商人さんを探すんですね」

「ああ、昨日の今日だ。まだ村に居るはずだし宿を当たってみよう」


 宿を当たると言っても村だ。

 そんなに多くの宿がある訳じゃない。

 ならすぐに見つかるはずだ……そう思い俺達は一つ一つ宿を当たることにした。




 何度も言うが小さな村だ。

 探し人である商人はすぐに見つかった。

 丁度、食事の為にテーブルに着いたのだろう、水を口に含む彼を見つけた俺はその机へと近づく。


「おや? 貴女達は……私に何かようですか?」


 商人ベルグは俺達の顔を見るなり笑みを浮かべて手で椅子に座るように言って来た。

 当然用がある俺達は促されるままに机へと着くと――。


「実は頼みがあるんだ」


 っと話を切り出す。

 すると本当に自分に用があるとは思っていなかったのか目を丸めたベルグは焦った様に取り繕うと……。


「こんなしがない商人に何の御用でしょうか? もしかして失礼をしてしまいましたか?」

「いや、そんなことはないよ、助かった。そこでさっきも言ったとおり少し頼みがあるんだ」


 俺がそう言うと彼は興味深そうな顔をし、身を乗り出して会話を聞こうとしてくれた。

 どうやら話だけでも聞いてくれるみたいだ。

 安心しこれまでの事を説明をする、勿論勇者と神の子の事は除いてだ。

 この人にそれを伝えたとしても混乱するだけだろう……。

 そう思ったんだが……。


「ふむ、なるほど……村長に頼みをされたんですか……勇者様ではなく従者様に……それも快く受けるとはまるで伝承にある勇者そっくりですな」

「……ん? その伝承って有名なのかい? アタシ達は誰も知らなかったんだけどね」


 トゥスさんの言葉に商人は首を振って答える。

 どうやら有名ではないらしい。

 それもそうか、もし有名ならばクリエが大変な目に遭うなんて事は無いだろうしな。


「これでも商人ですから、色々な話も知っているだけです……情報収集は商売繁盛の決め手となりますからね」


 ああ、なるほど……確かにそう言われてみればそうだ。

 一見関係ない話でも何が売り上げにつながるかなんて分からないからなと俺も思う……なんて考えていると彼は笑みを深め。


「その手の話は本に起こして立派な商品になるんですよ、ただまぁ大昔の勇者の話を売り出した日には貴族に何をされるか……」


 彼は心底残念そうに呟いた。

 それほど期待していたという事なんだろうか?


「いや、ともかく、分かりましたクリードと取引できるのであれば私が断る理由はありません、その仕事慎んでお受けいたしましょう」

「良いんですか? 下手をしたら貴族に目をつけられるかもしれませんよ……」


 クリエが心配そうに告げたことは頼んでおいてなんだが俺も思っていた。

 しかし、商人ベルグは首を振り……。


「実は私も貴族はあまり好きではありません、税金だなんだと折角稼いだ金を多く取られますからね、それに――従者様の案に乗り上手く事が進めば王に口利きもしてもらえるでしょう?」


 なるほど、抜け目がないな……流石商人だ。


「ああ、その件については善処をする」


 しかし、こっちとしても断る理由が無い。

 そう伝えると彼は笑みをさらに深め喜んでいた。

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