10 受難は続く
何故か服屋へと連れて行かれたキューラ。
着せ替え人形とかした彼はその場を切り抜ける為、言えに服がある事をクリエへと告げた。
そして、装備を整えたのちキューラの家へと二人は向かったのだが……?
家へと着いた俺達は……いや、俺は呆然としていた。
その理由は言わずもがな……。
「おお! 分かってくれるか流石は勇者だ!」
「いえいえ、そんなことは……あ、でもこっちの服も似合いますね! とっても可愛いです!」
「あら、嬉しいわ……それは作るのに苦労したのよ」
ああ……女神スウディ様……俺は一体なぜこのような辱めを受ける羽目になったのでしょうか?
妖魔の血が流れているのに魔神フェリキや女神ヘリスを信仰していないからでしょうか? いやでも……俺が住んでるのは神大陸だし……。
こっちの信仰すべき神様って聖神ガゼウルとスウディしかいないしなぁ……後は大陸共通の商売の女神ケートぐらいだし……。
ともかく……俺が言いたい事、願う事は一つ………………………………………………………………………………助けてください。
「あれ? キューラちゃんなんで泣いてるんですか?」
「泣きたくもなるわ!? なんで場所変わっても着せ替え人形のままなんだよ!?」
寧ろ両親が加わった事でさっきより悪化してるだろうが!?
本当になんでこうなったって言うかこんな天丼はいらん天丼は!!
「……で、でも」
でもってなんでそんな悲しそうな顔で俺を見る……。
「でも?」
「さっきキューラちゃんが言ったんですよ? 頼むぞって……」
なんでクリエはこの世の終わりの様な顔をしてって……俺が言った?
いや、もしかしてクリエ……まさか……。
「いや、俺が言ったのは魔王討伐を頼むぞって言ったんだよ……じゃなきゃ犠牲者も出るし……」
魔族の血が流れているのは両親共々だ。
つまり、俺の新しい両親はまだ狙われてはいないものの奴らのターゲットになっているわけだ。
「え? それは分かってますでも……」
ん? なんでまたそんな悲しそうというか怯えるような顔を? もしかして、魔王を殺す事に抵抗があるのか?
いや、相手はすでに犠牲を出している奴だぞ?
「でもじゃなくて……俺も魔王を倒すまではこのままだし、とにかくこのまま女の子として一生を生きるのは無理だ。特に俺は男とは付き合えない」
そう言うと何故かほっとする父親……おい、何で今安堵したんだ?
まさか、俺が男の所に嫁に行くとでも考えたのだろうか?
そうだとしたら冗談じゃないぞ……。
「私は娘のかわいい孫が見たいのだけど……」
「男が子供産める訳ないだろ!?」
全く何を言っているんだこの母親は……いや、まともではあるか……その娘と言う言葉の部分さえ違えば……。
「だ、大丈夫ですよ?」
そんな中、綺麗な声は耳にすっと入って来て俺はやっと安心し息を吐く……。
やっぱり、クリエは勇者だけある……言葉一つで安心できるとは思わなかったよ……。
しかし、魔王討伐をお願いするんだ多少の無茶は聞いてあげた方が良いかもしれな――。
「神大陸では同性同士の結婚も認められていますから、大切にしますよっ! 子供なら孤児を育てれば良いんです」
「今俺は心の中で呟いた言葉を前言撤回したよ……」
というか、子供の件は全く解決してないだろ……。
いや、孤児の保護は大事だと思うが……解決はしてないよな?
「え? え?」
なんでそんなぽかんとした顔で首を傾げる。
それにしても……この勇者大丈夫なのか? さっきの発言からすると魔王討伐をする気が無いみたいにしか思えないんだが……。
「あ、そうだわクリエちゃんの部屋はキューラと同じ部屋で良いかしら?」
「はい! 勿論です! それ以外にありません!」
「ちょっと待て急に何を言い出してる?」
というか本当に急に何を言ってるんだうちの母は……。
「だって、今日から従者なんでしょ? だったら勇者様を守る為にいつもそばに居なければならないでしょ?」
「いや……まぁ、そう言われるとそうなのか?」
なんかすごく納得はいかないが、確かに俺は従者な訳だし、いつでも駆けつけれられる場所に居るのは当然だな。
だが……。
「男と女が同じ部屋ってのは問題だろ? 俺は襲うなんて事はしないが……」
「何を言ってるんです? キューラちゃんは可愛い女の子ですよ?」
クリエの言葉に頷く両親……というか先ほどの発言は訂正しよう。
だってそこにはやたらと息を荒くする勇者の姿が見えるし……これ男が襲うんじゃなく、女に襲われる。
なんだ……場合によっては羨ましいとすら思われるシチュエーションのはずなのに嬉しくない……。
「いや、まぁ……今日は学校に戻るよ報告もあるしな」
「あら、まだ話してなかったの?」
「ああ、ちょっと装備やらを揃えててさ……」
正しくは拉致されたと言った方が良いんだろうが……今回はそれのお蔭でどうにか逃げられそうだ。
「そうですか、でしたら私も――」
「悪いなクリエ……あの学校は生徒と教師以外の泊まり込みは禁止になってるんだ」
以前、何か問題があったみたいでそう言う校則のが今の俺にとって功をそうした。
だが……なんだクリエのその笑顔は……
「はい! 知ってますよ、学校に向かいましょうか?」
「あ……ああ、でもさっき言った通り……」
身を寄せて来るクリエに俺は嫌な予感を感じ、思わず身体を遠ざけようとすると彼女はそれに構わず手を取り――。
「あ、あのクリエ?」
「さぁ、あの学校の校長に会いに行きましょう!」
「ちょ!?」
こいつ直談判する気だ!? そう思い俺は両親の方へと目を向けるが……何故か二人は見守る様な笑顔だ。
おい待て!? 男として襲われるならまだいい……だが、このままじゃ女として襲われる!?
「だ、誰か助けてくれぇぇぇぇ!!」
叫び声を上げる俺にクリエはぷくりと頬を膨らませ――。
「そんな、襲い掛かったりはしませんよ? 寝顔を見たり、寝顔を見たり……少し、ちょっと」
「そのちょっとってなんだよ!?」
いや、聞きたくもないが……そのちょっとが怖くてたまらない。
「だ、大丈夫です、寝ている時に襲うなんて非道な事――」
「起きてる時は良いってのか!?」
勇者の言葉に反論をするが彼女は明後日の方向へと視線を彷徨わせ、その手につかんでいた俺の手を引っ張り歩き始める。
勿論俺はずるずると引きずられて行くはめになったのだった。
だ、誰か本当に助けてくれ……このままじゃ本当に女として襲われる……!! 俺は……従者になるの早まってしまったかもしれない。