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99 倒れた旅人?

 野営を終えたキューラ達は再び歩き始める。

 しかし、村に辿り着く為にはまだ一回は野営をしなければならないだろう……。

 馬車があればと思う一行の前に一人男性が現れ、彼はその目の前で助けを求めるように手を上げると倒れてしまうのだった。

「た、助けてくれ!!」


 俺達が近づいた事に気が付いた男性は叫び声を上げ立ち上がろうとする。


「ど、どうしたんですか!?」


 先程は警戒した方が良いと言っていたはずなのにクリエは駆けつけながら声を張り訊ねると――彼はクリエの正体に気が付いたのだろう。


「おお! おおおお! 勇者様! お助け下さい! 私の馬車が魔物に!!」

「馬車が魔物にだって!?」


 俺が彼の言葉を繰り返すと大きく頷いた男性。


「ああ、この先の村に行商に向かおうとしたんです! だけど、魔物に襲われちまって」


 馬車が襲われたか……しかもこの先か、これは運が良いな。

 そう思った俺はトゥスさんの方へと目を向けた。

 すると彼女も悪人の様に笑みを浮かべ頷いた、助けようという事だろう。


「その馬車はどこにあるんだ?」

「ああ、ありがたい、この先です、勇者様、従者様この礼は必ず」


 それは助かるな。

 礼の方は村まで連れてってもらう事にしよう。

 そう決めた俺は頷きつつ男性の手を取り立たせる。


「私は行商人のベルグと言います、どうかお願いいたします」

「ええ、任せてください!」


 商人に対しクリエはそう告げるのだった。





 商人ベルグに連れられ、俺達が向かった先には――。


「凄い、量だな」

「ええ、急にですよ……」


 確かにそこには魔物が居り、積み荷の中身であろう食材を貪っている。

 なるほど、餌を狙って商人を襲ったみたいだな。

 しかし……


「あれは確か……」


 雑食性の魔物で早い話が大きなカラス、名称はエマークロウ。

 カラスの魔物にはもう一匹違う種類が居るんだが……そっちじゃなくてよかったとは思う物の……エマークロウは俺が知っているカラスと同じ大きさ見た目ではあるが、やっかいだ。


「クリエのお嬢ちゃんじゃ分が悪いね……」

「そう、ですね……」


 トゥスさんの言葉にクリエは苦笑いを浮かべる。

 彼女自身も苦手な魔物だと理解してるのだろう、何故ならあの魔物は群れで行動するからだ。

 そして確実に目標を追い詰める。

 いくら頑丈なクリエと言えどあの魔物相手では分が悪いのだ。

 かと言って俺が得意かというとそうでもない。


「仕方ない、アタシが相手をしてやるよ……」


 どうしたものかと悩んでいるとトゥスさんは銃を構えた。

 そして、目を細めると引き金を引き――辺りに銃声が鳴り響く……すると一匹の魔物が倒れ、それに驚いたかのように他の魔物は羽を羽ばたかせ辺りを警戒し始めた。

 そのうちの一匹がこちらへと振り返り――。


『ギャァ! ギャア!!』


 と大きな鳴き声を上げる。

 カーカーと鳴くと思っていたが、どうやらそうではないらしい。

 だが、そんなことはどうでもいい。


「こ、こっちに来ましたよ!!」

「お嬢ちゃん魔法を頼むよ」


 慌てるクリエに冷静なトゥスさん。

 俺はトゥスさんの方へと向き、首を縦に振り……。


「ああ!!」


 と答えると――


「シャドウブレード……」


 魔法を唱える。

 すると数匹程度は撃ち落とす事が出来たが――。


「数が減らない!!」


 俺が叫んだように魔物の数は減っていないも同然だった。


「いや、減らすさ……」


 トゥスさんはそう言うと再び銃を構える。

 確かにトゥスさんの腕前なら仕留める事自体は難しくない。

 だが、持っている武器が問題だ。

 あれは単発式……弾を込めるのも時間がかかる。

 そう思い、彼女の方へと顔を向けると――。


「は?」


 今まで見たことの無い銃を持っていた。

 彼女はそれの引き金を引き、銃声を奏でる。

 すると、魔物は次々に撃ち落されていく……

 魔法か? いや、精霊石を使っている以上ある種魔法ではある。


「ゴブリンの事があったからね、ちょっと直しておいたのさ、まぁ……応急処置だったけどね」


 今の一発でイカレテしまったのか銃を見て舌打ちをする彼女だったが、俺はようやくそれが何なのか理解が追い付いた。


「あ、あの数を一発で……?」


 商人が驚いてトゥスさんの手にある銃を見つめているが、恐らくあの銃は――。


 散弾銃……だ。

 そんなものがあるならさっさと使ってほしかった。

 そう思いつつも、先程直しておいたと言った事を思い出し、俺は口を閉ざす。


「チッ……もうこれは駄目だね……お嬢ちゃん、後は頼むよ」

「へ? 俺か!?」


 急に話を振られ驚きつつも俺は魔物を魔法で撃ち落としていく……頼むよと言ったもののトゥスさんの方が撃ち落とす数が多かった。

 だが、そのお陰もあって数が多く厄介な魔物エマークロウは何とか退治することが出来た。






 積み荷の殆どは駄目になってしまったが、商人ベルグは俺達に頭を下げる。


「何とお礼を言ったら良いのか」

「いや、結局は間に合わなかったんだ。頭を上げてくれ」


 商人にとって商品は命そのものだ。

 その商品が魔物の餌食になってしまった以上、彼にとっては大きな損失。

 俺達に助けを求めた時にはもう手遅れだったとしても、助けられたとは言い難いだろう。


「いえ、馬と車だけでも助かったのは勇者様達のお蔭です」

「うへへ……私は、何もしてませんけどね?」


 クリエは笑いながらそう言うが、苦手な魔物相手に戦うのは危険だし、仕方がないよな。

 それに積み荷の片づけは手伝っていたんだ……何もしていない訳じゃない。


「いえいえ! そうだ何かお礼をすると言ったのですが……」


 うーん、結局荷物は駄目になった訳だし、頼み辛いが商人の顔を見ると断り辛くもある。

 この際頼んでみるか……


「実は――足が欲しいんだ。この先の村に行くための」


 俺がそう言うとトゥスさんとクリエは共に頷く――すると商人は笑みを深め。


「そんな事でしたらお安い御用です。さぁさ、乗ってください」


 あっさりと乗せてくれた。

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