プロローグ
パソコンを前に俺は溜息をつく……。
「何やってんだよ……俺」
そう言った理由は目の前の画面にある。
最難関クエストで盾、それが俺の役目だった。
というか、よくよく考えなくても盾になれる訳が無い……だって……。
「やっぱり無理だったんだって! AGI型で壁なんて! 囲まれたらどんどん回避率下がるんだからよ!!」
そう憤っても意味はない、何故なら先ほどから俺宛にウィスパーチャットが飛んできていてその内容はほぼ罵声だった。
「いや、居ないからやってくれって言ったんじゃん……」
そもそも俺の得意分野は一対一それを説明してのこれなんだからしょうがないじゃないか……。
そう思ったんだけど、相手がそれに納得してくれるはずなんかない!
そう思った俺は――。
「すみません、今回拾ったアイテムは全部おいて行きますレアも出てますが、清算は皆さんでしてくださいっと」
そうチャットを打ち込むと俺はそそくさとトレードをし、アイテムを渡しておく。
一応これで持ち逃げされたとか言われたことある奴いるらしいしSSは撮っておくか……。
全部のアイテムを渡し終えた後、ログアウトし俺は椅子にもたれかかり伸びをした――。
「あーつまんねぇ……」
その際に少しばかり余計に後ろへと体重をかけてしまい。
「うわぁぁ!?」
俺はそのまま椅子ごと倒れ込む――。
「痛っ~~~!! ついてねぇ……」
そんな事を言った後だ……。
不安定に積み上げていた本たちはぐらぐらと揺れ始め――。
「へ?」
それは崩れると俺目掛け倒れて来る。
「……」
後で直さないといけないな……この時の俺はそんな事を考えていた。
「キューラ! キューラ!!」
「んぅ?」
15年間目にしてまだ違和感の残る新しい名前を呼ばれ俺は目を覚ます。
どうやら同室の少年ターグに起こされたみたいだ。
にしても懐かしい夢だった……あの後俺は打ち所が悪かったのか死んでしまった様でこの世界へと転生をした。
因みに神様に出会っての下りは無く、何故か記憶が受け継がれてはいる。
その為か妙な違和感が抜けないんだよな……。
「キューラ! 起きろって!!」
「んだよ……ターグ……今日は学校午後からだろ?」
「いや、そうだけど自主練だよ自主練! 手伝ってくれよー」
「無理」
彼の願いに俺は即答で答える。
「なんでだよ!?」
いや、なんでって……そりゃお前……。
「あのな、自主練って剣術だろ? 俺の得意分野は古代魔法、剣は確かに扱えるが得意って訳じゃない、お前とはレベルが違うんだよレベルが!」
「レ、レベル? お前って時々変な言葉使うよな」
ぐぅ……通じないか……。
「つまり、剣に関してはお前が上、練習とはいえ格下相手にしてたら意味ないだろうがって言いたいんだよ……」
面倒だが俺はベッドから身を起こしターグへとそう告げる。
すると彼は不満そうな顔を浮かべ――。
「だったら俺だって同じ事言うよ、キューラの古代魔法相手じゃ先輩だって格下に見えるんだけどな」
「それは……お前……」
「短縮魔法だったか? この前習ったっていう中級すら詠唱すっ飛ばせるんだろ?」
そう、確かに俺は詠唱無しで魔法が使える。
だが、それとこれと関係ないと思うが……先に学んでる分先輩達は俺よりも魔力が多く、強い魔法を操れるんだ。
それに勝つとなるとそれなりの工夫が必要になってくる。
決して格下相手なんかではない。
更に言えば俺の場合は先輩二人と先生しかいないと言う少数学科だ。
練習相手も絞られて当然だろ……。
って、そう言えばなんで古代魔法学科は人気ないんだっけ? 混血か魔族しか使えないからか?
でも神聖魔法科の生徒は多いよな? 人間か混血じゃないと入れないのに。
「そんなずるい力持ってて、俺の方が上だから付き合わないなんて……男じゃないぞキューラちゃん」
「テ、テメェ……ちゃん付けは止めろって言ったよな!?」
ようやくベッドから降りた俺はターグに詰め寄る。
ちゃん付けだけは許せない、許せないんだ……。
「いやぁだってさ、お前――」
「い、言うなぁぁぁぁ!!」
「見た目女の子じゃん」
そう、俺はこの異世界リセッティアに転生する際、前世の記憶を持ちつつ何故か男の娘に生まれ変わってしまった様だ……。