第六十一話 卵事件
ブリナキア立ちが階段を下りていった先にあったのは大きな食堂だった。
「ここが食堂です。」
そうソフィーが言った。
「こんな広い部屋があったんですね。」
「ウルナさん、ここは受付をする部屋でもあるんですよ。」
「それでこんなに広い部屋なんですか、これだけ広いなら他にも何かできそうですね。」
「たまにダンスパーティーとかもしてますよ、もし時間があれば来てください。」
「それはいつやるんですか。」
「二週間に一度程度ですね。」
「三日前にしたばかりだからお前たちも参加したいなら待っていないといけないな。」
「そうですか、それは残念だな、俺もソフィーさんと踊りたかった…」
「アランさんにそう言っていただけると嬉しいですね。」
「ソフィーさん、無理をしなくてもいいんだよ。」
「そ、そんな、無理なんてしてませんよ、アランさん達の席はあちらです。」
そう言ってソフィーさんが中央の席を指さした。
「あの席は流石に目立ちすぎじゃ…」
「王の選挙に参加する人はみんなあの席付近ですよ、差をつけるなら今のうちですよ。」
「そうですね、差を付けたいなら今のうちですね。」
そう言ってウルナが席のほうへと歩いていく。
何でソフィーさんは王の選挙参加のことを知ってるんだ、そう簡単にウルナが教えないと思うし…
「なあ、どうしてソフィーさんは王の選挙に参加することを知ってるんだ。」
「どうやらポケットに王の選挙についての紙を入れていたのが見えたみたいで…」
「しっかりしてくれよ、敵はたくさんいるんだから。」
「アラン、実はそうでもないんですよ昨日会ったエリックという人がほかの人から石を奪い参加できないようにしてるみたいなので。」
「そうか、それならいいんだが…いや、ちょっと待ってくれ。」
そう言ってアランは少しの間黙りこみこういった。
「理解したぞ、それって俺たちも狙われるよな。」
「まあ狙われることがないとも言えませんね。」
「あ、パトリック、あの人じゃん‼」
そう言ってアドリアがウルナを指さす。
「アドリア様、人のことを指さすのはあまりよろしくないかと…」
「パトリックお前も王の選挙に参加するのか。」
「アランさん、僕は参加しませんよ、こちらの方が参加を、私はこの方を守る役目があるので一緒にいるだけです、この近くの席ということは選挙に参加を。」
「ああ、こいつがな。」
アランがそう言ってブリナキアを指さす。
「そうですか、まあ頑張ってください。」
「パトリックさん達も頑張ってくださいね。」
「そうですね、でも頑張るのは僕ではなくアドリア様ですよ。」
ブリナキア達が席に着く。
「これは卵ですね…」
「そうですね、ご飯も置いてますね。」
「おい、これって卵かけご飯を作れっていうことだろ‼」
「アランさん、少しは周りのことも考えてください。」
ビドンメにそう言われアランが辺りを見回す。
「すまない…」
「大丈夫ですよ、それより今はご飯を食べる時間ですよ。」
「ありがとうブリナキア…」
ブリナキアが卵をとる、グシャァ、卵がつぶれる。
「……」
「まあそう落ち込むなって、俺が割ってやるよ。」
そう言ってアランが卵を持ち机に卵を何度か当てブリナキアのご飯の上に持っていき卵を割る、だが殻がご飯の中に入る。
「すまない…」
「いや、大丈夫です、私がやるよりはましなので…」
続いてウルナが卵を持つ、バリッ、卵が割れる。
「おいおい、ウルナもか…もう俺の卵はないぞ。」
ソフィーさんが何をやってるのか見に来る。
「こ、これはひどい…一体何を…」
「ソフィーさん、私は卵を握りつぶそうとか思って力を加えたわけじゃないんですよ。」
「そ、そうですよね、卵を持ってくるので待っていてください。」
そう言ってソフィーが奥の部屋へと走っていった。




