第五十八話 逃げ
ブリナキアがエリックを引きずり剣を渡り終わった。
「はっ、僕は一体何を…ああ、またあなたにやられたんですか…」
落ち込んだ様子のエリックは立ち上がりウルナの剣を走ってわたり部屋の窓を開けて外へと飛び降りた、急いでブリナキアが戻って下を覗き込むがそこにエリックの姿はなかった。
「そう言えば下の階の人は大丈夫なんですか。」
「ウルナさん、本来寝る部屋は隣の部屋です、ですから誰も怪我はしていないでしょう。」
「そうですか、それでこの穴を直すのはどうしたらいいんですか。」
「それは僕がやったから僕がお金を払わないと…」
「私たちにも手伝わせて下さい、きっとサモルナ様ならそうする、だよね、ブリナキア。」
「────」
ブリナキアの返事はない、ウルナがブリナキアを見る。
「寝てる…」
ブリナキアが体勢を崩して落ちそうになる、ウルナが剣の上を走って穴の向こう型へ渡りブリナキアを落ちないように引っ張る。
「それじゃあ私はブリナキアを寝かせてきます。」
「どうしてウルナさんはそこまでするんですか。」
「何が。」
「ブリナキアさんに対してです。」
「特にこれといって理由はありません、私がそうしたいからです。」
「そうですか、ブリナキアさんはいい友達を持ちましたね。」
ウルナが剣を渡りドアを開ける、そこにはすでに布団が敷かれていた、ウルナがブリナキアを布団に入れて再びパトリックたちのもとへ戻る。
「ウルナさん、やっぱり僕がどうにかしてここの修理費用を出します、その、王の選挙に参加するものに仕えるものとして他の参加者に使える人に助けてもらうなんてできません。」
「どうして王の選挙に参加するってわかったの。」
「その、ポケットから紙が出ていて王を選ぶ選挙の参加書と書かれているのが見えていたので…」
「そう、でも私たちは誰かの役に立てればそれでいいの。」
「分かりました、そこまで言うのなら討伐手配が出てる魔物でも出てない魔物でもいいです、それを試練の塔に行くときに倒してきてお金を集めてください、これが討伐手配の出てる魔物のリストです。」
そう言ってパトリックがウルナに一枚の紙を渡す。
「分かった、それじゃあ捕獲手配の出てる魔物、それだけを連れてくるわ。」
「な、何を言ってるんですか、捕獲手配は討伐手配と比べてもらえるお金が少ないんですよ‼」
「確かにそうかもしれない、だけど捕獲手配って言うのは誰かが飼っている魔物、つまり人助けにもなってお金にもなる、何より戦わなくていいということがほとんど。」
「分かりました、僕も頼んでるわけだから口出しできません、それじゃあ捕獲用のネットを明日渡します、だから頼みましたよ。」
「分かったわ、確かに頼まれた‼」




