第五十六話 死体
ヨズルはアズモジアに瞬間移動した。
「不安要素の近くにヘルがいるということはその不安要素を守ってるということか、めんどくさい仕事だ、まずはヘルがどこにいるのかを聞いたほうがいいか、魔族で一番話しやすいのは悪魔か。」
ヨズルは辺りを見回す。
骸骨、動く死体、サキュバス、くそっ、思ったより悪魔が少ない、仕方ない、ここはまだましなサキュバスで行こう。
ヨズルは歩いてサキュバスのいるほうに近づいていった。
「よっ、飛んで来ようとしたら吸血鬼につかまって遅れた…」
「そんなに待って無いよー。」
「そうか、良かった、じゃあ行こうか。」
サキュバスとあとから来た悪魔はどこかに飛んでいってしまった。
「今来たのって悪魔じゃ…やらかした…」
「どうかしましたか。」
「えっ、いや、何も。」
「そうですか、悪魔を探しているようだったので私でよければと思ったのですが…」
「えっ、ああ、じゃあ、ヘル様の居場所を知らない。」
「ヘル様でしたらこの前聖域にウロボロスを追って行きましたよ。」
「そうか、ありがとう。」
なるほどな、それでウロボロスがあんなに傷だらけだったのか、出かけたって聞いたからウロボロスを出現させたのに、まあ先に聖域に移動したほうがいいか。
ヨズルは聖域に瞬間移動した。
「血まみれで誰か倒れてるんだけど…それに辺りは血だらけ、一体だれが…」
そう言ってヨズルは倒れてる人に近づいていく。
「誰かいるのか。」
「まずい、気づかれたか…」
ヨズルは物陰に身をひそめる。
せめてどんな奴かだけでも見よう。
家から誰かが出てきた、ベルゼブブだ。
「何だ、気のせいか。」
「どうしたの。」
「いや、気のせいだった。」
「そう。」
ベルゼブブが家の中に入っていった。
話してた相手はヘルか、だが出てきたのはベルゼブブだ、不安要素はいったい誰なんだ、先に血まみれで倒れてる人を見たほうがいいか、だが倒れてるのは家の前、気づかれたら終わりだ、いや、気づかれたとしても行ける。
ヨズルは血まみれで倒れている人のほうへとゆっくり歩いていく。
「う、嘘だろ、こいつは最近見ないと言ってたグラバーサじゃないか、まさかヘルに殺されたのか…」
ヨズルはグラバーサを触る。
「死んでる…すまない、もっと早く俺が来ていればこうはなっていなかったのかもしれない…」
そう言った後ヨズルがグラバーサの死体を抱える。
「魔女様のもとへ帰ろう。」
その時家の扉が開いた。
「お前、何をしている‼」
「くそっ、俺は今戦うつもりはない‼」
「ヘル、この人剣を持ってるよ。」
「話を聞いてくれ。」
「行くならさっさと行け、今なら見なかったことにしてやる。」
ヨズルはヘルにそう言われてグラバーサを抱えて洞窟に瞬間移動した。
「ヨズル、早かったな…」
ゴビビがヨズルの手を見る。
「お前、まさか…」
「いや、俺じゃない、恐らくヘルだ、あいつがこいつを、グラバーサを…」
「で、不安要素であるあいつはどうだった、いたのか。」
「ああ、いたよ、小さい子供がな。」
「そうか、目標を見つけたが逃げかえってきたということでいいんだな。」
「何でそうなる。」
「だがお前は何もせずにグラバーサを抱えて帰ってきた、それなりの罰を受けるだろうな。」
「何で…何でだよ…こいつが倒れてたのを連れて帰ってきちゃ駄目だっていうのか‼」
「問題はそれではない、目標を見つけたのに戦いもせずに帰ってきたということだ。」
そう言ってゴビビはどこかに行った。




