第三十八話 治療
イエルは生きていた、だがかなり傷が深いみたいだ、自分の治癒魔法で今は何とかなっている、だがそれもマナが切れれば終わりだ、私は一体どうしたらいい、この体を突き抜けているものをどうにかするのか、これが魔法ならできないことはない、だが魔法じゃないならどうしようもない、いやまだだ、まだこれが魔法かどうかは判断できていない、私は戦っているところを見ていない、私よりイエルのほうが重傷だ、だったら私がどうにかしないといけない、これが魔法であってくれ、私はそう思いながらイエルの体を突き抜けている土に手をかざした。
「ディスペル‼」
土が崩れイエルが落ちてくる、あとは傷口をふさぐだけか。
「イエル、マナは残っているか。」
「いえ…残って…そうに…ないです…」
「くそっ、まだ足りないというのか。」
いや、こんな時のためにマナフルーツを調理室に置いていたはずだ、私はそう思いだしたので調理室へと一直線で行けるように屋敷に穴をあけた、とりあえず持てるだけ持って戻ってこようか、それにしても魔女の指先が屋敷に来るとはここも安全とは言えなくなったか、まあ早くとりに行ったほうがいいか、私はそう考え調理室へと向かった。
さてと、マナフルーツは籠に入れて机の上に載ってたのを全部持ったしイエルのもとへと帰るか、まだそんなに時間はたっていないか、カンザキさんとウルナ、そしてアラン、何もなければいいがな、あとでマジックアイテムで連絡してみるか。
「イエル、大丈夫か。」
「は…い…大丈夫で…す…」
いや、大丈夫じゃないか、まあ小さくて柔らかいことでも有名だししんどくてもマナフルールぐらいは食べれるだろう、まあ食べ過ぎると太るんだけどな、私はマナフルーツの入った籠を床に置きマナフルーツを一つ取りイエルの口の中に入れた。
「噛んで。」
「これ…は…」
「マナフルーツだよ、まだいるかな。」
「いえ、もう大丈夫です。」
あれ、一個でマナが結構回復したみたいだ、マナフルーツ一つ食べてどのぐらいマナが回復できるかって言うのは人それぞれみたいだけどね、まあ傷もふさがってるし大丈夫だろう。
「ウォケスト様、私の傷は癒えましたがウォケスト様の傷は…」
確かにけられたり魔法を当てられたりで大けがだ、どうしようか。
「私もマナが回復したので治すこともできますがどうしますか。」
「それなら治してもらおうかな。」
「ウォケスト様をここまで追い込むとは魔女の指先もなかなかやりますね。」
追い込むというかほぼ一方的にやられてたけど、まあ現状どうあがいても勝てない相手と言うことはわかった、まあ魔女を封印したヘルさんやそれにかかわった剣聖、その人たちがまたどうにかしてくれるとも限らないか、だけど何でここにやつらは来たんだ、そう言えばサモルナ様が殺されているとか言っていたな、そういうことか、時間稼ぎと言うわけだな、傷が治ったとしても体の奥のほうの傷は消えない、時間稼ぎと言うわけか、だけど簡単にやられはしないだろう、そうだ、カンザキさん達にマジックアイテムで連絡しておこう、確か私の部屋に置いていたはず、私の部屋は…マナフルーツを調理室に取りに行くときに一緒に消えてる、いや、まだマジックアイテムがなくなったとは限らない、見に行こう、私は自分が壁にあけた穴から自分の部屋へと入った。
さてと、マジックアイテムが置いてあるのは机の上だったよな…私は机を探す、いや、そもそも床を思いっきり突き抜けてるし机がない、いや、よく思い出せ、本当に自分の机の上に置いてあったか、そもそもめったに使わないから机に置いてたんだった、くそ、連絡する手段はない、おとなしく屋敷でカンザキさん達の帰りを待つか、傷は治ったけど歩いたりするので精いっぱいだ、サモルナ様、どうかお逃げください、私にはそう願うことしかできない。




