第十七話 アランの友達
「ーーーー」
何だ、誰かの声がする。
「ーーーー」
何を言ってるんだ、わからない。
「アラーー」
アラ、アラって何だ、体が動かない、どうしたんだろう。
「アラン、起きて。」
アラン、いまアランって言ったな、アランは俺の名前だ、呼ばれてる、だが何も見えない、ここは一体どこなんだ、それになぜ体は動かないんだ。
話は少し戻りおよそ三分前。
「黒色の霧が出てきたな。」
「ああ、そうだな。」
くそっ、ウロボロスが出たっていうのか、ドシュ。
「紫色の霧だ、毒が混じってるよけろ‼」
ドサッ、くそっ、残ったのは俺とこいつと後ろにいる奴らだけか…しかたないな。
「帰るぞ、被害が大きすぎる。」
俺はそう言った…だけど。
「あきらめて帰るなんてできない、ここでこいつを止めないとたくさんの人が死ぬ‼俺たちだけでもやる‼」
そう言って後ろにいたやつらは暗闇の中ウロボロスに向かって飛び込んでいった。
「アラン、もう見てられない、無理やりにでも連れて帰ろう。」
「おう、連れて帰ろう。」
そう言って俺は友達でもありよきライバルでもあったマルドネス・サルバーンと共に黒色の霧のさらに奥へと入っていった。
「アラン、起きてくれ、アラン。」
ああ、そうか、呼んでくれてるのはお前だったのかマルドネス、最前線で飛び込んでいくはずが帰ろうと後ろのやつらに言った俺を呼んでくれているのは。
「アラン、頼む、起きてくれ。」
マルドネス、俺はもうだめだ、体が動かないんだ、だから他のやつらを…
「アラン、お前は僕に何があってもくじけるなって言ったよな、お前がこんなところで死んでどうするんだよ‼一緒にクラーケンを倒しに行こうよ。」
そうだ、そうだな、友がこんなに呼んでくれてる、それなのに俺は一人であきらめようとしていた、あきらめちゃだめだよな、こんなところで死んでられるか、絶対に起きてやる、そう気合を入れて動かない体を無理やり動かそうとした、だが動かない、くそっ、こんなところで死ねないんだよ、マルドネスが待っていてくれてる、死ねないんだよ、ガバッ、起きれた、起きれたぞ。
「アラン、良かった、飛び込んでいった人たちは少ししか助けられなかった、だけど生きててくれてよかった。」
「俺なんかを助けるために…俺なんかを助けるために他のやつらを…お前はほかのやつらを見捨てたっていうのか‼」
「違う‼僕は見捨ててなんかいない…見捨ててなんかないよ‼人の苦労も知らないで…」
そう言ってマルドネスは部屋から出ていった。
それから約三週間後、俺の怪我は治り体も動くようになってきたころ、私がリハビリに行った後病室に戻ると。
「アランさん、クラーケン討伐部隊が海へ出てそのあとすぐにクラーケンに襲われ全滅したそうです…」
クラーケン討伐部隊、本来俺も参加するはずだった、だけどウロボロスと戦うときの怪我で参加できなかった、待てよ、マルドネス、あいつも討伐部隊に参加してなかったか。
「おい、マルドネス、マルドネスはどうなってる‼」
「マルドネスさんは…マルドネスさんもクラーケンに殺されました…」
「くそが…」
「え。」
「くそがって言ったんだよ‼マルドネスが何をした…あいつが何か悪いことをしたのか…あいつが死ななければいけないようなことをしたっていうのか‼」
ふざけるな、仲直りもできないままいなくなるなんて、せめて仲直りぐらいさせてくれよ、何で、何でいなくなるんだよ。
「殺す…殺してやる…俺が殺してやる‼クラーケンなんて俺が殺してやる‼」
「無理です、無理ですよ、あれだけの精鋭部隊を殺せるんです、一人で行って勝てるわけがないじゃないですか‼」
「今はな…今は無理かもしれない、だけど必ず俺が殺す、俺がやらないといけないんだ、親友を殺した相手だぞ‼俺はあいつにもう親友と思われていなかったかもしれない、だけどな、俺はあいつに何と言われようとあいつは俺の一番の親友だ、だからクラーケンは俺が殺す‼必ずだ‼国のためとかじゃなくてあいつのために俺はクラーケンを殺す‼」
それから俺はクラーケンを殺すことだけを考えていた。
ガッシャーン、船が大きく揺れる。
「カンザキ、出てみよう。」
「そうね。」
私はクロードと一緒に外へ出た。
「カンザキ‼クラーケンだ、頼む殺してくれ、友を殺したあいつを殺してくれ。」
「アラン、それなら私は手伝いません、友達の仇なんですよね、だったら自分の手で殺さないとだめじゃないですか‼」
「カンザキ…そうだな、ありがとうカンザキ、そうだよな、俺があいつを殺す‼」
そう言ってアランは剣を抜き海の中へと飛び込んでいった。
「アラン大丈夫かな。」
「私はアランを信じるよ、きっと倒してきてくれるって。」
「僕にはわからないよ、あの人があれを倒せるとは思えない。」
「そうだね、だけどあの人はできると思うよ。」
私はそうクロードに言った。
「ヨウ、アランは。」
「クラーケンを殺すために海の中に入っていった。」
「ようクラーケン、初めましてだな‼」
俺はそうクラーケンに言った、ドシュッ、触手が横に来る。
「わざわざ斬られに来てくれてありがとよっ‼」
俺はそう言って触手に向かって剣を振る、赤色のものが出る、クラーケンの血だ。
『グガァァァァァァ‼』
「迫力あるな、だがこれはどうだ‼」
俺はそう言うと横にある触手を蹴り飛んだ、さあこれで終わらせよう、カンザキに勇気をもらった、あいつならきっと簡単に倒すんだろうな、だけど自分でやれと、なら見ててくれよ、俺の渾身の一撃を。
「アルガータストライク‼」
この技ですべての触手を切り落としてやる、そのあと大きい頭を真っ二つに割ってやる、そして俺は再び海の中へ入っていった。
「これがお前を殺すために俺が編み出した技だ、存分に味わえ‼」
そして俺はさらに潜っていった。
「この辺りから見るとお前ってただでかいだけのイカだな、俺はお前がマルドネスを殺してからイカが嫌いになったぞ‼」
そう言って俺は剣を振る準備をした。
『グガァァァァァァ‼』
触手がこっちに向かってくる、思った通りだ。
「斬られに来てくれてありがとう。」
そう言って俺は剣を振った。
『グガァァァァァァ‼』
「永久に眠れ怪物…」
そう言って俺はクラーケンの頭に向かって思いっきり剣を振った。
『グガァァァァァァ‼』
ドサッ、砂埃がまう、俺は上へと上がっていった。
「カンザキありがとう、お前のおかげでクラーケンを倒せた。」
「私は何も手伝ってませんよ、これが出来たのは全てアランが友達の仇を取りたかったからです。」
「本当にありがとう。」
俺はそう言って船へ乗った。




