第四話 裏切り
僕たちが乗っている魔車が突然止まる。僕はもう着いたのかと思いカーテンを開けて窓から外を見る、するとそこには大きな屋敷が立っている、ウォケストさんの屋敷だ、その色はきれいな白色をしている。明け方に着くと思っていた、しかし少しだけ早く着いたみたいで月は沈みかけてはいるがまだまだ上の方だ。僕はアランさんのほうにある窓のカーテンを開ける、するとアランさんはそこから外を見ている、そして驚いている。
「ウォケストさんの屋敷じゃないか…お前は何か用があったのか。」
アランさんは僕にそう問いかける、しかし残念ながら僕はここに用事はない、ただアランさんを送ってきただけだ。
「いえ、僕には用事も何もありません。さあ、降りてください。」
僕はそう言いながらアランさんの手を握りアランさんを席から立たせる、そして僕はアランさんから手を離し魔車のドアを開ける。するとアランさんは僕のほうを見てにこりと笑った後お辞儀をして魔車から降りる。僕がアランさんの座っていた席を見るとそこには僕がアランさんに貸した剣が置かれている。僕はアランさんが門を開けてウォケストさんの屋敷へと入り門を閉めるのを見た後に席に座る。すると魔車は王都へと向けて動き出す。
俺はヴィクトールに知らない間に魔車へと乗せられていた、そして外を見ようとすると突然カーテンを閉められた、その前に俺がどこに向かっているのかを聞いた時には「外を見たらわかるんじゃないですか。」と言ってどこへ向かっているのかは教えてくれなかった。しかしそれも今こうして考えてみると今いるこのウォケストさんの屋敷に向かっていることがばれたくなかったがための行動だということがわかる。
俺は魔車を下りてウォケストさんの屋敷へと入るために鉄でできた門を開ける。そして屋敷の敷地の中へと入ってから門を閉める、するとまだ魔車は屋敷の門の前に止められている、そして窓からヴィクトールがのぞいているのが見える。俺は少しの間手を振ったが手を振るとすぐに魔車が動き出したからヴィクトールは俺が手を振っていたことを知らないだろう。俺はそのまま後ろを向いて屋敷のドアを叩く、しかし誰も出てこない。俺はため息をついた後にポケットに入っているカギを取り出してドアを開ける。するとそこにはティアンの靴が置いてある、どうやら本当に先にここについていたみたいだ。
俺は開けたドアからウォケストさんの屋敷の中へと入り靴を脱ぐ、そして靴をそろえておく。本来であればだれかがここに来て案内してくれるのだがみんな寝ているのか誰も出てこない。俺はウォケストさんから前にもらった部屋へと行くために前にある階段へと歩いていく。確か俺が前に来た時はブリナキアがもらった部屋でみんなで過ごしていた、あんな感じでみんなが同じ部屋で寝るのも悪くない、俺はそう思いながら階段を上っていく、そして俺は三階に着くとそこで左へと曲がる。そして俺は五個目のドアを開ける、するとティアンがベットの上で座っているのが見える。俺は開けるドアを間違えてはいないはずだ、俺は心配になりこの部屋が自分の部屋なのかを辺りを見回して確認する。しかしここは確かに俺の部屋だ。俺は自分の部屋だとわかったので部屋の中へと入っていく、するとティアンが突然俺のほうへと走ってくる、そして俺に抱き着く。
「良かった、何かあったのかと思った。」
ティアンはそう言った後俺から離れる、そして驚いた顔をしている。
「どうしてそんなにボロボロなの。」
俺はティアンにそう言われてやっと思い出した、そう、俺はゴビビとお城で戦いそこでゴビビの攻撃を受けた、そしてその時に俺が倒れゴビビが俺のほうへととどめを刺そうと寄ってきたのを俺が殴って倒した、しかしその後俺はマナを大量に消費したのと疲れたのとで倒れる。そう、その時に服がぼろぼろになったのだ、しかしティアンにそのことをそのまま伝えるわけにはいかない、恐らく心配をさせてしまうだろう。俺は嘘をつくことにした。
「来る途中にかなり大きい魔物に襲われてしまってな。」
俺はそうティアンに言った、しかしティアンは心配そうに俺の顔を見つめる。魔車から落ちたと言ってもよかったが今屋敷の前に魔車は止まっていない、それを見られたら誰かが一緒に魔車に乗っていたことがばれて恐らく嘘をついていることがばれるだろう。魔物に襲われたと言っても相手がよっぽど強くなければこうはならないがティアンは俺が試練の塔に行ったことを知らない、それにもし行ったことを知っていたとしても何階まで登ったのかは分からない、だからティアンは今の俺は前までと同じ程度の強さだと思っているだろう。ティアンはため息をつく。
「そう、前会った時と何も変わってないわね。」
ティアンはそう言うとクローゼットのほうへと歩いていき俺の着替えを取り出す。そして着替えを持って俺の前に戻ってくる。
「お風呂まだなんでしょ。」
ティアンはそう言ってクローゼットから取り出した俺の着替えを俺のほうへと差し出す。
「ああ、まだだ。」
俺はそう言ってティアンから着替えを受け取る。
「お風呂にはつかれないけど体は洗えるからね。」
「わかった。」
俺はそうティアンに返事をした後右へと曲がり階段を下りる、そしてお風呂場へと行き明かりをつけた後服を脱ぐ。暗いままでもいいが何かが落ちていてそれを踏んだりして壊したときに怒られると面倒だから付けておいた方がいいだろう、というのも俺は前に暗い廊下を明かりを持たずに歩いているときに床に落ちているものを踏んでしまった、それも紙などであればよかったものの落ちていたのは手鏡だった、鏡が割れて俺は足を汚してさらにその鏡と全く同じものを買わされるということが前にあったのだ。俺は服をすべて脱いで裸になった後ドアを開けお風呂場へ入る、相変わらず中にはとても広い浴槽がある、しかしその中にお湯も入っていなければ水が入っていることもない、そう、何も入っていないのである。
俺は体を洗う場所へと歩いていき蛇口をひねる、するとお湯はちゃんと出てくる、つまり水を止めているわけではないのだ。俺は洗面器にお湯をためてそのお湯を体に流し簡単に汚れと血を流す、その後再び洗面器へとお湯をためる、そして俺はその間に右側に置いてある石鹸を取り泡立てる、そしてちょうどお湯が溜まっているので蛇口をひねりお湯が出てこないようにする。そして石鹸をもとにあった場所へ置き泡で体を丁寧に洗う、ゴビビと戦った時に着いた傷に石鹸がしみてかなり痛い、俺は洗面器を両手で持ち体にかけて泡を流す。そして再び洗面器にお湯をためる、そしてさっき取った石鹸の横にある石鹸を持つ。この石鹸は顔を洗うためだけに作られた石鹸だ、体を洗う石鹸と比べると少しだけ色が薄い、後はにおいが違う程度しか違いがない。俺は石鹸を泡立てて石鹸を元あった場所において蛇口をしっかりとひねりお湯が出ないようにした後顔に泡を付けて丁寧に顔を洗う、そして洗面器にためたお湯で顔についている泡を洗い流す、その後に洗面器に残っているお湯をすべて捨てる、そして蛇口の下に洗面器を置く、そしてまた蛇口をひねりお湯を出す、そしてその間に左側にある石鹸を溶かした水の入った入れ物から少しだけ石鹸を溶かした水を手の上に出す、そしてその水を泡立てた後蛇口をひねりお湯を止める。そして俺は泡立てた水を髪の毛に付けて洗う、そして俺は髪の毛が泡だらけになり目を開けるのが痛くなってきたところで洗面器を持ってその中の水を頭にかけ水を落とす、そして俺は髪の毛を触る、しかしまだ泡を触ったような感触がある、俺は蛇口をひねり洗面器にお湯をため蛇口をひねりお湯を止め頭にかける、入れが下を向くと泡とお湯が流れていってるのが見える。俺は再び髪の毛を触る、しかし今度は泡の触感がない。俺は立ち上がりお風呂場から出ていく。
俺はティアンに渡されたタオルと着替えを置いている棚のほうへと歩いていく、さっきと比べると明かりが少し暗くなっているように感じる、というのもこの屋敷の明かりは全て火のマナで賄われている、だからどこかの部屋が明かりをつけたりするとその近くの部屋の明かりが少しだけ暗くなるということが発生する、しかしティアンの話では屋敷にいる人は誰も出てこなかったと言っていた、俺が入った時も誰も出てこなかった。それに俺はこの屋敷で長い間生活をしていたことがあるがここの屋敷の人は一度寝ると朝まで何があっても起きないのだ、そのせいで一度火事になりかけた時は屋敷にいる全員を転移魔法を使って屋敷の外へ出したことがある、でも出火の原因は森で誰かが焚火をしていてその火が燃え移ったことだということを知らなかった俺は森の近くへ転移させてしまった、その時は俺も一緒に転移魔法で移動していたからすぐに別の場所へと移動することが出来た。今この屋敷の周りに森があるのはウォケストさんが魔法で木の苗を急成長させたからだ、本来なら屋敷の周りの森はあの時消えてなくなっている。
俺は棚に置いているタオルを両手で取りそのタオルで体を拭く、するとまた明かりが少し暗くなる。しかしここの部屋の近くで明かりを使うところと言えば廊下ぐらいだ、だがこんな夜遅くにわざわざ部屋の外に出るような人はいない。俺はおかしく思い体を素早く拭いてティアンに渡された服を着る。俺は棚に置いている自分の剣を腰に取り付けてゆっくりと扉を開けて廊下へと出ていく。
廊下は俺が風呂へ入る前と比べると少しだけ暗い、俺は警戒しながらゆっくりと階段のほうへと向かって廊下を歩いていく、すると上から足音のような音が聞こえてくる、俺は階段の横にある柱の裏側へと移動して剣を抜く。するとお城の中で出会った者たちと同じ服を着た人が二人降りてくる、そしてその二人は別々の方向へと曲がる。俺は自分の方へと歩いてきている一人を先に片付けることに決めた。俺は魔女教徒が俺の横を通り過ぎるのを見た後に柱の陰から飛び出し足払いをして魔女教徒にしりもちをつかせる、そして魔女教徒の前に歩いていきのど元に剣を突き立てる。
するとその魔女教徒は地面に右手をついて立ち上がりアランから剣を奪い取る。
「残念だったな。」
そう魔女教徒が言うと突然俺を取り囲むように魔女教徒が現れる。
突然魔女教徒達が人一人が通れるほどの隙間を開ける、するとそこから一人の男があらん方へと歩いていく。そしてその男はウルナが持っている手紙を書くものと同じほどの大きさをしたものを取り出しアランのほうへと向ける、そこには縄で縛られているティアンの姿が映っている。
「こいつを殺されたくなかったら俺たちについて来い。」
そう男が言うとアランはその男を睨みつける。
「…でん…」
「は?」
男がそう言うとアランは男の着ている服の襟を掴む。
「関係ない人間を巻き込んでんじゃねーよ‼」
アランがそう言って男を殴ろうとすると突然鎖が現れアランの腕を空中に縛り付ける。
「なっ…」
アランがそう言うと男は襟を掴んでいるアランの腕を叩く、するとアランは襟を掴んでいる手を離す。
「残念だがお前に選択肢はない。」
「俺がお前たちについていったところでティアンを開放してくれるとは限らないだろ…」
アランがそう言うと男はアランの腹を殴る。
「だったらどうするって言うんだ?片手は縛られもう片方の腕は折れている、言ったろ?お前に選択肢はないんだよ。」
「ああ、本当に縛られていればな…」
アランがそう言うとアランの腕を縛っている鎖が突然砕け散りあたりに飛び散る、そしてアランはそのまま男の顔を殴る。
「残念だ、どうやら交渉決裂のようだな、そいつを殺せ、女の方は俺が殺す。」
男はそう言いアランに見せていたものを二つに割り魔女教徒の円から出ていく、すると魔女教徒達はアランに向かってまっすぐ走っていく。アランは向かってる魔女教徒達の中から一人の襟を握りそのままその魔女教徒を振り回す。
「あいつを殺させるわけにはいかないんだよ‼」
アランは落ちている自分の剣を拾い先に歩いていった男のほうへと歩いていく、しかし男の姿は見当たらない、先に階段を上られてしまったようだ。アランは階段を上っていく。そして当たりを見回してみても男の姿は見えない。アランはさっき男に見せられたものが自分の部屋であるとに気づいている、そして自分の部屋へと向かっていこうとしていると突然アランの行く手を阻むかのように魔女教徒がアランの前に現れる。
「そこをどけ…」
アランはそう言い手に持っている剣を振る、しかし魔女教徒達はアランが降った剣をよけアランの腕を二人がつかむ、そして一人がアランの前からアランに向かって走っていき、勢い良くアランにぶつかる。その時アランの部屋のドアが開きさっきの男が出てくる。
「遅かったじゃないですか、ここまで時間がかかるとは思いませんでしたよ。」
そう男が言うとアランは男のほうへと向かっていこうとする、だが魔女教徒に腕を掴まれているためアランは男のほうへと走っていくことが出来ない。
「そうそう、あなたに見せたいものがあるんですよ。」
男はそう言って剣を抜いてその剣をアランに見せる、その剣には血がついている。
「やりやがったな‼」
「さあどうでしょうね…」
「くそ野郎…」
「え?何ですか?よく聞こえませんでしたもう一回言ってくださいよ。」
男がそう言うとアランは無理やり魔女教徒の手を離し男のほうへと走っていき男に向かって剣を振り下ろす。
「まさか怒ってるんですか?」
男がアランに向かってそう言うがアランはその声を無視してそのまま男に向かって剣を振り続ける、しかし男はアランの剣を剣を使わず紙一重で避ける。
「まだ実力の差がわからないんですか?」
男はそう言ってアランの剣を避けながらアランのおなかを一回殴る、するとアランはお腹を押さえて床に倒れこむ。
「くそが…」
「なんて言ったんですかねぇ?よく聞こえませんよ。」
男がそう言うとアランは立ち上がり男に向かって勢い良く剣を振る、すると男の髪の毛が剣に当たり少しだけ斬れる。アランはそのまま男に向かって剣を振る。男はさっきと同じように紙一重でアランの剣を避け続けている。
「この程度じゃ何も守ることはできませんよ。」
男がそう言って剣を振るとアランはその剣を剣で受け止める。
「本当にそうか?いや、違うな…」
アランがそう言うと男は少しだけアランから距離を取る。するとアランはまっすぐ男に向かって剣を投げる。すると男はその剣を指で挟んで受け止める、するとその剣がバラバラに砕け散る。
「なっ…」
「こいつが俺が使う武器さ。」
アランはそう言って床に落ちた剣のかけらを手に取る、よく見るとそれは剣のかけらというよりもナイフに近い、いや、ナイフそのものと言ったほうがいいだろう。
「そんなもので俺に勝てるとでも?」
「俺の見込みが正しければ勝てるさ。」
「面白い…」
男がそう言い剣を振るとアランはしゃがみ込んでその剣をよけナイフを二本男に向かって投げる、すると男は右に少しだけ動きアランの投げたナイフを避ける。するとアランは床に落ちているナイフを回収しそのうち五本を男に向かって真横に投げる。すると男は飛びあがりアランの投げたナイフを避ける。
「なるほどな、しかしこの程度なら剣のまま使っているほうがよかったと思うぞ。」
「いや、俺の武器がナイフと思っている時点でおまえの負けだ。」
アランがそう言った時男の体に細い糸が巻き付いているのが見える。
「いつの間に…」
「このナイフは後ろに糸がついてるんだよ、そしてついになっているナイフがある、つまり二本のナイフに一本の糸ということさ。」
「だがこんな糸斬ってしまえばどうということはない‼」
男はそう言って糸に剣を当てる、しかし糸は斬れない。
「それが出来れば苦労しないんだよなぁ、防切性耐火性ともに抜群なんだからなぁ…」
アランはそう言って鼻をほじっている。しかし男は糸を斬ろうとして必死に手を動かしている。するとアランは男に向かって鼻くそを飛ばす。
「てめぇ…」
「いや、こうして捕まえているとこんなことをしたところでこっちに被害はないからな。」
アランはそう言って一人で頷いている。そしてアランはポケットからナイフを何本か取り出す。
「今のうちなら抜け出せるはずだったんだけどな、だって後ろに糸はないからな。」
アランはそう言うと男の後ろと前に向かってナイフを投げる、そしてナイフを二本持って男の前に立って男の左右へナイフを投げつける、そして今度は男の後ろからナイフを左右へと投げつける。
「これでもう逃げられないぞ。」
「いえ、残念ですがあなたの負けですよ。」
男がそう言って解き後ろから誰かが走ってきてアランの腹を剣で貫き素早くその剣を抜く、するとアランは口から血を吐き出しそのまま床に倒れる。そしてアランは上を向いて誰が自分に剣を刺したのかを見て驚いている。
「何でお前が…」
アランはそう言った後目を閉じる。そして後ろから走ってきた人はアランによって捕まえられている男の周りに刺さっているナイフを一本一本抜いていく。
「いや、作戦通りに行くとは思いませんでした。」
そうアランを刺した人が言うと男は手に持っている剣をサックに収める。
「それよりももう一回刺さなくていいのか。」
「私を誰だと思っているんですか?一度私の攻撃を受けたものは死ぬんですよ。」
「そうだったな、だがもし死んでいなかった場合どうなるかはわからんぞ。」
男がそう言うとアランのほうをアランを刺した人が見る。
「大丈夫です、完全にあれは死んでます、それよりも本当にバカで助かりましたよ。」
そう言ってアランを刺した人物は持っている剣で男の首を切り落とす。
「信頼している人に裏切られるというのはどういう気分なんでしょうかね…」
そう言ってアランのことを刺し男の首を切り落とした人はウォケスト邸の長い廊下を歩いていく。
次回アランと男を殺した人物が明らかに、なるのか?そしてついにぶつかり合うブリナキアとウロボロス、次回をお楽しみに‼




