第三話 魔車の向かう先は
俺がそう考えていた時ゴビビが俺のほうへと近づいてくる。俺はその姿を見て剣を握りしめた後に構え直す。そして俺がちらりとヴィクトールのほうを見る、すると大きな物体がヴィクトールのほうに近づいているのが見える、その物体は球体にたくさん尖ったものがついたような形をしている。俺はそれを見てヴィクトールの方に行こうとする、しかしゴビビが俺に近づいてきている。俺はゴビビをどうにかしてからじゃないとヴィクトールの方に行けないと思い、このままゴビビを相手にすることに決めた。そして俺の方からも近づいてきているゴビビに向かって歩いていく。
するとゴビビは突然立ち止まり両手を体の横に向かって広げる、俺から見るとちょうど大の字になっている。俺はゴビビが立ち止まっても気にせずにゴビビのほうへと歩いていく、するとゴビビが突然広げている両手を合わせて俺の方に向けて広げる。しかしそれでも俺はゴビビに向かって歩いて近づいていく、するとゴビビの広げている手にだんだん黒い色の物が集まりその集まっていってるものが徐々に大きくなっていってるのが見える。そしてその物体はだんだん球体になるように集まっている。そしてゴビビが右手を前に出すとその球体は俺の方に飛んでくる。
俺は飛んできた球体に触れなくていいように右から回り込んでゴビビのほうへと行こうとして右側に走る、するとゴビビが作り出した球体は俺の後ろをついてくるように右へと曲がってくる。そこで俺は後ろを向いて剣をその球体に向かって突き立てる、しっかりと中心にあたっているはずなのにその球体は何も変化しない、しかも剣が当たっているにもかかわらずにそのまま進んでくる。俺が球体に突き立てた剣は少しだけ球体に飲み込まれている、俺はそれを見て球体から剣を離してまっすぐゴビビに向かって歩いていく、するとゴビビが左手を俺の方へ向ける。だが俺の後ろにはまださっきの球体が付いてきている、どうしたらこの球体を退けることが出来るかは分からない。
「アイスソード…」
ゴビビがそう言うとゴビビの左手から尖った氷が勢いよく走っていっている俺の方に伸びてくる、そして俺は何とかその氷を避けたが服がその氷に突き刺されたようで前に行くことが出来ない。そこで俺はゴビビが作り出した氷を剣で斬ることにする、そして俺が後ろを向く、するとすぐそこまで大きくなった球体が迫ってきているのが見える。そして俺は右手に持っている剣を勢いよく氷に向かって振り下ろして氷を斬る、そしてそのまま前に転がり球体を避ける。しかしその球体はまだ俺のことを追いかけてくる。そして俺が立ち上がるとさっきヴィクトールの方に落ちていっていた氷でできた物体のかけらにつまずいて転んでしまう。
その時俺の胸のあたりから赤い光が飛び出す、ノーラだ、そしてノーラは俺の周りにバリアを張る。するとゴビビの飛ばした球体はノーラの作り出したバリアに当たるとそのままバリアを上っていきバリアから離れてもそのまま上っていっている。そしてその球体はお城の壁に当たるとお城の壁を突き破り外へと飛んでいく、しかしすぐにその球体は出ていった場所から綺麗にお城の中へと入ってくる。その時なぜかノーラがバリアを解いていたせいで球体はそのまま俺に当たる。
「残念ですねぇ、この魔法を受けて立っていたものはいません。残念ですがあなたの負けですよ…」
ゴビビはそう言って自分の作り出した球体に飲み込まれたアランに背を向ける。すると球体が突然バラバラになり中からアランが出てくる、しかしすぐに倒れてしまう。それを見てゴビビは驚いている。
「なっ…自力で抜け出すなど、あり得ない‼あってはならない‼」
ゴビビがそう言ってアランへと近づいていく。
俺は球体に飲み込まれたときどうしたらいいかわからず無我夢中で剣を振った、すると俺を飲み込んでいる球体がバラバラに砕けて俺は外へと出ることが出来た、しかし全身がかなり痛い。そして突然力が抜けて俺はそのまま床へと倒れこむ。床は冷たくて気持ちがいい、だが今はそんな場合じゃない。俺がそう思っているときゴビビが俺のほうへと歩いてきているのか足音が聞こえる。
「俺は、ここで死ぬわけにはいかないんだ‼」
俺はそう言い床に左をついて立ち上がる。でも今は立っているので精一杯だ、俺のほうへと歩いてきているゴビビの姿が歪んで見えるぐらいだ。後一撃だけ、後一撃だけでいい、それだけの力があればマナをかなり使ったこいつを倒すことが出来るだろう。しかし今の俺にはやつを斬りつけるだけの力は残っていない。
しかし俺がそう考えている間にもゴビビは俺のほうへと近づいてくる。俺は残された力で右手でゴビビを殴ることに決める。しかし奴は俺が奴の攻撃から抜け出して倒れるときに俺が落とした剣を手に持っている。このままだと距離的に俺のほうが不利だ。だが俺はここで死ぬわけにはいかない、屋敷でティアンを待たせている、しかも酒場で話しかけてくれていたのに無視していたことを謝っていない。後ロスパーニ王国の王を選ぶ選挙に出るブリナキアの応援をしていない。
「ここで死ぬのだけはごめんだ‼」
俺はそう言うとちょうどゴビビが俺に向かって剣を振る、すると水の微精霊であるアクアが俺のあたりから飛び出す、そしてゴビビの持っている剣にアクアが当たるとゴビビの持っている剣が氷漬けになる。するとゴビビは舌打ちをして剣を床に投げ捨てる。俺は残っている力を全て俺の右手に込めてゴビビの腹を一発殴る。するとゴビビは思っていたよりも軽くて俺が殴るとそのまま真っすぐとお城の壁に向かって飛んでいく。そしてゴビビは壁に頭を打ち倒れる。俺ももう限界なのかふらふらとしてそのまま床に倒れこむ。
その少し前女性と戦っているヴィクトールは。
僕はアランに必ず後で助けるといった、しかしお酒を一気に飲んだせいか視界が歪んでいる。しかしそんな僕を気にせず前にいる女性は魔法を打ち込んでくる。僕に向かって紅い色の球が五つ飛んできている。僕は持っている剣を握り直して僕の肩と同じ高さまで剣をあげてそのまま真っすぐに振る。すると僕に向かって飛んできていた五つの球体は弾けて消える。
すると女性は手を合わせて目を瞑る。水でもあれば酔いを醒ますことが出来るはずだが。僕はそう考える。そして僕は一つの技を思いつく。
「アクアライン‼」
僕がそう言い左手を上にあげると僕に向かって水が大量に落ちてくる。これは別に失敗したわけじゃない、かなりの量の水が落ちてくるせいで体は結構痛い、だが歪んでいた視界がもとに戻る。その時女性の周りに大量に小さい黒い色の球体が現れる。ちょうど野球ボール程度の大きさをしている球体だ、そしてその球体は女性の周りに無尽蔵に配置されている。女性が僕のほうへと手を向けると女性から遠い場所にある球体から僕に向かって飛んでくる、僕は今持っている剣をサックへ入れる。そしてもう一本の剣を抜く。今抜いた剣は完全に僕だけのものでこの世界に一本しかない剣だ。僕はその剣を顔の前に持ってきてじっと見つめる、剣には僕の顔が映っている。僕はそのまま剣を横に向けてそのまま右から左へと振る、すると僕に向かって飛んできている大量の黒い色の球体の動きが止まる。そして空中で止まった球体は僕に向かって飛んできていたのと同じ順番で次々と爆発していく。
「な、何で、もう限界のはず‼」
「限界か、そんな物あってないようなものですよ。」
僕がそう言うと女性は後ろへと下がり僕から距離をとる。しかしどれだけ距離を取ろうと僕のこの剣術から逃げることはできない。僕は左から右へと剣を振る、すると女性に向かってかまいたちのようなものが飛んでいく。すると女性を囲うように黒い色の壁が現れその壁に当たるとかまいたちのようなものが消える。すると女性は壁に当たって倒れている男性のほうへと歩み寄っていきその男性の手を握る、そして女性が吹くから白い色の紙を出すと女性と男性の姿が消える。
女性と男性の姿が消えると僕は男性と戦っていたアランを探す。そのために顔を動かすがアランの姿が見えない、アランと戦っていた男性がやられているところを見るとアランが勝ったのは確かなはずだ、しかしアランの姿がない。アランはお城の中から出て帰ったのだろうと僕は考えてそのままお城から出ようと歩いていく。すると何歩か歩いたところで何かに足が当たり下を見るとそこには倒れているアランの姿がある、アランの着ている服はところどころ破れている、僕は倒れているアランの横に座る、そして首を触ってみる、すると脈はある。つまりアランはまだ生きている。僕はアランを背負いアランが今から向かうのであろうウォケストさんの屋敷に向かうことにする。あそこに行くのは歩いていくと魔物がいて危険だ、そして屋敷の近くの森にはなぜか魔獣が大量にいる、普通なら竜を借りていくところだがアランがこんな状態なので魔車で行くほうが安全だろう。
僕はアランを背負ったままお城から出る、そして魔車を借りれる場所に行くことにする。僕はウォケストさんの屋敷に用はないが恐らく酒場でアランと一緒に飲んでいた相手がウォケストさんの屋敷で待っているだろう。僕はアランがどうなろうと関係ないがもしティアンに僕とアランが一緒に飲んでいたことがばれもし僕がアランをお城の中に置いてそのまま自分の仕事をしていたとなると何をされるかわからない。だから僕はアランをウォケストさんの屋敷へと連れていく、恐らくウォケストさんの屋敷に着くのはちょうど日が昇るぐらいだろう。僕がそう考えて歩いているうちに魔車を借りることが出来る店の前に着く。もう深夜というだけあって出歩いている人はいない。
僕は魔車を借りるために店の扉を開ける。この店で魔車を借りると店主が魔法で別の空間に置いている魔車が店の前に置かれるというわけだ。
店の中に入ると店の中は天井に取り付けられている明かりだけだ。そのせいで夜になるとかなり暗い、そしてこの店の店主が掃除が嫌いなせいで少し動くだけで床に積もっている埃が舞う、雪みたいで綺麗だが実際は埃だ、それに部屋の天井の隅にクモの巣が張っているところも少し汚いなと感じる。部屋の奥の方では店主が椅子に座り眠っている。
僕は眠っている店主のほうにアランを背負ったまま歩いていく。すると店主は近づいていっていることに気が付いたのか目を開けて椅子から立ち上がる。そして僕の顔をじっと見つめる。
「貴方はヴィクトールさんですね、今日は何をしに来たのですか。」
「そうですね、魔車を借りに来ました。」
僕は店主のほうを向いてそう言った。すると店主は少し待っていてくれというと後ろにあるドアを開けて奥の部屋へと入っていく。僕は背負っているアランが重たいので近くに並んでいる椅子のうちの一つにアランを座らせる。
そして僕がアランを椅子に座らせた時店主がドアを開けて出てくる。その手には紙の束を持っている、恐らくすべての魔車の情報でも書いているのだろう。僕がここで魔車を借りたのは前に遠征をするときに荷物を乗せる為に一台借りただけだ。だがこの店に入ったことは何度かある、実はここの店の店主は若いころ騎士をしていた、それもこの辺りで騎士をしていたということを知らない人はいないというほど有名な話である。店主は手に持っている紙の束を自分の前にある机の上に置く、すると机の上に乗っている埃が舞い上がる。そして店主は机の上に置いた紙を一枚目くりそれを僕に見ろと指示する、僕は机に近づいていき店主が僕に言った通り僕は店主が机に置いた紙を見る。するとそこには一台の魔車の絵が描いてある、そしてその横にはその魔車の説明文がある、その説明文を見た限りこの魔車が一番早いもののようだ。
「この魔車でいいか。」
店主がそう言ったので僕は顔をあげて店主のほうをじっと見つめる。実際魔車が早ければ何でもいい、できるだけ早くアランをウォケストさんのところへ連れていきたいからだ。だから僕が店主に言うことはすでに決まっているようなものなのだ。
「はい、これでいいです。」
僕がそう言うと店主はにっこりと笑い僕の顔を見る。
「それじゃあ表に準備しておこう、あと金は要らないぞ、国のために働いてくれているからな。」
店主はそう言った後豪快に笑いドアを開けて奥の部屋に入りドアを閉める。
僕は店主が奥の部屋に入りドアを閉めた後に椅子に座らせたアランのほうへと歩いていく。しかし本当にこの店は汚い、店主がめんどくさがりということもあり全く掃除されていないからだ、さらに本棚が店の壁に置いてあるがそこに入っている本も上に埃をかぶっていてとても読めるようなものではない、読み終わった後にページをめくるとそこから埃が舞い上がるほどなのだ。僕は椅子に座らせているアランを背負い店から出ようとドアのほうに歩いていく。
僕がドアを開けるとそこにはさっき見た魔車が置いてある、僕が開けたドアから店を出ると店主が僕の肩を叩く、僕は何か用があるのかと思い後ろを向く。
「気を付けていってこい。」
店主はそう言ってにっこりと笑う、僕はそれを見て店主に笑い返す。僕はしばらく店主のほうを見て笑った後に魔車のドアを開けてアランを席に座らせ僕も魔車に乗る、そして魔車のドアを閉める。すると魔車が動き出す、僕はまだ座っていなかったので急いでアランの向かいの席に座る、そして窓から外を見ると店主が僕のほうを向いて手を振っている、僕はその姿を見て手を振り返す。僕は店主の姿が見えなくなるまで手を振っていた、それは店主がずっと手を振り続けていたからだ。
そして魔車がそのまま進んでいくと王都から出る門の前に着く、すると門兵が魔車を取を止める。
「何処へ行くんですか。」
門兵はそう僕の乗っている魔車のドアを開けて聞く。
「ウォケストさんの屋敷に行こうと思って。」
僕がそう門兵のほうを見て答えると門兵は手に持っている紙に何かを書いている、恐らく何人王都から出ていくか、そしてどこへ行くかということを書いているのだろう。そして門兵は何かを書く手を止めもう一人の門兵のほうへと歩いていく。
「今門を開けるので少し待っていてください。」
門兵は再び僕たちのほうへと戻ってきてそう言った後魔車のドアを閉める、そして門のほうへと歩いていきもう一人の門兵と一緒に門を開ける。そして門が完全に開くと魔車は再び進みだす、もうかなり暗い、外にいる魔物たちも岩の前や草の近くで眠っている、夜になると魔物はおとなしくなる種類が多い、しかし凶暴な種類の魔物たちは夜になると暴れだしたりする、現に今一体の大きめの魔物が僕とアランの乗っている魔車へと向かって突進してきている。しかし魔車のほうが少しだけ早いのかその魔物と少しずつ距離が開いている、だが手に持っている大きな木を切りだしたようなものをこっちに投げられて魔車を傷つけられたりしたら後でめんどくさいので僕は魔物を追い払うことにした。
僕は魔車の中で立ち上がり余分な剣を腰から外す。そして僕は剣をサックに入れたまま席の上に置き魔車のドアを開けて魔車の屋根の上に乗り下を向いて左手でドアを閉める。そして立ち上がって後ろを向いてみるとまだ魔物は魔車を追ってきている。僕は右手で腰に付けた剣を抜き構える。相手はいくら魔物とは言え傷つけることは国の許可が下りていない限りできるだけ避けたほうがいい、しかし討伐対象の魔物は話が違ってくる、しかし僕はどの魔物が討伐対象かは知らない。だからどの魔物も討伐対象でない魔物としてただ追い払うだけというのがほとんどだ、しかし誰かが襲われていたりした場合はその場で討伐対象と判断する場合もある。
僕は力を抜いて魔物の足元より少し前に向けて剣を振る、すると魔物の足元の砂が魔物のほうへと舞い上がり魔物の姿が見えなくなる。魔物はどうやら自分の前に砂が舞い上がった時に僕たちの魔車を見失ったみたいでもといたほうへと戻っていく。僕は剣をサックに入れて魔車の屋根に寝そべり魔車のドアを右手で開ける、そして僕は右手で魔車の屋根にぶら下がりそのまま魔車の中へと入る。そして魔車のドアを中から閉める、その後に僕は席に置いた剣を腰に巻いているベルトに取り付け席に座る。僕が外を見るとちょうど村が見える、ウォケストさんの屋敷に行く前にみんなが目印にしている村だ、何故ならここの村に入る道とウォケストさんの屋敷に行く道はここで別れているからだ、まあここの村に入っても屋敷に行くことはできるが少し遠回りになる、武器や道具が必要じゃないときはこの村に寄っていかないことがほとんどだ。
魔車は村に入らない道に行く。ちょうどその時アランさんが目を覚まし魔車の中を見渡す。
「今はどこに向かっているんだ。」
アランさんはそう不思議そうに僕に聞いてくる。そこで僕はいつものお返しに少しだけ意地悪をしてやることにした。
「外を見たらわかるんじゃないんですか。」
僕がそう言うとアランさんは窓から外を見ている、しかし窓の大きさ、そしてアランさんが座っている場所的にさっきの村は見えない。そしてアランさんは僕のほうを向く。
「分からないんだが…」
「そうですか、それではついてからのお楽しみですね。」
僕がそう言うとちょうど魔車が二つ目の目印に差し掛かる、僕はアランさんにどこに行くかばれたくないので急いで窓についているカーテンを閉め外が見えないようにする。
「何で閉めるんだ。」
「着く前にどこに行くかわかると面白くないと思うので。」
僕がそう言うとアランさんはため息をつく。まあ僕がアランさんの立場だった場合今のアランさんと同じようにため息をつくだろう。
次回こそはブリナキアとウロボロスを戦わせます




