第八十六話 開かない扉
アランが立ち上がりアランから地面に刺さっているネデットを抜けるのか試していくことになった、そこでアランが立ち上がり両手で地面に刺さっているネデットを持ち上にあげようとするがネデットは全く動かない。
「抜けそうにないな。」
アランがそう言った時ブリナキアがネデットの近くに歩いていく。
「私がやってみます。」
ブリナキアがそう言い地面に刺さっているネデットを両手でつかむ、そして上に引き上げて抜こうとするがやはり抜けない。
「魔女を倒さなくていいから抜けないとかですかね。」
ブリナキアがそう言うとビドンメが少しの間座り込んでこう言った。
「恐らくそんなことはないと思います、この本には選ばれた人が引き抜けると書いているので。」
そう言いビドンメは立ち上がりネデットへ近づく。
「ウルナさん、やってみてください。」
そうビドンメに言われウルナがネデットへと近づいて両手で地面に刺さったネデットを握る、そしてウルナもブリナキアやアランがしたのと同じように上にあげようとするがネデットはびくともしない。
「無理ですね、全く動きません。」
ウルナはそう言い地面に刺さっているネデットから手を放し離れていく。するとビドンメが地面に刺さっているネデットを両手で持ち上にあげようと引っ張るがびくともしない。
「動きませんね。」
ビドンメがそう言うとブリナキアがビドンメの横へと歩いていく。
「無理だと思いますがもう一回やってもいいですか。」
「はい、やっていいですよ。」
そう言ってビドンメがネデットから離れるとブリナキアがネデットへと近づいていき地面に刺さっているネデットを両手で握り上にあげようとする、すると少しずつネデットが地面から出てくる。
「えっ、これって今抜けかけの状態ですよね…」
ビドンメがそう言ってネデットをじろじろ見る。その間もブリナキアはネデットを引き抜こうと上に引っ張る、そして地面からネデットが抜ける、それを見てビドンメがこう言った。
「抜けましたね…」
「そうですね…」
ブリナキアがそう言って地面から抜けたネデットを見る。
「でも何で一回目で抜けたのに今やったら抜けたんですか。」
ウルナがそうブリナキアのほうを見て言う、するとブリナキアは少しの間目をつむって考えた後こう言った。
「実は一回目で抜けてたんです。」
「そ、それは本当ですか。」
ウルナがそうブリナキアに問いかける、誰がウルナの立場であってもそう言っただろう、一回目で抜けていたのにその後にやったウルナが抜くことができなかったんだから。
「ブリナキアさんがやった後に抜こうとしたのにネデットは動きませんでしたよ、どうなってるんですかね。」
ビドンメがそうブリナキアのほうを向いて言う。
「それはこの剣の持つ力だと思うぞ、剣聖が使う剣も本当に必要な時以外は抜けないようになっているからな。」
アランがそう言うとビドンメが呆れた顔をしてこう言った。
「そもそもあれは抜けないように作られているんですよ。」
するとアランが驚いた顔をしてこう言った。
「そ、それは本当か‼」
「はい、剣を扱う者であれば誰でも知っていると思っていました。」
それを聞いてアランは少しの間黙る。そして少し時間がたって口を開いた。
「ブリナキア、知っていたか。」
「いや、私はこの世界に来たばかりなので知りません。」
「その顔は知っているな…」
「はい、ソフィーさんにもらった本に書いていたので。」
ブリナキアがそう言うとアランはため息をついた後ウルナのほうを見る。
「わ、私は知りませんよ…」
「よし分かった、知っているな。」
「はい、私もソフィーさんからもらった本を見て知りました。」
ウルナがそう言うとアランはこの部屋に入って二回目のため息をつく。
「ビドンメ、どうやら知らないのは俺だけみたいだ。」
「まだ僕がいるよ。」
そうクロードが言うがアランはあきれている様子だ、というよりも大精霊に僕もいるよと言われたところで人間よりも長く生きているわけだからまず知らないわけがない、というより聞くだけ無駄、知っていないほうが可笑しいと言えるレベル、だからアランはあえてクロードに聞かずにいた、だがクロードにまだ僕がいるよと言われたことによって誰でも知っているということが分かっているクロードに聞かなければいけない状態が作り上げられてしまったのである、そしてアランはこの部屋に入ってから三度目のため息をついた後クロードを見てこう聞いた。
「知っているんだろ。」
「うん、残念ながらね。」
クロードにそう言われてアランはこの部屋に入って四度目のため息をつく。それはそうだ、せめてブリナキアやウルナの様にまだ知らないふりをしてくれているほうがアランからすればましなのである、しかしクロードは知らないふりをすることもなくアランに質問された後すぐに知っていると言ったのだ。
「それじゃあこの部屋から出ようか。」
アランがそう言ってこの部屋に入ってきたときの方向へと歩いていく、するとそこには扉があった、しかし入ってきた後誰も扉を閉めていないのにその扉は閉まっていた。
「何で閉まってるんだ。」
アランはそう言って扉に近づいて扉を開こうとするが扉は全く動かない。そこへブリナキア達が後からくる。
「どうですか。」
ウルナがそう聞いたがアランはすぐにこう言った。
「いや、駄目だ。」
「開ける方向が間違えてると言ったことは。」
ブリナキアがそう言うとアランは再び扉を開けようとするが扉は固く閉ざされたままだ。
「駄目みたいだな。」
「つまりここから出ることができないということですか。」
ウルナはそう言って扉の前に座り込んだ。
「魔女のにおいがします。」
ウルナがそう言う、だが魔女教徒はこの部屋に一度も現れていない、つまり扉から魔女のにおいがすることは普通はあり得ないのである。
何でここから魔女のにおいがするんだろう、あ、でも私は実際ににおいをかいだわけではないから何とも言えないな、いや、待てよ、魔車に乗っていた時に女の人の声が聞こえた時があった、あれがもし魔女だとしたら何か聞くことができるかもしれない、でも最初の方は槍だったんだよな、もし確率が二回に一回とかだったら槍が来てもおかしくない、だけどこのままここにいるよりは賭けに出て方がいいか。ブリナキアはそう考えてから口を開いた。
「聞きたくない人は耳をふさいで。」
そう言うとウルナ達はみんな耳をふさいだ。
「私は何度も死に…」
ブリナキアがそう言うと当たりの時間が止まり黒い女の人の形をした影がブリナキアの前に現れる、そしてその影はこうつぶやいた。
「あの技を使いなさい。」
そうブリナキアに言うとその黒い影は消えあたりの時間が動き出す。あの技って何だろう、まさかお母さんが私に使った空間を作り出す技のことかな、確かにあれなら出れるかもしれない、だけどやり方がわからない、だけど何かをしないとずっとここにいないといけない、だったらやり方なんかわからなくてもやってやる。
「ブラックミスト‼」
ブリナキアがそう言うと黒い色の霧が辺りに広がりあたりの景色をだんだん飲み込んでいく。
果たしてブリナキアはブラックミストを使いこの部屋から出ることができるのか、そして塔から出るまでに起こる謎、果たしてそれを解き明かすことはできるのか。




