カコ、ゲンザイ。
「蝉の声が聴こえる」
もうあの日から何年経つのだろうか…。
「ひかり、またあの事考えてるのか?」
愛しき人の声が、夏音色に入ってくる。
「あ、隼人さん…」
2本の缶ジュースを手に持ち、私の横にそっと座った。
「どうでもいいけどさ、もういいんじゃねーの?」
「ええ、でもどうしても私が駄目なんです。なんて言ったら伝わりますかね…」
上手い言い回しが見付からず、頭を抱える。
それに気づいたのか
「まぁ、お前の言いたいことはなんとなく分かるさ。」
隼人さんはそう言うと、私を優しく包み込む。
私が隼人さんに謝ろうとすると
「いいから。“ごめんなさい”は聞き飽きたって言ってるだろう?」
と、甘いキス。
「そうだな、“ありがとう”ならいつでも受け付ける」
輝かしい満面の笑みでそう言う隼人さん。
この笑顔を見る度に安心する。
私はこの世で一番愛していた人を、殺してしまった。
「また明日な!」
あの時、腕を掴んで“行かないで”とでも言っていたら…
彼はまだ私の隣で笑っていたのだろうか。
そうだとしたら、私は現在より幸せだったのだろうか。
だったとしても、やはり運命というものは存在しているのだと思う。
いつかは消えてしまうのだろう。
あの夏のあの日、君は何を見ていて、何を思っていたの?
また話せる日が来るのだとしたら
私は君に「ありがとう」と伝えたい。
「愛してた」
右手に持っている缶ジュースを飲み干した。




