都市伝説創作委員会の創設
そんなことで、俺は都市伝説創作委員会に入ったのだった。
ぶっちゃけあの時の説得材料が咲夜じゃなかったら、多分、俺はこの委員会に入っていないだろう。
その後の俺は辞めようとしていたバイトを辞め、委員会に出席していた。
これまでの委員会活動は『都市伝説を学ぶ』という議題で様々な都市伝説についての本を読んだ。そういう点では文芸部というのは強ち間違ってはいないかもしれない。
しかし、驚いたのは5月の初頭、即ち、ゴールデンウィークである。休み前の委員会で律子が突然「クッシーに会いに行こう!」と言い出し、そのまま北海道で合宿を行うことになった。つーか、クッシーは都市伝説じゃなくて未確認生物だろ。いや似たようなもんだけど……。そんなことで北海道で二泊三日した。2日目に屈斜路湖に行ったものの、他の時間は完全に観光だった。咲夜に関してはもはやクッシーのことなど最初から眼中になく、始終楽しそうだった。律子は前半こそクッシークッシー言っていたが、後半は気分は修学旅行といった風でお土産を大量に買って帰った。俺はというと、ゴールデンウィークはゆっくり本でも読むつもりだったのが北海道観光に変わって、準備段階では面倒だと感じていたが、「彼女」の顔を見たとたんやる気に変わった。人間は不思議な生き物だ。
そんなこんなで、俺も咲夜もここ数日は律子に振り回されっぱなしだった。
そしてついに、創作段階に入った。
律子からは逃げられないし、咲夜からは逃れられない。
俺の青春――バイトをして友人と駄弁り、将来の為に勉学に励む当たり障りない日々――俺はそいつを「都市伝説」に捧げる。
気づけば、やはり、グラウンドからは運動部の喧騒、向かいの棟からは合奏部の音色が響き渡る。
俺は節々がボロボロの黒板に体を向けた。
律子はいつもどおり、咲夜は何かわくわくしている。定刻通りだ。律子は教卓から身を乗り出す。
「さあ、委員会を始めるわよ!サト!さっちゃん!」