表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
都市伝説創作委員会  作者: 石見
プロローグ
1/6

都市伝説創作委員会の放課後

 『議題、新しい都市伝説を作ろう。』


 使い古された黒板にはチョークの字でそう書かれていた。


 初夏、スポーツをするには持ってこいというような晴天で、グラウンドから中央館を挟んだ北館の、それも3階の端に位置する生物実験室にまで、運動部の掛け声は聞こえた。

 俺もこいつに出会わなければ、いや、止めよう。考えたところで無駄なことはもう分かりきっている。


 ボーッと窓の外を眺めてると、あいつが頭を小突いてくる。


「ねえ、聞いてるの!?」

「全然聞いてる」


 適当に返事したせいで言葉を誤用してしまった。流石にこいつもそれに気づいたらしい。


「あんた、この委員会においての自分の立場、わかってるの?」

「わかってるよ、だからこそ、こうやって体力を温存して……」


 突如として俺の腹に拳がめり込んだ。


「ぐっ……」


 堪えきれず、その場で踞った。せめて前置きでも掛け声でもいいから寄越せよ。なんでいつも無言なんだよ。まじでこわい。

 すると2人掛けの机が3列に並ぶ中央の一番後ろの席から、美少女が駆け寄ってくる。


「だ、大丈夫ですか?」


 汚れのないその声に、身も心も洗い流されるようだ。


「律さん、いつも言ってますけど、暴力はいけませんよ?」


 その声に、少し怒りが帯びる


「で、でもこいつも悪いでしょ?」


 律子は少し気圧される。


「何が何でも、暴力はいけません!」


 彼女は、めっ、というように指を突き立てた。


「ごめん、さっちゃん……」


 流石の律子も咲夜には頭が上がらない。


「そうだぞー、律子ー、争いからは何も生まれないぞー」

「あんたは黙ってろ」


 もはや、なんと言っていいか、例えるならば鬼のような目で律子はこっちを見ている。冗談抜きでこわい。ちびりかけた。


「……っーか、これ何回目だよ」

「今日はまだ一回しか殴ってないでしょ!」

「ちげーよ、この議題だよ」


 今日「は」とか「まだ」とか、不穏な言葉が聞こえたが、話が進まないからスルーする。


「何回目って、まだ陸な案もでてないじゃない」


 今日は5月の最終水曜日、先週の水曜からこの『議題』について会議している。いや、会議というか、お茶会というか、まあそんな感じである。


「その陸な案がでると思ってるのか?」

「もちろん!」


 なんでそんなに自信ありげなんだ……。3人寄っても文殊の知恵にはならんぞ。


「そもそも、こんなことしてどうするんだよ、生徒指導部に連れ出されるのはもうごめんだ」


 そもそも、この同好会活動には意味があるのか? 捗るのは俺の(咲夜についての)妄想くらいだぞ。


 ――もっと言えば、なんで俺はこんなとこにいるんだ? 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ