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レグルノーラの悪魔〜滅びゆく裏の世界と不遇の救世主〜  作者: 天崎 剣
【30】破滅の竜と捨て身の救世主
147/161

147.無謀な戦い

 ズッシリと重い両手剣を構えた俺に、ドレグ・ルゴラは激高した。

 甲板の中央から板を踏み抜きながら凄まじい勢いで迫ってくる。階下の船室や格納庫の天井が崩れ落ち、内部が露呈した。まるで段ボールハウスをぶっ壊すような勢いで帆船が壊されていく。どうにかこうにか巻き込まれぬよう逃げるのが精一杯、この状態で攻撃は難しいからだろう、誰も攻撃してこないのを良いことに、ドレグ・ルゴラは巨体を揺らし、我が物顔に船を壊しながら俺に向かってくる。

 ヤツは興奮で尻尾を高く上げ、耳を劈くほどデカく咆哮した。

 何度聞いても慣れない声に身がすくむ。汗が滲む手に一層力を入れ、俺はヤツを睨み付けた。

 視界の奥で、船から脱出するよう先導するモニカたちの姿が見える。格納庫まで繋がった穴へ乗組員たちを向かわせ、エアボートでハッチから脱出させようとしているらしい。確かに、あそこには数台のボートがあった。砂漠から森へ向かった際、物資の運搬に使うためのモノだ。長距離の移動には向かなさそうだが、大人数を一気に運べる利点がある。ディアナが凍らせた湖面へと逃げ、そのままレグルノーラの大地に向かっていけばどうにかなりそうだ。

 俺にヤツの注意が向いているうちにどうにかしてくれ。俺は願いながら、剣の刃先に向け魔法陣をスライドさせていく。

 赤々と燃えさかる炎を纏った両手剣をしっかりと握り、剣を振るう。巻き起こった風の中を通り抜けるようにして炎がヤツの身体に向かっていく。

 ブンと首を一振りして、ヤツはそれを振り払う。


「無駄だ」


 一言、また大きく息を吸い込む。


「シバ! ルーク! 逃げろ!」


 確か船首に居たはずだ。俺は姿を確かめぬまま叫び、再びシールド魔法を展開する。直後、熱風が船首を覆い、あらゆるモノが吹き飛ばされた。目視ではもう、誰が無事で誰がやられたのかさえ知ることができない。気配を探りたいが、それすらドレグ・ルゴラは許そうとしなかった。

 甲板の床材に火が付き、あちこちらで火がくすぶり始めているのが見える。焦げた臭いとヤツの身体からあふれ出る生臭くねっとりとした風が、胃の中のモノを全部ぶちまけろと怒鳴りつけてくる。

 こんなときに。

 せっかく美桜と同化しても、心がそっぽを向いたままでは力が出し切れない。テラと上手く同化できていたのは、あいつが同化した人間の心に同調するのに慣れていたからだ。いくら強大な力があっても、使いこなせないなら意味がない。今までの戦いで十分わかっていたはずだ。

 頼む、美桜。本気で、本気で力を貸せ……!


『凌、ひとつだけ……、聞いてもいい?』


 彼女なりに頃合を図ったのだろうか。俺が力を抜いたところで、美桜が恐る恐る話しかけてくる。


「なんだよ」


 ぶっきらぼうに答えると、美桜は一瞬言葉を詰まらせる。


「早く」


 次の攻撃が来る前に動かないと。焦って言葉に集中できない。

 これ以上船の上で戦うのは難しそうだ。湖面に降り、そのままヤツを誘導するか。


『ごめんなさい。ひとつだけ、ひとつだけ教えて。凌は、凌は……』


 勿体ぶる美桜にイライラが募る。


「来澄! こっちは無事だ!」


 視界の外からシバの声がして、俺はフッと力を抜いた。


『どうして、全部知ってて、私のこと嫌いにならなかったの……?』


 くだらなすぎる質問がふいに頭に降りてきて、俺の時間は一瞬止まった。

 ……どうして? 理由? そんなもの、必要なのか?

 口元が緩んだ。

 アホらしい。こんなことで、こんなくだらないことで。


「嫌いになる理由がなかったから?」


 俺は半笑いで呟いた。


「美桜のことを嫌いになる理由にはならなかったから、じゃないの?」


 木製の帆船は火の回りが早い。一回目のブレスで水分を飛ばされた木材は、普段よりもずっと燃えやすくなっていた。

 シバとルークがどこからか水の魔法を打ち、火を消そうと試みているようだが、勢いを増してきた炎は簡単に消すことはできない。マストに繋いでいたロープが導火線代わりになり、どんどん燃え広がってゆく。船首から船尾へ、甲板に投げ出されたロープと船縁を伝い燃え広がる火から逃れようと、能力者や乗組員たちが必死に走っている。


『記憶を辿っていくと、凌は随分前に私の正体を知っていた。私が気付くよりもずっとずっと前に。それなのに、どうしてそんなこと』


「……馬鹿か」


 悩むにしては、本当にくだらない。

 いちいち口に出して話さなきゃ伝わらない? 女ってのは面倒だ。こうやって、身も心もひとつになっているはずなのに。


「正体とか出自とか。それって重要? 美桜が美桜であることに変わりはない。自分が変えようもない部分で叩かれるのっておかしいだろ。そんなことより重要なのは、自分らしさを貫くことなんじゃないの?」


『私……らしさ?』


「やたらとツンツンして人付き合いが苦手なとことか、誰にも頼らないって決心固いところとか、誰かを好きになったら一途にそれしか見えなくなっていくとことか。いろいろあるだろ。全部ひっくるめて好きになっちゃったのに、ドレグ・ルゴラの血を引いていたって事実を知っただけで嫌いになるなんて無責任なこと、俺はできないね。第一、それが原因で今まで美桜が暴れたことはなかった。ヤツが動き出して、初めてあんなことになった。ヤツの影響だ。ヤツを封じれば、或いは倒せば、呪縛から逃れられるかもしれない。美桜が世界を救いたいと願っていたのはよく知ってる。心に黒い部分がないのも、苦しいながらも必死に生きてきたことも、俺は全部知ってるから。だからこそ、そうそう簡単に嫌いになんてなれないね」


 まくし立てるように言った。

 声に出すことで彼女が俺の考えを理解し、協力してくれるなら。そんな切羽詰まった考えで、俺は恥ずかしいセリフを堂々と吐き出してみせた。

 直ぐそこまで火が回り始めた。ドレグ・ルゴラはその固い鱗で熱をそれほど感じないのか、炎の中でゆっくりと身体を起こし、体勢を整えている。

 行動するなら今だ。早く炎から逃れないと。


『……ありがとう』


 美桜の声が聞こえたのと同時に、身体の奥底から力が湧き上がってくる。


『ゴメン。もう大丈夫。私の力、存分に使って……!』


 ――竜化が始まった。

 最初に変化が現れたのは手足。急激に溢れ出した力が俺の身体を変えていく。

 激痛が走り、意識が遠のきかけるのをじっと堪える。歯を食いしばり、呻きながら変化(へんげ)の完了を待つ。

 右手は両手剣を持つことすら難しくなって、全身締め付けられるような感覚でまともに立っていることすら辛くなって。

 だけど大丈夫。身体は直に慣れる。足の先から頭の先まで、自分の遺伝情報がどんどん書き換えられていくのがわかる。人間じゃなくなる。角や牙や羽や尾や、人間にあるまじきモノが出現し、身体は肥大し、筋骨隆々としていく。興奮状態が持続し、呼吸が荒くなる。

 と、ドレグ・ルゴラの巨大な腕が、俺めがけて落ちてくるのが見えた。

 ヤバい。

 咄嗟に床板を蹴る。通常よりもずっと高い跳躍力に自分でも目が丸くなる。気が付くとヤツの頭上を越え、燃えさかる帆船を俯瞰できる高度まで達していた。

 バキバキバキッと激しい音を立て、船首が崩れ落ちる。平衡感覚を失った船が、凍りついた湖の上でぐらぐらっと大きく揺れ、その衝撃で船尾から何人かが湖面へと投げ出されるのが見えた。直後、魔法が発動しているところを見ると、ディアナかモニカが救ってくれているのだろうか。


「何だ……、その姿は……!」


 ドレグ・ルゴラが低い声と共に俺を見上げている。


「竜化した……? 白い竜と? まさか!」


 ガッと目を見開き、口をひん曲げているのが見えた。

 想定外、だったのだろうか。


「それとも白い竜の鎧を具現化させたか? この窮地で面白い冗談だ」


 ヤツに言われて、俺は自分の身体が巨大化していないことに気付く。筋肉が付き、一回り大きくなったが、竜の大きさではない。あちこち半竜人程度に竜化しつつ、白い竜をモチーフにした全身鎧を身に纏っていたのだ。

 これではヤツと対等には。思っていると、美桜が何やら話しかけてくる。


『巨大化したら、それだけで膨大なエネルギーを消費してしまうわ。あなたの記憶の中でシンが言っていたことよ。“竜化は最低限”にしておいた方が良いって』


 ……なるほど。

 記憶なんてホント、見られたい放題だな。


「ラジャ。ありがとう、美桜」


 独り言のように呟くのを、ヤツは聞き取ってしまった。


「ミオ……? リョウ、貴様、ミオと同化を……?」


「当たり。手段を選んでる場合じゃないんだ。どんな手を使ってでもお前を倒す。例え、自分の肉体を傷つけようと、だ」


 口角を上げて挑発的に話すと、ヤツはワナワナと震え、雄叫びを上げた。

 そうしてバッと帆船から飛び立ち、俺の真ん前までやってくる。


「金色竜を失い、肉体を失ってもなお、私を倒そうとする。リョウ、お前は一体何者なのだ。救世主とは何と無謀で、何と愚かな存在なのだ……!」


 ヤツはそう言って、また大きく息を吸った。





















・・・・・‥‥‥………‥‥‥・・・・・





















 テーブルの上に、子供用の食器が一組置いてある。

 それを恨めしく睨んでいる俺がいる。いや、俺じゃない。美桜だ。

 また意識が飛んでいる。

 食器の中にはまだ半分ほどご飯が残っていて、すっかりと冷めてしまっていた。

 その真ん前で仁王立ちする男。端整な顔立ちで、質の良いスーツを纏っている。


「最後まで食べなさいと言ったのが聞こえなかったか、美桜」


 トゲトゲしい声に、美桜は萎縮して身体をすくめた。


「お前にはもうママは居ない。私の言うことが聞けないのなら、どこか遠くへ預けてしまうしかない。生き延びたいなら食べることだ」


 小さい美桜には言葉の意味が理解できていなかった。

 冷たい言葉を浴びせてくる男を、震えながら眺めるだけ。


「旦那様、美桜お嬢様は未だ小さいのですから、そんな言い方では」


 後ろから女の人がやって来て、肩を抱く。細い手。

 彼女は美桜の側に屈み、


「大丈夫ですよ、最後まで頑張りましょうね」


 と声をかけてくる。

 飯田さんだ。未だ白髪がない。

 泣きながらスプーンを持つ美桜。冷たいご飯が恐る恐る口に運ばれていく。





















・・・・・‥‥‥………‥‥‥・・・・・





















 ブンブンと頭を振った。

 ち……っくしょう。

 何だこれ。いちいち何かが見える。

 発動させたシールド魔法で炎を防ぎながら、俺は自分の見ていた記憶の中身を思い出す。

 ブレスが切れた途端、ヤツは俺に向かって突進した。応戦するしかない。

 咄嗟に魔法陣を展開させる。ヤツが炎なら、こっちは水系。


――“凍てつく氷の刃よ、巨大なる竜を(つんざ)け”


 両手にグッと力を込め、ありったけの魔力を注ぐ。長さ1メートルはあろうかという大きな氷の欠片が凄まじい勢いでドレグ・ルゴラの本体めがけて発射される。ただの氷じゃない、ひとつひとつに込められた魔力で強化された塊は、金属片と同じような強度にまで硬化してある。ザクザクッと刃が刺さり、血が噴き出していく。

 やった!

 思った瞬間、自分にも同じ箇所にダメージが入っていることに気付く。


『凌、もしかして向こうが傷つけば』


「こっちも傷つくってか? 上等じゃないか」


 二つの世界で命は繋がっていた。“裏”で傷つけば同じ箇所が“表”でも傷ついていた。二つで一つ。表裏一体。同じ人間の身体と意識体。バラバラだけどバラバラじゃない。

 治癒魔法をかけた。持続的に怪我を治していく。胸に手を当て、魔法陣を直接書き込んだ。身体がじんわりと桃色の光を帯び、傷口が塞がっていくのを感じる。

 攻撃には一定の効果があった。炎系の魔法を避け、別系統の魔法を使えばどうにか。


「命なんか全然惜しくないね。どのみち死ぬ運命だ!」


 再び両手剣。今度の剣はいつもと装飾が違う。美桜の力か。

 荘厳な装飾が施されたその剣に、聖なる光の魔法をかける。


「ダークアイも湖もこの魔法で浄化された。お前のその黒い心も、この魔法で断ち斬ってやる!」


 言いながら俺は、ドレグ・ルゴラに向かって滑空していく。





















・・・・・‥‥‥………‥‥‥・・・・・





















「あんまり“こっち”に居すぎない方が良いんじゃないの?」


 茶髪の少年が優しい声でなだめながら、髪を撫でてくる。


「“表”が君の居場所じゃないか。ここはあくまで“裏の世界”。常態的に居るようになるのは危険だ」


「わかってるわよ……」


 美桜の声がそう答える。森の中の丸太小屋、遠くで鳥や獣の鳴く声が響いている。

 大きなテーブルに頭を伏せて、美桜は深くため息を吐く。


「私は要らない子なんだって」


 言うと、少年はガタンと椅子から立ち上がり、声を荒げた。


「なんてことを言うんだよ、美桜!」


 テーブルを大きく叩いて強く否定してくる。


「君のどこが『要らない子』だって? この世界のどこにそんなことを言うヤツがいるんだよ!」


「この世界じゃない、“表”の話。伯父さんが言うの。『堕ろすべきだった』『捨ててしまえばよかった』『何故生きてる』って。それって、どういう意味だと思う? 愛されてないってことだよね……?」


 顔を上げると、少年は涙を浮かべてこちらを見ていた。

 未だ幼いが、どうやら彼はジーク。美桜の幼馴染み。


「間違ってるよ……。君の伯父さんは間違ってる。愛されるべきじゃない子どもなんて、どこにも存在しないはずだろ……?」


 ジークの言葉には熱がこもっていた。拳を強く握りしめ、行き場のない怒りに堪えているようにも見えた。


「ジークも……怖い? 私のこと、怖いと思う?」


「何を言い出すんだよ、美桜」


「人と違う力を持ってたり、皆と同じじゃないところが沢山あったりしたら、やっぱり怖いかなぁ。本当のお父さんもわからない、正体のわからない子どもは怖いかなぁ。私は私なのに。どうして私、受け入れてもらえないのかなぁ……」





















・・・・・‥‥‥………‥‥‥・・・・・





















 獲物を刺した感触、自分の腹に刺された感触。

 あまりの痛さに悶えた。が、気を抜いてる場合じゃない。思いのほか剣での攻撃に効果のあったことが、ヤツは気に食わなかったらしい。

 大きく身体を捻り、俺を鷲掴みにしようと手を伸ばす。それを必死に避け、ヤツの背中へ回っていく。

 死角を攻撃するしかない。

 背中へ向けて思いっ切り剣を振ると、それが風の刃となってヤツの身体に刺さっていく。

 血が出た。するとまた俺の背中も痛み始める。

 治癒魔法でじわじわと治ってはいくものの、こんな方法で戦い続けるのには限界がありそうだ。かといって、コレといった打開策もない。

 竜化して強くなった力で、徐々にヤツの体力を削る。

 その隙に、帆船の皆には無事に帰ってもらわないと――。





















・・・・・‥‥‥………‥‥‥・・・・・





















「仲間がいる?」


 再びジークの顔。

 今と年齢はさほど変わらないように見える。高校の制服を着た美桜は、レグルノーラのジークの自宅を訪れていた。

 出された紅茶をすすりながら、アンティーク調の家具で囲まれた室内に目をやる。また新しい家具が増えていたらしく、美桜の視線は小さな引き出しの前で止まっていた。


「多分、私と同じ。かなり強い干渉能力を持っているようなんだけど、彼はまだ無自覚みたい。“こっち”でも何度か姿を見たの。雑踏に混じって歩いていたけど、多分本人だと思うのよね」


 美桜は視線を戻し、ジークの出方を覗っている。

 ジークはふぅんと首を傾げ、


「だったら、声をかけてみるとか」


 さも当たり前のように返してくる。


「それができたら困らないんだけど」


 と美桜。


「不思議なモノを感じるのよね。きっと彼、普通の干渉者じゃない。もしかしたら世界を救う存在になるかもしれない。でも、どうやってそれを伝えたらいい?」





















・・・・・‥‥‥………‥‥‥・・・・・





















 再び炎のブレスが俺を襲う。

 火炎噴射機のように強く噴き出された炎の息は、軽々と湖面を溶かした。分厚い氷は流氷のように砕かれ、沈みゆく氷塊が飛沫を上げる。一面平らだったリンクが、最早ヒビと割れ目だらけだ。

 いつの間にか帆船からは少し離れていて、俺とドレグ・ルゴラは空中でやったりやられたりを繰り返していた。

 お互い息が上がり、少しずつ体力が弱まってきていた。

 ヤツの白い鱗はあちらこちら赤く染まり、深く傷つけたところからは動く度に何度も血が溢れ出ていた。同じ箇所、俺も傷つき、治癒魔法で何とか乗り切ってはいるものの、激しい痛みと目眩でどうにかなりそうだ。深い傷は治りが悪い。筋肉の深いところまで達した傷は、動けば動くほど治癒が遅れてしまう。

 完全に無謀な戦いだ。

 自らの身体に刃を突き立ててしまえば、もしかしたら直ぐに終わるのじゃないかなんて考えが頭をよぎる。けど、そんなことまでしても、俺が先に力尽きたら終わり。誰もヤツを止められなくなる。

 もっと弱らせなきゃ。

 聖なる光の魔法が弱点なのは間違いない。けれど、それを竜玉で増幅させてぶつけるには、もう少し効きやすくなってからの方が効果的なはずだ。


「おのれ……! ちょこまかと……!」


 ヤツはギリリと歯を鳴らし、それから身体を光に包んだ。光がシュッと縮まり、人型を形成する。気が付いたときには、真っ黒な服を纏ったもう一人の俺が、凍りついた湖面に降り立っていた。


「体格差がありすぎてはまともに戦えない。人型に戻ってやる。これで対等。お互い、白い竜と人間が同化した者同士。魔法でも接近戦でも、好きに戦ってやろうではないか……!」


 傷だらけながらも、ヤツは変わらぬ調子で俺を睨み付けた。


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黄昏のレグルノーラ~災厄の神の子と復活の破壊竜~
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