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特異点

観察されてます



 特異点、宿命収束因子Aの観察を続けます。


 宿命収束因子Aは一般には「魔王」として認識されている模様。



 この星の大多数を占める一般的宿命因子からも、特異な存在である事は明白なものとして、恐れられてはいますが、この手の文明に有り勝ちな「崇め奉る」という状態にはなっていない事は非常に興味深いものです。



 また、ここまで大きな影響力を有している因子にも関わらず、周囲への影響の少なさ、状態の安定性は特筆すべき要素です。



 通常、この手の因子は周囲の社会に大きな影響を与え、時には文明全てを巻き込んで崩壊へ至る事も珍しくありませんが、この観察対象の場合は、むしろ、その社会の枠の中に納まろうとする性向を見せており、これ本来の持つ因子的特性とは正反対の行動です。


 これは宿命収束因子B、一般に「勇者」として認識されている個体の影響、相互作用による事だとも考えられます。


 現地観察員として、今後、宿命収束因子Bに対する専属の観察員の増員を提案します。




 私は宿命収束因子Aに対しての観察員である為、状況によっては宿命収束因子Bへの観察、注意が不足するという事も考えられ、その事が観察対象に対して何らかの致命的影響を及ぼす危険性も10.1133%と非常に高い確率となっています。



 現状、この星の宇宙開発レベルは衛星から他の惑星への動きが見られ始めた程度であり、今すぐ彼らの行動が我々に影響を及ぼす可能性は低いのですが、クハマスデゥア星系で見られた例の様に、現地社会レベルが低い場合でも島宇宙レベルのでの破壊をもたらすケースもあることから、今回の観察対象の場合、我々の歴史上最大級の収束レベルである事から注意はいくらはらってもはらい過ぎる事はないかと思われます。




 この「学校」と呼ばれる低レベルの教育システム空間において、観察対象の取っている行動はかなりルーチン化されたものであり、これが観察対象に取って、何らかの儀式的役割を果たしている可能性についても研究を進めるべきであると思われます。

 

 今現在、教室は「授業」という、かなり非効率的な知識伝達の為の行為が行われていますが、観察対象の志向する「秩序」に支配されており、他の教室や、この星の同様の施設で見られる状況に比べると非常に知識伝達以外の要素が排除されています。


 具体的には、個体同士の「おしゃべり」と呼ばれるコミュニケーションや、「早弁」と呼ばれるエネルギー補充行為、「居眠り」と呼ばれる夜間の睡眠時間、もしくは緊張感の不足から来る睡眠などはこの教室内では見受けられません。


 これは同年代の他の一般的個体集団に比べると明らかに異常と言ってよい状態であり、その事にストレスを感じている個体も少なくありませんが、状況原因の排除や状況の改変という動きは一切起こっておりません。



 中にはこの状況を歓迎する個体や、これに適応している個体も発生しており、こうした個体に対する観察対象の影響度合いについて機器を用いた検査も有効かと思われます。




 授業が終了して「休み時間」と呼ばれる授業間のインターバル期間に入りました。


 この時間はさすがにおしゃべりを行う個体がいますが、それも一定の範囲内の事であり、騒ぐという意味不明の行動を取ったり、悪ふざけと呼ばれる行動を取ったりする個体は存在しません。 


 もしかすると現在は、観察対象による場の支配の検証実験中なのかもしれません。



 そうこうする内にまた授業へ突入しました。


 今度の教師は若い事もあって、観察対象に対する恐怖の度合いが隠しきれていませんが、観察対象は興味が無いのか気がついていないふりをしているのか、これといってネガティブな反応は示していません。


 気付いている個体からは同情的な視線や励ましの視線が送られています。


 


 観察を続けます。






【クラスメイトたちの雑談】 


 「今日は委員会で魔王様、早々に委員会に行っちゃって助かったわ。」

 

 「ホント、マジ、魔王様居るとバカ話とか出来ないもんねぇ。」


 「滅多にそんな機会無いからお菓子とか持ってこなくなっちゃったし。」


 「まあね、帰り道どっか寄ってくとか言っても、魔王様の行動圏内だと差し障りあるし、かと言ってそれだけの為にわざわざ遠くに行くのもねぇ。」


 「あ、青山さん今帰り? またね、バイバイ!」


 


 「あの青山さんも魔王様ほどじゃないけど人間っぽく無いよねぇ。」


 「あー、わかるわかる。魔王様とは違って機械っぽいっていうか。」


 「アニメのアンドロイドとか、作られた存在の無口系とか?」


 「でも、機械とかそんなんは無いと思うな。だって、青山さんって魔王様ラブじゃないの?」


 「えー!? どう言う事、それっ!」


 「いや、一部じゃ噂だよ? 気が付くと必ず魔王様見てるもん、いつも。」


 「なになに、あの外見で実は情熱系? だって勇者ちゃんから略奪狙いでしょ?」


 「ねぇ、別に魔王様とどうこうとは思わないけどさ、あの二人の間には入れないでしょ。」

 

 「でも、魔王様の配下の四天王とかって感じで似合わない?」


 「ああ、秘められた思いを隠して魔王に仕えるクールビューティね!」


 「なんか話してたら描きたくなってきちゃった。」

 

 「なに、今度の部の会報? あれ、それなりに刷るから魔王様の目に触れる機会あるかもよ?」


 「あー・・・でも描きたいなあ。」


 「性別逆にしちゃうか、同性同士にしちゃえば?」


 「後ろの方が本音だろ、このBL好きが!」


 「いいじゃない、フィクションなら。」



 

 「ただいまぁ。」


 「あ、結城ちゃんおつかれ、委員会終わったの?」


 「うん、麻生君は先生に呼ばれてお手伝いだって、でもすぐに戻ってくると思うよ。」



 「そっか、じゃ、ぼちぼちバカ話はおしまいだね。」


 「うん、じゃ、アタシら先に帰るね、じゃ、結城ちゃんまた明日、バイバイ!」


 「バイバイ!」


 

 「やっぱ勇者ちゃんは犯罪級の可愛さだわ。」


 「だね。」 



 

でも他のクラスメイトからはこう見えてます^^;

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