召喚
基準や常識が狂うとこうなります
この間の日曜、なんで約束ブッチしたかって?
いや、あの日、酷い目にあっちゃってさ。
え、何がって?
取り敢えず、しばらくツッコミ無しにしてくれたら話すけど?
いやいや、マジ、自分が経験しねぇで、他の奴に聞いたら絶対ぇ嘘だと思う内容。
簡単に言えば人違いなんだけどさ。
ほら、良く創作であるじゃん・・・勇者召喚。
あれあれ、あれ食らっちゃってさ。
足元になんか出て落っこちて、「勇者様~!」って。
本物知ってるから絶対に人違いだって言ったのにさ。
俺みたいな小物が勇者なわけないでしょ?
結城さんには絶対敵わないって!
なんか巫女姫だの、国王だの、宮廷魔術師だの、騎士団長だの出てきてさ、「伝説の勇者さまに間違いない!」とか言って、伝説の装備とかで魔王退治に行かされたわけよ。
一緒に、ゴリマッチョの騎士と、結局デレなかったツンデレ風魔術師と、何があっても神様に感謝しちゃう神官さんが付いてきてさ。
俺混ぜて男2女2の有り勝ちな編成で、思わず「ゲームかよ!」って突っ込んじまったよ。
まあ、魔物とかも普通の人たちは何か怖がってたけどね。
ゾンビ系のゲームの方がよっぽど怖いくらい。
かなりトロかったし。
それにさあ、ウチのクラスの魔王様知ってるとさ、あまりに威圧感無くて、時々弱いものいじめしてる気分になっちゃってさ。
魔物倒して「俺強ぇ~!!」で爽快ってわけにはいかなかった。
うん、結構ツマらなかった、飯もマズかったし。
吉○屋の牛丼以下っていうか、それが最高のラインでさ。
腹が膨れるだけっていう感じ。
イギリスが飯マズって言うけどさ、あんな感じなのかね?
だったら行きたくねーなぁ・・・。
まあ、そんな感じでクリアすりゃ帰れるみたいだったから、ほぼ直進ルートで魔王のトコ行ってさ。
で、まあ、偉そうな配下倒して、魔王のトコに着いたわけだ。
それなりに緊張もしたし、感慨もあったんだけどさ。
なんか、すげぇ腹立っちゃってさ。
え、何がって?
いや、その自称・魔王がさ、全然怖くないのよ。
もう、あの程度で魔王名乗るなんておこがまし過ぎるっていうの?
ウチの魔王様とまでは行かないまでも、それなりに強そうな奴が出てくると思ってたのにさ。
まあ、魔王様クラス居たら、当然逃げるけどな。
うーん、なんて言えばいいんだろ。
ほら、美味いって評判のレストラン行ってさ、凄い期待して食べたらさ、確かにまずくはないんだけど微妙って感じの味だった時とかさ、前評判高い映画を期待して映画館までわざわざ見に行ったら、「金返せ!」だったりした時みたいな感じ?
一応は魔王戦ってクライマックスなわけじゃん?
気付いたら一人でボコボコにしてた。
一緒に居た他の3人はなんかビビってた、わけわからん。
で、その後、魔王?倒したっていうんで、パーティみたいのあって、それなりに引き止められたけど帰ってきた。
だいぶ端折ったけどね、そんな感じ。
いや、だから、そんな目で見るなよ!
嘘っぽいだろ? 分かってんだよ、俺も。
にしてもさぁ、あれが本当に世界の危機だったっていうなら、この世界っていうか、俺らのクラスってなんなんだろうね?
俺じゃなく、魔王様が間違って召喚されてたら、どうなってたんだろ? ってのも興味あるよな。
召喚完了、即バッドエンドとか?
【勇者の伝説】
その召喚陣から現れたのは、すっきりとした顔立ちの、それでいてどこか普通な感じも漂わせた少年でしたが、私も含め、その場に居たもの全てが、彼が伝説の勇者であると感じるだけの物を持っていました。
勇者様は「自分は勇者ではない、人違いだ」としきりにおっしゃってましたが、そうした謙虚な所も多くの人を惹きつけました。
彼の旅に同行する者を決める際には、多くの自薦、他薦が集まり、なんとか3人に絞り込む事は出来ましたが、非常に多くの者が自分が選ばれなかった事を嘆き悲しみました。
この世界の危機を一刻も早く救って下さろうと、勇者様は考えられない程の速さで魔物たちの拠点を次々に落とし、そして魔王の城に辿り着いたそうです。
同行した者たちが、魔王の瘴気と威圧感で動けない中、勇者様はただ一人魔王に立ち向かい、それを討ち果たしました。
国王も姫も、それに私も、多くの人たちが彼を引き止めましたが、元の世界でも彼の力を必要とする多くの方がいらっしゃるのでしょう、彼は躊躇う事無く元の世界へと帰っていきました。
・・・それにしても、魔王と戦った際に彼が叫んでいたという言葉。
「お前程度のヘナチョコが『魔王』を名乗るなんておこがまし過ぎるんだよ!」というのはどういうわけなんでしょう?
まさか、元の世界でも魔王と戦った経験がおありとか・・・?
こんな感じで非常(識)事態に巻き込まれても
常識や感覚が狂ってるせいで・・・という話になります