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勇者

毎回、主観は変わる予定です



 私の友達は「勇者」です。


 王様に魔王を退治するように言われたり、15歳の誕生日に家から追い出されたりはしないけど、それでも勇者です。


 

 なにせ、あの「魔王」と対等に渡り合える唯一の存在なのですから・・・。


 彼女と初めて顔を合わせたのは中学二年の時。


 小学校は別の学校で、一年の時は別のクラスだったため、その時まで面識どころか存在すら知りませんでした。



 初対面の印象は「何、この可愛い子、持って帰りたい」でした。


 大き目の制服。

 

 全てのパーツがミニマムな体。


 背が低い事から自然上目遣いになる事が多いのですが、その攻撃力たるや教師すら撃沈させるものです。


 今考えるとかなりおこがましい事ですが、当時の中学に「結城ちゃんを見守る会」が出来たのも当然と言えるでしょう。



 性格も、物怖じせず明るい性格、でもちょっと抜けたトコがある、という完璧さ。


 お友達になれて、それまで存在を信じてもいなかった神に感謝してしまったレベルです。


 一緒に居ても、お喋りをしても楽しいし、見てるだけでも癒される。


 

 小さな太陽とでもいうべきでしょうか?

 心まで温かくなる様な、そんな存在なのです、彼女は。


 三年の時も一緒のクラス、色々話をしている内に、志望校も一緒だという事が分かった私は、同じ高校に通えるよう、それまで以上に勉強も頑張りました。


 その甲斐あって、無事に一緒に合格。


 その上クラスも一緒だと、舞い上がった気分で教室に入った私は、そこで一気にどん底に突き落とされました。



 

 そこには「魔王」が居たのです。



 別の中学で、しかも離れたエリアだった事もあって、噂は聞いていたものの「そんなに美形だったら、怖いくらいいいじゃんねぇ」などと言っていた私ですが、実物を見て前言を即座に撤回しました。



 どんなに美形だろうと、あれはそういうレベルの存在じゃない。



 うん、「死を覚悟させる存在」って話は本当だったんだ。


 高校デビューなのか、気合いれて髪型を決めてきた男子も、自然なお洒落の勝気そうな女子も、一様に口を噤み、ただただ時間が過ぎ去っていくのを待っている。




 そんなクラスの扉をガラっと開いて、入ってきたのは彼女。


 内心大声で「逃げてぇえええええ~!!!!」と叫んでしまいました。


 ライオンの檻の傍で遊ぶ子猫を見た様ないたたまれなさ。


 自分の無力さを呪いました。


 


 そんな私の内心も知らず、彼女はこちらに気付くと嬉しそうに手を振り、他のクラスメイトにも「おはよう」と声をかけていきました。


 皆、救われた様な顔をしていました。


 魔王によって凍りついた教室の空気が溶けていく様な感じです。



 そして、彼女は、彼に声をかけたのです。



 「おはよう」と元気良く。



 魔王の視線が彼女に向かいました。



 その視線は、多くの人が彼女を見る時の和んだモノではなく、どこか緊張感が漂っている様に感じました。



 その魔王の視線にまっすぐに視線を返すと彼女は再び「おはよう」と声をかけました。



 教室にこれまでとは異なった緊張感が張り詰めました。



 「おはよう。」



 その声は誰が発したものか、彼女を除く教室の人間には誰も分かりませんでした。



 「これから一年よろしくね!」


 嬉しそうに魔王に声をかける彼女。


 「よろしく。」


 これは・・・魔王が挨拶をしている。


 クラスに驚愕が走ると共に、「彼女が無事である事」に安堵した吐息がそこに居た者全ての口から漏れました。


 

 「勇者だ!」そこで起こった事を脳みそが認識するにつれ、そうした感慨が私の胸の中に広がっていきました。


 


【勇者ちゃんの日記】


 今日から新しい学校。


 高校生活のはじまりでした。


 初めてのクラス、麻紀ちゃんの顔があって、嬉しくなると共にほっとしました。



 なんだか元気が出ると共に緊張もほぐれて、クラスの人たちみんなに朝の挨拶をしました。



 みんなお返事をしてくれましたが、びっくりするくらい綺麗な男の人がそうしたクラスの雰囲気に馴染めずにいる様に見えたので、思い切って声をかけてみました。


 最初はお返事をしてくれなかったので、怖い人なのかと心配になりましたが、もう一度声をかけるとちゃんとお返事をしてくれたので嬉しくなって、「これから一年よろしくね!」なんて事まで言ってしまいました。


 彼は麻生君というそうですが、「よろしく」と返事をしてくれました。


 ちょっと人見知りさんなのかな?


 仲良くなれるといいなぁ・・・。


 


次話から本筋というか普通じゃない話になります

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