過去
もしもあの時、もしも・・・もしも・・・俺がこんな事をしなかったら助かったのかな・・・
俺はあの日から毎年来ている。
そして今日も。
愛しい、愛しい、美嘉。
「毎年毎年、お若いのにお疲れ様です」
「いいえ、こちらこそ、いつもありがとうございます。」
「雨が降ってますから、お気をつけて下さい。」
「はい。山田さんも気をつけてください。
それでは。」
「ええ、またいらして下さい。」
あの日もこんな雨だったっけ・・・俺は傘をさしながら、昔のことに更けていた。
ザー、ザー
「雨、凄いね。何か帰る気無くすよ。」
「まじですごいな。
美嘉大丈夫か??
家まで送るよ。」
「まじ?ありがとサン」
俺達は急いで電車にのった。
滑り込みセーフだった。
「間に合った〜
よかったね」
「おぅ、よかった。」
しばらくして俺達は目的の駅に着いた。
俺より先に美嘉は降りた。
もし・・・
もしもあの時俺が無理にあの電車に乗せず、一本後の電車に乗っていたら・・・
電車から降りるとき、俺が先だったら・・・
美嘉も、俺の気持ちもあんな風にならなかっただろう・・・
〜○○駅、○○駅〜
ガシャン
美嘉は俺よりも先に電車を降りた。
向かい側に黒い服を来た男がいる。美嘉とすれ違い様に、そいつは・・・
美嘉を、
美嘉を刺した。
男は走って逃げる。
俺は・・・ただ状況を理解できず、ただ・・・
ただ、呆然と上から美嘉を見下ろしているだけだった。
俺は回りの
「救急車!!
救急車!!誰か!!」
と言う声で我に帰った。
「美嘉!!!!
美嘉!!!!
美嘉!!!!
美嘉ぁぁ!!!」
俺は必死で美嘉の手をとり、美嘉の名前を呼んだ。
〜♪
救急車の音がドンドン近付いて来る。
「すいません、道を開けてください!
状況は分かりますか?」
俺に話しかけて来た。
「電車を降りたら、刺されて・・・それで、走って逃げて行きました。」
俺はそれだけ言うと救急車に乗り、美嘉の手をずっとにぎっていた。
心から助かることを望んで。
「つ・・ばさ・・・」
「なに?どうした?」
「ず・・っと・・・ず・・っと・・好き・・・だよ・・・わすれ・・ない・・・でね・・?」
「何言ってんだよ!!!俺も好きだよ!
愛してる、忘れないでなんて、まるで別れみたいな言葉言うなよ!!!
生きろ!!!」
俺が言い終わると、美嘉は一瞬びっくりしたような顔をしたが、すぐににこやかになり、
ゆっくりと・・・瞳を閉じた。
「美嘉!!!!
美嘉!!!
美嘉!!!!!!!」
俺はどれくらい泣いていたんだろう。
どれくらい自分を責めていたんだろう。
ごめん。
美嘉、ごめん。
俺のせいだ。
そんな事を考えながら電車に乗っていた。