夏の終わり
高校生になった俺達の青春物語
高校1年の夏、俺達は出会った
俺は公立の高校に通う、何処にでもいるような高校生、大友翼。
そして俺の通う高校の目の前には名門女子高がある。
そこに通う、この話のヒロインとでも言っておこう、中島かな。
あの夏が来るまで、名前も顔も知らなかった。
すくなくとも俺は・・・。
この日、俺は幼なじみの富山亮に招待されて、小田桐遥と阿部祐樹と富山の別荘に行っていた。富山の別荘の前には海がある。
俺達は、何もすることがなくただ何となく海に入って行った。
始めはあまり乗り気じゃなかったものの、いつのまにか楽しくなっていた。
気がつくと、辺りは暗くなっていた。
それに気付いた俺達はすぐに帰り自宅をして富山の別荘に戻った。
別荘には食事が並んでいた。
その食事をありがたく食べ終えると部屋に戻って行った。
「それにしても、今日来てた女の子達可愛かったな〜」
「ばぁか。誰も小田桐なんか見に来てねぇっつーの」
「なんだよそれ!!
阿部なぁ、彼女がいるからって!!
言い過ぎだろ!
本当羨ましいよ〜
な、翼!」
「別に・・・っていうか女なんていた?」
「お前!!
いくらなんでも重傷だな!」
「本当!お前勿体ないよな〜
その容姿で彼女つくらね〜なんて」「そうそう、僕なんて別荘はあっても彼女なんて・・・」
時刻を見るともう10時近い。
「俺、寝るから」
「なんだよ翼!!
それで本当に高校生かよ!!」
小田桐の言葉を無視して布団に入った。
時刻は12時
まだあいつら騒いでんのかよ
「・・・うっせー」
眠い目をこすりながら胸元に手を置いた。
・・・あれ?
「・・・やっべ!!」
いつもしているペンダントがない。
急いで懐中電灯を片手に探しに行った。
「おい!!翼、何処に行くんだよ!!」
遠くの方から聞こえる小田桐の言葉を無視して。
浜辺に行くと辺りはすっかり暗くなっていた。
そんな中、ぽつんと人影が見えた。
近寄ってみると、そこには女が一人いた。
思わず俺は
「美嘉!!」と叫んでしまった。
女はびっくりしたようにこっちを見た。
「美嘉!!美嘉なのか?」
きつく肩を抱いた。
女は、戸惑いながら口を開いた。
「・・・私は美嘉じゃないです・・・。
たぶん、勘違いだと・・・思います。」
その言葉を聞いて、翼は
「そうだな。ここにいるはずないよな・・・。」
と、小さく呟いた。
少しの間沈黙が続く・・・
「ごめん。悪かったな。びっくりさせて。」
最初に沈黙を破ったのは翼だった。
「ううん、全然気にしてないから。」
女は笑顔で答えた。
翼には、その笑顔が美嘉とにていてとても苦しかった。
「そうだ!
ひょっとして・・・これあなたの?」
女はポケットから何かを取り出した。
ペンダントだ!!!
「すまない。それを探しに来てたんだ。
サンキュ」
俺は受けとると、さっさと帰ろうと立った。
足速に立ち去ろうと歩き始めたその時、
「待って!!」
女が声をかけてきた。
俺は少し緊張しながらくるりと方向を変えて止まる。
「名前は?
私、かな。中島かな」なんだそんなことか。
少しホッとした
「俺は大友翼。よろしく」
それだけ言うと、
また俺は別荘の方へと、こんどはゆっくりと歩き出した。
別荘に戻ってもまだ他の3人はザワザワしていた。
しかしその時の声は
俺をゆっくりと夢の世界へと連れて行ってくれる、子守歌のようだった。
俺は久しぶりに美嘉の夢を見た。
小学2年のころから、中学のころ・・・
とても幸せな夢だった。
次の日、俺らはまた海へと出掛けた。
するとそこには昨日の・・・確か、かな。かながいた。
かなはオレンジの水着がとてもよく似合っていて、昨日のかなとはまた違った明るい感じだった。
かなと目が会うと、かなは友達に一言、声をかけてから俺の方へと近寄ってきた。
「翼!!」
「よぅ」富山達はさも不思議そうに顔を見合わせた。
「小田桐、信じられるか?俺の彼女とも全く話さないあいつが、女の子と喋ってやがる。」
小田桐と富山は信じられないとでも言うかのように、口をあんぐりさせている。
「昨日は、本当にありがとな。」
「ううん。それって、大切なものなの?」
「ああ。
かなは昨日ここで何してたんだ?」俺が聞くと、少し悲しそうに笑いながら
「失恋しちゃったの。」
と言ってから、
「ほかに好きな人が出来たみたい」
と付け加えた。
「よくわかんないけど、元気出せよ。」
「うんっ!ありがと〜
そうだ!良かったらメアドとケー番教えて?」
「ああ、いいよ。」
「よかった。ありがと。」
そういうと俺の携帯と自分の携帯を操作しだした。
1分も経たないうちに、
「出来た〜!
これ、ぅちのメアドとケー番だから。」
と言ってメモリを見せてくれた。
「いつでもメールしてね。」
「ああ、ありがとな」
と笑いかけた。
彼女もまた笑いかけてきた。
そして、
「それじゃあ、またね」
とだけ言い残し、友達の元へ戻って行った。
俺達が話終えると富山が一目散に寄ってきた。
「あの子、昨日の子じゃん。どうしたんだよ?」
「会った。」
「会った。・・・ってそれだけ?」
興奮しながら小田桐が聞いてきた。
俺は苦笑しながら
「それだけだよ。」
と答えた
「何笑ってんだよ!!」
「お前らそんなに俺が女子と話すのが珍しいか?」
「だってお前、俺の彼女とも全然話さねぇじゃん」
「まぁな。」
「「「なんだよそれ」」」
俺は3人を無視して海に入った。
そんな俺にもう何を聞いても無駄だと理解したようだった3人も海へと入って来た。
今日も暗くなり、ご飯を食べたら部屋には戻らず、なんとなく浜辺に向かってみた。
。
そこには誰もいなかったが、なんとなくかながいるような気がした。
ブー、ブー
携帯だ。
¨かな
今から浜辺に来れる?¨
¨翼
もう来てる(笑)¨
ブー、ブー
¨かな
りょおかいっ!¨
顔だけじゃなく、行動とか声まで美嘉にそっくりだ。
少しすると、
「おまたせ!待った?」とかなが走って来た。
「全然平気だよ」
「ならいいけど」
俺もかなも笑った。
俺達はくだらない世間話で盛り上がっていた。
そんな中、かなの携帯が鳴った。
〜♪〜♪
かなは画面を見ると、少し曇った表情をして
「ちょっとごめんね」
と言い残し、少し離れたところへ行った。
電話を切り終わってもまだ戻ってこないかなが心配になって近寄ってみた。
かなは泣いていた。訳も分からない俺は、ただ隣に腰を降ろした。
少し経ってから、かなは消えそうな声でぽつりぽつりと、話し出した。
「私、付き合ってる人がいたの。
さっきフラれたって話したでしょ?
それでね、フラれた理由、彼の友達なの。
この間、彼と喧嘩したの。
彼の友達が俺の家に皆来てるからお前も来て二人できちんと話ししろって言われて、仲直りするいい機会だと思って行ったの。
それなのに
行ったら彼はいなくて、その友達に
・・・犯されたの。
信用してた。
彼の親友だから。
でも・・・。
それで彼は浮気されたって勘違いして、そのまま・・・。
のこのこと男の人の家にいくものじゃないよね。」
そう言ってかなは悲しそうにもう一度微笑んだ。
俺はかける言葉が見つからなかった。
それを見兼ねたかのように、かなは俺に
「ごめんねなんか暗くなっちゃったね〜」
かなは悲しさを隠すために、わざと明るくふるまった。
そんなかなを、俺は優しく抱きしめた。
そんなつもりはなかったのに
いつのまにか
体が動いていた
かなは緊張しているようだった。
俺は
かなの高鳴る心臓の音を
静かに聞いていた・・・。「無理すんなよ
泣くのがカッコ悪いとか思うなよ
泣きたいときは泣けよ
俺が支えてやるよ」
そう言って、またキツく抱きしめた。
好きな訳じゃない。
たぶん
美嘉に似ていたから。
「ありがとう」
そう言って、かなは子どものように泣いた。
どれくらい経ったんだろう。
辺りはすっかり暗くなら、かなは寝てしまった。
「ったく・・・どこに連れていけばいいんだ?」
などと独り言を呟いていると、
〜♪〜♪
かなの携帯が鳴った。
画面には¨秀樹¨と書かれている。
たぶんかなの彼氏だろう。
そう思い、出なかった。
俺はかなの帰るとこが何処なのかわからず、携帯を借りて電話をした。
画面には、美砂と出ている。
♪〜♪〜
「もしもし!かな?
何処にいるの?」
少し慌てたような声だった。「かな寝ちゃって、何処に連れていけばいいか分からなかったから電話したんだけど」
「そうなんですか!
何処にいますか?」
「海なんだけど」
「わかりました!!
そこで待っててください」
プー、プー
と言ってきれた。
少し経つと、美砂と書かれていた女はきた。
「すいません!!」
俺をみるなりそう言った。
「嫌、気にしてない。」と俺は続けた。
「ありがとうございました。」
美砂という女は俺に礼をすると、かなを連れて戻って行った。
俺はそれを見送ると、富山の別荘へと戻った。
「翼〜今日も彼女のとこか?羨ましいな!おいっ!」
「いいじゃねーか小田桐!俺に彼女がいるんだ。
翼に彼女がいないほうがおかしいぜ」
「彼女じゃねー!!」
「違うのかよっ!」
「ただのダチだよ」
「「「まぢかよっ」」」「富山、いたの?」」」
「さっきからいたよ!」
俺達3人は笑った。
その夜俺はずっとかなの事を考えていた。
次の日
「今日でもうお別れだと思うと寂しいな〜」
「だな」
「翼もせっかくかわいい子に会ったのにな」
「別に」
「なんだよ寂しくねーの?」
「別に」
「なんだよそれ」
「よし!
それじゃあ出発するよ!車に乗って!」
「おぅ」
車に乗ろうとしたそのとき
「待って!!!」
びっくりして声の方を見るとそこにはかながいた。
「かな!」
俺もかなに駆け寄った
「どうしたんだ?」
「もう会えないかもって思ったら・・・。
本当にありがとね!」
「いや、俺のほうこそ、ありがとな。」
「うん。」
「それじゃあ、また。」
「また。」
かなは、俺達の乗った車をいつまでも眺めていた。
見えなくなっても、まだ。
こうして俺達の夏は終わりをつげた
。