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魔王を倒す

 突如として現れた魔王は、全身を黒い鎧に覆われ、握られた武器は触手のようにうねり、周囲に不気味な影を落としていた。その目は怒りに満ちており、出現するや否や周囲の物を破壊する。特に住人たちに対しては怒りを爆発させるかのように攻撃し、その武器の一振りで多くの人が吹き飛んだ。


「……おいおいおいっ……」


 悠真は思わず尻込みした。自分より大きな、しかも圧倒的なパワーを持つ、あんな化け物相手に戦うなんてとんでもないと思ったのだ。

 その間にも今度は騎士らに狙いを定めた魔王は、刃先が四叉に分かれたその武器から黒いモヤを振り飛ばす。すると、それは空中で鋭い刃に変化して騎士たちの鎧を貫いた。


「くだらねえ世界のくだらねえ人間どもがッ……! 全員まとめてぶっ殺してやるッ!」


 魔王は完全に騎士達をロックオンしていた。今度は武器の柄の部分で殴り飛ばし、弱らせてから刃先で直接グザグサと刺したり、逃げる者に対してはまたモヤを飛ばして攻撃する。至る所に転がる負傷者……、すると、「勇者様」とあちらこちらから声があがり始め、尻込みしていた悠真もさすがに使命感に駆られて前に出る。


「……や、やめろっ……!」

「……なんだお前。……ハッ、無駄な事を! お前だってこうなるんだッ!」


 グサリ、武器が騎士の腹を貫いた。刺されたのはさっきまで悠真の案内係をしていた騎士で、その瞬間、何かのスイッチが入ったように、悠真の中の闘志に火がつく。


「おい魔王! これ以上傷つけるのは許さない! 俺が相手になってやる!」


 気づけばそう叫んでいた。さっきまでの恐れは一切なく、根拠のない自信が胸に溢れている。一呼吸の後、悠真はバットを構えると魔王を相手に振り下ろした。


「――おらぁッ……!」


 打撃は易々と魔王の体に命中した。戦い始めてようやく王が言っていた「勇者は誰でも強くなる」という言葉の意味が明らかになる。悠真の体は鋼のように硬くなり、手にしたそれはもはやただのバットではなくなっていた。ビリビリと放電するそれは、雷を放つ武器のようで、打つたびに相手を感電させ、その攻撃力を奪ってゆく……。

 さすがに指一本で倒せる訳ではなかったが、それでも戦いは悠真に有利に働いた。次にどの部位を攻撃すべきか明確に分かるし、魔王から奪った攻撃力がそのまま自分に還元されるようで、戦えば戦うほど、実力に差がついてくる。ついに追い詰めた悠真は渾身の一撃を魔王に浴びせ、戦いに終止符を打ったのだった。


「……やった、勝った……、オレ勝った! すっげー! ほんとに魔王を倒しちまった!」


 喜びに浸る悠真。すると、パチパチと周囲から多くの拍手が響き渡り、歓喜する住人たちの姿が目に映る。ところが次の瞬間、悠真が「え?」と思わず二度見したのは、さっき魔王に刺されたはずの騎士が何事もなかったようにそこに立っていたからだ。見回してみると、他の住人たちの怪我も回復し、すっかり元気になっている。


「……ちょっ、あれ? アンタ、さっき死にかけてたはずじゃ……?」

「はい、それはもう危ない所でありました。勇者様が魔王を倒して下さったので、この通り、すっかり元気になったであります」

「……は? そういう、システム……?」


 そこらへんは半ば無理やり納得するしかないのだろう。やはりこの世界の事はよく分からないが、とりあえず魔王を倒すという重要な使命は果たしたのだから、心は満足感に満たされる。するとそこに、王が姿を現した。


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