エピローグ
あれから、クラウディアの予想通りに、彼女は連れ戻された。私も含めた誕生日会の客人たちは、それぞれの使用人をともない帰宅した。
数日後に届いたクラウディアからの手紙には、ロデリックとの婚約が無事に解消されたこと、そして、ローズウェル家から勘当されたことが嬉しそうに綴られていた。
これは、あの日から数ヶ月が経った、ある日のことだ。
「セレスティア様、馬車が到着されましたよ!」
「本当に! すぐに行くわ」
マリーの呼びかけを受けて、転がるように部屋を飛び出した。セバスチャンが扉を開けるのも待てずに、モンフォール家の玄関を開く。
「セレスティア様! お久しぶりです」
そこには、大きな籠を抱えたミアが立っていた。そして、その背後にもう一人……。
「ミア! クラウディア! 二人とも、会いたかったわ」
前世ならば、飛びついて抱きしめていただろう。
それぐらいの嬉しさを抱えて、私は心を込めてカーテシーをした。
「わたくしもよ。元気そうね、セレスティア」
「クラウディアこそ!」
「ええ。とっても良いところね、リゼル村は」
にこりと笑うクラウディアは、前にもまして逞しく、そして、美しく感じた。
そう、彼女は今、リゼル村にいる。
クラウディアに頼まれて、モンフォール家を通じてエドヴァルトに働きかけ、彼女を村に移住させてもらったのだ。
「さっそくですが……セレスティア様、こちらがご注文の花蜜です!」
ミアがどこか得意げに、抱えていた籠を差し出してきた。受け取ると、籠の中にはたくさんの、小さな小瓶に入った花蜜が収められていた。太陽の光を浴びて、黄金色に輝く花蜜! その色を外側から見ているだけで、甘い香りが漂ってくるようだった。
「! ありがとう。手紙で聞いてはいたけれど、本当にすごいわね!」
「えへへ。これも、エリック殿下と、クラウディア様……それに何より、セレスティア様のおかげです!」
今リゼル村は、エリック殿下の後押しもあり、養蜂による花蜜の生産を中心に栄え出したらしい。急激な経済発展を行う村を、頭脳面で支えているのがクラウディアで、その手腕から、村の人々からは尊敬を込めて、影の村長令嬢様と呼ばれているらしい。
「では、あたし達はこれで失礼しますね!」
「じゃあね、セレスティア。また会いに来るわ」
名残惜しいが、二人には、この後も王都で予定があるらしい。特にミアは、夜にエルダンとデートの約束もあるのだとか。
玄関先でしばらく二人と会話をした後、そんな風に別れた。
「少し寂しそうですね、セレスティア様」
「えぇ、そうね……」
マリーの言葉に素直にうなづく。けれど、クラウディアがいうように、きっとまたすぐに、会うことができるだろう。
それまでに。
「アルバート、花蜜が届きましたよ! ほら、こんなにたくさん」
「なんだと」
「ここ数ヶ月間、乾燥果物頼りのお菓子しか作れませんでしたからね……。さっそく、キッチンに向かいましょう!」
「ああ!」
さあ、今日は何を作ろうか? 久しぶりの花蜜だ。アルバートやダリア、マリーやセバスチャン、使用人さんたちの分まで、たくさんたくさんたくさん作っても、きっと罰はあたらないだろう。
いつか再会の時を彩る、素敵なお菓子を作るためにも、私はアルバートと共に、駆け足でキッチンへと向かった。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!
美味しいお菓子を中心に回るセレスティアの物語、いかがでしたでしょうか?
少しでも楽しんでいただけましたら、ご評価、ご感想など頂けますと、とても嬉しいです!
改めて、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!




