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彩祈を消さないで  作者: 千桐加蓮
第一章 
2/8

答えて2

 それが一年前。彼女、ひよりは執念深く、あれから「二度とお前の顔を見たくない」と俺は言ったはずなのに、「だって、私何度だって晴矢を見たいから!」と言って、毎日のようにアパートの俺の号室の前で待機していた。

 隣人の方が俺を心配してくれて、全てを打ち明けると、警察に相談させてくれて、彼女は警察に連れて行かれた。

 けれど、彼女は「嫉妬して怒っている彼氏だ!」と言っていたらしい。警察へ説明不足等の経緯があったため、今回は厳重注意だけで済んだようであった。

 目の前で元気に彼女に会釈をされた時、全身の血から血が引いた。

 結局あの後、ひよりのお姉さんと名乗る人が動いてくれた。彼女はお姉さんに連れられて実家があると言う九州の方に引っ越して行った。


 ようやく彼女の件で落ち着いて安心しているが、女子高校生の顔に対する考え方は変わってほしいと思った。

 女子高校生たちは、俺の横を通り過ぎて行く。

 自分の顔は、幼い頃から評価され続けていた。

 整った容姿だということで、幼稚園に通っていることから女の子からの上目遣いや、俺の取り合いがあった。気持ち悪かったし、うんざりした。

 家に帰っても、両親はそこまで仲睦まじくなく、下に妹がいたのもあり、そのお世話で精一杯そうであったのを子供のながらに気を遣ってしまい、女の子たちが気持ち悪いんだと父親にも母親にも言えずにいた。

 結局、そのまま小学校の入学し、同じような俺の取り合いが起こり、俺とあれやこれやするという妄想までされていた。中学、高校になると更にそれらがエスカレートし、尚且つ男から目をつけられて、暴言を吐かれ、女子がそういう類の男を撃退し、その中でも学校の中でも権力があり、尚且つ美少女であれば俺に告白しても構わないという謎の制度があった。

 俺の数少ない友達も、女子からの伝言係にされていた。止めるようには強く言ったが効果はなかった。

 これらは、学校生活での話。家庭内では、妹が中学校をを卒業するあたり、俺が東京の美大への進学が決まったタイミングで両親が離婚することになった。数年前から二人が離婚することは俺も妹も聞いていたので、離婚届の紙を見ても、すんなりと受け入れていた。

 妹も、同級生からのいじめが原因で、転勤になった医者の父と一緒に東京に住むことになっていた。そのため、都内の高校受験をして、合格を目指して受験勉強をしていた。

 今は、見事に合格して、共学の高校に通っている。友達とも仲良くやれているという話は彼女のインスタを見ればよく分かるし、会って話を聞いてもいる。

 自分の容姿が原因で学校生活がうんざりしていたのは辛い経験だったが、不思議な記憶があったまま成長していることに違和感を感じている。

 幼い頃から、とある記憶が頭の中に入っていた。自分は経験していない記憶が、頭の中に存在していた。どこかで観たことがある映画か何かだろうかとも思ったが、自分がスクリーンやテレビ画面で見ているわけではないのだ。

 仲睦まじい家族や、自分よりも年下であろう男の人と会話をしている様子の記憶である。カメラで切り取ったみたいな記憶で脳内に保存されているため、会話はしたことがない。それに、年下であろう男というのは、記憶の中では背丈が変わっていたりするので、実際の年齢はよく分かっていない。

 俺はその記憶では一家の大黒柱らしく、何かしら仕事はしている様子だったが、職業までは分からない。

 一歳にもなっていない赤ちゃんを腕の中に抱き抱えている記憶の中では、俺の目の前の女性のお顔は光が当たっていて上手く見えたことはない。着物を着ていたし、自分も和服姿だった。

 だが、その記憶の中では自分は宇治原晴矢ではなく、九条大寿と紙に書かれていたものを渡されていたので、自分の記憶は大寿の記憶だろうと解釈していた。

 時折、その大寿と呼ばれている時の夢を見るようになったのは、何年生だったかは忘れてしまったが、小学生の頃であった。

 大寿の夢は悪夢ではなく何故か懐かしさを感じるので、少し引っ掛かっている。

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