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エリーナは転生者


キャッキャウフフと騒いでいた馬車が目的地に到着した。

トニー、ノア、ノアにエスコートされたリンネ、ホォルティオ、ホォルティオにエスコートされたエリーナが順番に降りる姿を周囲の生徒が唖然として見ていた。


「今、ガルシア様がオルガン令嬢をエスコートしてたわ」

「ガルシア様があんなに穏やかな顔してオルガン令嬢を見つめるなんて初めてよ」

「オルガン令嬢の魅力に気付いて好きになったとか?」

「いやいやいや、王国一の美少女王女様からオルガン令嬢に乗り換えるなんてそんな愚かな人じゃないだろ」


おおっと、周りの生徒達言いたい放題言ってくれるじゃないか。明日死ぬと分かって最後に一緒に居たいのはラピオネしか考えられないのだよ。エリーナ嬢と今こうして仲良く見せてるのも居心地悪いな…


「ホォルティオ様、顔色悪いですよ?馬車に酔いましたか?」


エリーナ嬢が持ち前のハンカチでホォルティオの汗を拭い背中を擦る。隣を見ると愛する人を本気で心配してそうな顔をしている。エリーナ嬢が演技上手いのかまるで本当の恋人みたいに思えるだろう。


「………いや、大丈夫だよ。エリーナ嬢のハンカチ汚してしまって悪かったね。後日新しいハンカチプレゼントするよ」


「えぇ、私そんなつもりでハンカチを出した訳じゃありませんわ。ハンカチは洗えば綺麗になりますから気になさらないで下さいませ」


「いや、僕が気になるからプレゼントさせて欲しい。…ダメかな?」


ホォルティオも自然に装いながら芝居掛かる。いや、ホォルティオは本気で思ってることを言っているのかもしれない。どちらにせよ、周りの反応を見る限り上出来な滑り出しだ。


「…いえ、ダメじゃないですわ。そのお気持ち有り難く頂戴いたします」


「それは良かった。エリーナ嬢は山登りしたことあるのか?」


「いえ、そんなに経験ありませんの。だから、今日は少し不安ですわ…」


「それなら僕とゆっくり登っていこう!トニー、ノア、リンネは僕たちのこと気にせず進んでね」


「…ああ、分かった。リンネ行こう!」「そうね、先にいくわ。呉々も喧嘩しないでね!」「ええ~、僕は2人の後を着いていきたい~、絶対面白いこと起きそうだもん!」


『だめよ!』『ダメだ!ほら、ノアもしっかり歩け!』


ノアはトニーに腕を掴まれて引きずられるように歩いていく。その様子が面白くってホォルティオとエリーナはコロコロと笑い合う。


「ノア様って本当に楽しい人ですね。あの方の婚約者で奥様になるご令嬢は幸せですわ。私もただ幸せになりたいだけなのにな~」


「エリーナ嬢にも可能性あるならノアと結婚したいと思うのか?」


「それは勿論。一見チャラそうに見えますけど、でも、女性を必要以上に傷つけ無い為に優しいだけできっと心の底から気を許せる女性は少ないと思いますよ。仲良く見せてもガードが固い気がします。私にも気を許して下さるなら嬉しいですけどね…」


「それならノアの頑張り次第で可能性は十分あるな!でも、よくノアのこと観察してたんだね。僕のこと好きだとか言ってた割には最近刺々しい物言いで冷たい態度だったし…」


「え?もしかしてノア様に焼き餅ですか?ホォルティオ様ってツンデレなんですか?うわ~、新たな一面知ること出来ましたわ!」


「あ、あの、勝手に決めつけないでくれるかな?」


「うふふ、安心してください。ホォルティオ様は私の押しです。これは変わりません。憧れのアイドルとこうして話せるだけでも至極幸せです。本当は遠くから見守ることで幸せを噛みしめていたのにまさか本当に私が貴族の仲間入りして同じ学園に入り今では偽恋人役までするなんて思いもしませんでしたわ。…転生した時は嬉しさで浮かれて現実見て急降下に落とされどうしようかと思いましたよ…」


「…色々言いたいことあるけど、今、転生したって言った?」


「あ…!口滑らせちゃった……。あーもー浮かれすぎて余計なことまで言うなんて不覚。やっぱりゲームのシナリオみたいに上手く誤魔化せないわよね…」


「…えーと、一旦落ち着こうか?全部声に漏れてるよ?」


エリーナは押しのアイドルと話せて幸せだとか語っていく中で熱く語りすぎたのか『転生者』という言葉を溢してしまった。その後は段々声が大きく慌てふためいてきっと自分でも何を言っているか分からない状態に堕ちている。

ホォルティオは周囲に生徒がまばらに散らばっている事を確認しつつ落ち着くように宥めていく。


「………あ、えーと、あの、令嬢としてあるまじき失態をお許しください…。ホォルティオ様にこんな事言っても分かりませんのに…どうか…変な令嬢として扱うのはやめて頂きませんか?精神的可笑しくなったとかで修道院に入りたくありません…」


「…あ、うん、それは大丈夫だから心配しないでね。エリーナ嬢の言うゲームってこの世界のこと?」


「………え、ええ、そうですわ。『~王国と帝国の架け橋~愛される運命』ってタイトルのシュミレーションゲームです。主人公は私、オルガン令嬢で不思議な魅力の持ち主。攻略対象者はケイン殿下、ルイス殿下、クロード様、トニー様、ノア様に最後ホォルティオ様です。私の押しは先程から言ってる通りホォルティオ様ですわ!まぁ、まさかゲームに存在してなかった王女様が居るとは吃驚しました。それもホォルティオ様と幼い頃に婚約を約束したなんて…私と出会うまでシナリオは存在してなかったから油断していました。ってこんな事言ったらまた怪しまれますよね…?」


「………実は……僕も転生者なんだ……前世はただの高校生だったからこのゲームのタイトルは愚か内容や主人公、攻略対象者が何人いるのかも知らない状態で所々ゲーム好きの妹から話を聞き流してたぐらいだったからまともにシナリオやイベント内容が記憶に無いんだ。まさかここに来て僕も攻略対象者だったなんて思いもしなかったよ」


「え、ええ~!!そうなんですか!!まさかホォルティオ様も前世持ちだなんて夢のようです~。私の前世は大学院生で薬品研究室に在籍していました。ゲームオタク又三次元をこよなく愛する人でした。シュミレーションゲームなら一通りやり終えてます。なのでこのゲームも全ての攻略対象をハッピーエンドで終わらせています!…でも、今生きるこの世界ではゲームのシナリオなんて存在しないのですよね~。どんなにやり込んでも思い通りに進んだことありませんもの。役に立たないものですわ」


エリーナの声は話に熱が籠ると大きくなるのが癖らしい。もうすぐ登頂だから鎮まらせないと誰に聞かれるか分かったもんじゃない。かなり危険だ。


「…あ、あの、エリーナ嬢、もうそろそろ登頂だから声を小さくしようか。誰に聞かれるか分からないから危ないよ。その話は今日の夜にでも話を聞かせてくれないかな?」


「あ、あっ、また私やっちゃいましたね。好きなことを話すと段々声が大きくなるんです。我慢してても大きくなっていって、ホォルティオ様申し訳ありません…。今日の夜楽しみにしてますね!」


丁度登頂付近に来た時にこのやり取りを聞いた生徒がざわめきたった。

「…今、ホォルティオ様がオルガン令嬢を夜に誘った?」

「ええ~、ホォルティオ様は王女様一筋だったのに心変わりしたの?ショックだわー」

「オルガン令嬢も誘われてとても嬉しそうだぞ?二人ってもうそう言う関係だったりして…」


いやいやいや、下手にその部分だけ聞かれたなんて最悪だよ。聞くならもっと前から聞いててくれ、いや、その前の話も聞かれたら不味い内容だったな…。


「…はあ…また、誤解を生んでありもしない噂が広まるな…」


「ええ、不覚ですわ。ただの演技だというのにオリエンテーション終わっても収まらないですよね…」



ホォルティオとエリーナはぐったりとした表情で辺りを見渡した。トニー、ノア、リンネはニヤニヤと楽しそうに笑いながら静観していた。

















エリーナは実はホォルティオと同じ転生者だった。

同士としてこれからよき友人に慣れるといいな~と思います。

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