演技力が試される時、悩むホォルティオ
オリエンテーション当日の馬車の中、どうして違うクラスのエリーナが居るのだろうかと思うだろうが遡ること一週間前。
ケイン殿下の執務室でオルガン男爵についての定期報告会が行われた。その場でエリーナが持ち込んだ小瓶一つをテーブルに出しオルガン男爵にオリエンテーション内でホォルティオ様に飲ませるようにと手渡されたことを報告した。
透明な液体だが調べないとどんな効能があるのか分からないということで急いで王宮管轄の王都新薬研究員を呼びその場で調べさせるよう手筈を整えていた。目の前には簡易的なキッドと器具が置かれておりエリーナが持ってきた小瓶の蓋を開け、まず匂いを確認する。嗅いでみたが無臭に近く何も匂わない。簡易キッドを使い調べたが色の変化は無く毒性の物ではなかった。色んな角度から調べると睡眠性のある媚薬だと分かった。服毒すると意識朦朧しその後の記憶が曖昧になるらしい。オルガン男爵はホォルティオとエリーナが二人っきりになる場面を狙って一夜の過ちを起こさせ既成事実を作り強制的に婚約を取り付けようと企んでるらしい。
確証はないがこの小瓶がそうだと物語っている。
ケイン殿下は顔を歪め声を地鳴りのように低く出し呟く
「オルガン領地は薬全般の開発、販売、取引所で成り立っているから手に入りやすく怪しまれること無く使えるだろうね。本当に小賢しい奴だな…」
「…でも、これでオルガン男爵の企みは分かりました。ここはホォルとエリーナ嬢に一役芝居をさせましょう!決定的な証拠が欲しいでしょうし当日はオルガン男爵の手下が紛れ込み現れることでしょう。成功したと見せ掛けて喜ばせ後日急降下で地獄を見せれば良いのです。」
ケイン殿下の言葉に続くようにルイス様が閃いたように言葉を吐き出していく。それも含み笑いで悪巧みをした顔つきで周りを見渡した。何処か楽しげにしている姿を見るに怖さが増す。ケイン殿下と違いルイス様は表面上優しい顔と普段隠された残酷で冷徹な顔二面性があるから敵に回すと怖い。周りもひきつり笑いをしてルイス様を見ている。
「僕とエリーナ嬢が芝居って…どんな?」
「それは勿論恋人のように仲良いですよーって見せつけるのさ」
「…それって妹の婚約者に言うことなの?普通させたくないでしょ?」
「仕方ないさ、オルガン男爵を断罪する材料になるなら一役芝居を打ってでもしないとずるずると思いのままにさせてしまうだろう?」
「確かに…。ラピオネにはショックだろうがその方が手っ取り早いだろうな。…嫌かもしれんがやってくれないか?」
ホォルティオが問うとルイス様が嬉嬉しく返答する。なんだか楽しんでない?ルイス様…。その話にケイン殿下も乗ったようで言いづらそうにホォルティオとエリーナに問いかける。
「……………」「…………」
ホォルティオとエリーナはお互い見合わせて苦笑いしながらコクンと頭を上下に振った。言葉にならないが体は素直に応じてしまう。王族の願いに従わないなんて臣下としてあってはならないのだから。悲しいかな、オリエンテーションが終わったら直ぐにでも愛しい婚約者ラピオネに会いに行かせて欲しいと願った。
◇
オリエンテーション当日の朝
僕らのクラスに紛れ込むようにエリーナがホォルティオとトニー、ノア、リンネと班を組んでいた。周囲の生徒は何故他クラスの生徒が居るのか知らせていない。只、ケイン殿下の指示のもと例外としてエリーナがホォルティオ達と行動すると理由付けているので大きな混乱は生まない。
そして話の冒頭の馬車の移動中に戻る。
「ホォルティオ、顔が怖いわよ。そんなにエリーナが恋人だと不満かしら?以前のエリーナと比べたら素敵な令嬢になったと思うけれどね。私が男だったら恋人だと自慢して歩き回りたいぐらいよ!」
リンネはエリーナをべた褒めしてエリーナは頬を紅く染めリンネにふんわり花がほころぶように微笑む
「僕らは一体なにを見せられてるのかな?この姿だとリンネとエリーナが恋人のように見えるよ」
「同感だ。ホォルティオ、いい加減覚悟を決めろ。ケイン殿下のご指示なんだ、無視は出来ないだろう?」
「それはそうなんだけど…。エリーナ嬢と接するのは気まずくて…」
ノアとトニーの言葉に気まずそうに答えるホォルティオに間髪無く甲高いエリーナの声が被さる
「…それは私も一緒ですわ!始まりはオルガン男爵の指示のもと仕方なくホォルティオ達に近づき不躾な姿を晒しましたけど本来の私はあんな風に男性に近づくことも男が居ないと何も出来ないような女々しさもありませんもの」
気まずそうに不服と言いたげな物言いでホォルティオに言い放す
あの甘ったるい声と弱々しい態度は何処へやら今ではそんな姿が懐かしく思えてくる程最近のエリーナはホォルティオに対して刺々しい
「…ふっははは!やっぱりエリーナ嬢面白い。ねぇホォルなんて無視して僕と恋人ごっこしようよ!」
ノアがエリーナの手を取り口付けをする振りをする。その行動にエリーナは顔を紅く染めみるみる打ちに耳元、首に渡り紅く染まる。頭からは湯気が出そうだ。
「………ノア様にそんなこと言われたら普通のご令嬢達は本気にされますよ?むやみにされるのは良くないと思います」
言葉と表情が裏腹過ぎて言葉の信憑性がない。他のご令嬢にして欲しくないように聞こえてノアは満足げに笑っている。
「ホォルティオ、今の見た?ノアがいいお手本になるじゃない!!」
「…僕はラピアネしかそんなこと出来ない!ノアみたいに誰彼構わず出来るようなタイプじゃ無いんだよ。頑張る頑張るけど今はまだそっとしてて…」
「えー、酷くない?僕だって気がある子にしかそんなこと言わないよ。後々面倒になるのは御免だもの。あっちこっち声かけて何人もの彼女が居るとか彼女同士で争い合うとかそんな姿見たくないしましてや収拾つかなくなって彼女達が一団になって僕を成敗するなんて想像するだけでも嫌気が差すね」
「…それって経験談ですか?」
ホォルティオは自分の事でいっぱいいっぱいらしく珍しくノアに奴当たる。ノアはノアで気分を損害したのか言い訳みたいに想像で物を言うとエリーナから問いかけられた。
「まさか!彼女が出来ると一途に大切にするタイプだよ。ただの想像だよ。安心して今はエリーナ嬢しか見えないから」
エリーナを見つめ貴公子のような微笑みで決め台詞を言う
「ふふふ、ノア様は楽しい方ですね。とても素直で好感持てますよ」
「え、一緒に居て楽しいとか嬉しいなぁ~。じゃぁ、今度デートしてよ!もっと楽しませる自身あるよ~」
「え~~、前向きに考えときますね。」
ノアはエリーナの言葉に調子乗って流れでデートの申し込みをするがエリーナは提言はせず保留となった
もうそろそろ目的地に着きそうだ。
ホォルティオの覚悟は決まったのだろうか。いや、決まってくれなきゃ話が先に進まないのだ。
ラピオネには申し訳ないのは分かるが国のため、ケイン殿下の為に動くしかないだろう。




